ストーム・イナ・ユノミ #3

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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リンク note(ノート) 第6話【ストーム・イナ・ユノミ】(#1 まで) | ダイハードテイルズ | note 「我らは謳歌したいのだ。時経たこの鮮やかな世界をな……」「マジでやりやがった!オッサン!」「"火より早く攻めよ"」「メンポ……ヲ……使ウガイイ」「方法がある筈だ」「わかりました。命を捨てる真似は、なりませんよ」「心得ている」「ンッ……ンンーッ……さて始めるか」「ニンジャスレイヤー……というのか」「成る程な」「八時のニュースです。オマカリ社の敷地で施設破壊行為が確認されました」ジングル音と共に、天井近くに設置された液晶モニタがニュース映像の配信を始めた。旅姿の男は帽子を目深にかぶったまま
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トラップマスター。大仰な仕掛けを用いたニンジャだったが、肝心のサンズ・オブ・ケオスとサツガイに関する真新しい情報は無かった。ニンジャスレイヤーに勝利の高揚は乏しい。なかでも今回のイクサの徒労感は大きかった。 1

2016-12-31 15:05:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サンズ・オブ・ケオス。構成員たちにそれを隠す意識は薄く、少し調べさえすれば幾らでも気楽な活動のログは引っ張って来ることができる。つまり彼らにとってそれは所詮クリティカルな情報でも何でもないという事だ。それがかえって追跡を難しくしている。おおっぴらであるがゆえに核心が近づかない。2

2016-12-31 15:10:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サツガイという謎めいた存在は独自の価値観のもとでニンジャを選別し、目の前に現れ、ニンジャソウルに由来しない力を授ける。判明しているのはそれだけだ。サツガイ接触者達にも、サツガイの正体やその意図を知る者は今のところ見当たらず、与えられた使命や預言も無い……。 3

2016-12-31 15:13:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サツガイは与える者なのか。ではなぜアユミの命を奪った。そしてマスラダを。マスラダはアユミを守れず、なおかつ、死を免れた。その瞬間の記憶は砕けている。八つの乱れ刃のスリケン。「ううう」ニンジャスレイヤーの足取りが緩まり、立ち尽くし、俯くと、地面がぐらぐらと揺れているように思えた。4

2016-12-31 15:22:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「二度触れた者……二度触れた」ニンジャスレイヤーはマントラめいて呟き、意志を保とうとつとめる。鍛冶のハンマーを振り下ろし、鋼を鍛えるがごとく。サツガイに二度触れた者。より深い秘密の層へ到達する唯一の手掛かりだ。(((サツガイに二度)))ナラクの声が重なった。(((二度だ))) 5

2016-12-31 15:25:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ジャリ、と土を踏みしめる音に目を上げる。ニンジャスレイヤーは己の不注意を責めた。アンブッシュの絶好の機会を与えてしまった!「イヤーッ!」反射的に投擲したスリケンは、身構えた相手の肩のすぐ上を通過し、上空へドライブ回転して消えていった。その者はニンジャではなかった。だが……。 6

2016-12-31 15:28:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「危なッ……!」探偵ダスターコートを着た女が、背後上空とニンジャスレイヤーを交互に見た。ニンジャスレイヤーは踵を返し、走り出そうとした。だがそこへ黒く小さな影が降下してきて、バサバサと羽ばたき、ホバリングした。行く手を塞いだのは一羽のカラスだった。カラスには足が三本ある。 7

2016-12-31 15:32:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ゲーッ!ゲーッ!」カラスが叫んだ。ニンジャスレイヤーは反射的に飛び下がった。ジツを警戒したのだ。ただでさえ、トラップマスターとの戦闘の直後である。いかなる罠が配置されているか……。「ニンジャスレイヤー=サンじゃないッスか?」女が呼ばわった。「勘弁を……攻撃意図無いンで!」8

2016-12-31 15:35:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カラスが地面にふわりと着地し、足でアスファルトを引っ掻いた。首を小刻みに動かし、少し傾げて、ニンジャスレイヤーを見つめた。彼は居心地の悪さをおぼえた。動物の凝視とは思えない。諭すような、不気味な知性を感じた。女がオジギした。「ドーモ。シキベ・タカコ。私立探偵です」「探偵だと」 9

2016-12-31 15:40:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは振り返った。女は帽子を取り、頭を掻いた。「見ての通りッスよ」「見ての通り?」染めていない黒髪。そばかすが散り、歯並びが悪い。セルフレームの眼鏡。目つきが悪い。その悪い目つきでニンジャスレイヤーを見た。「話せませんか。これでも、見つけるのに苦労したんで……」10

2016-12-31 15:44:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ソウカイヤが雇ったのか?」ニンジャスレイヤーはカマをかけた。シキベの瞼がぴくりと動いたが、それは看破された事を示す動きではなかった。「揉めてるンスか」シキベは用心深く尋ねた。ニンジャスレイヤーは息を吐いた。「違うようだな。誰がお前のクライアントだ」 11

2016-12-31 15:49:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「話、このままイイって事スか」「……」ニンジャスレイヤーのニューロンが高速回転する。どう行動すべきか。何故こいつはニンジャスレイヤーの名を知っている。目的は何だ。逆に幾つか訊き出す必要があるが……。『モシモシ!モシ……モシモシ!応答しろよ!応答チクショウ!』声が割って入った。12

2016-12-31 15:51:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

それはタキからのIRCコールだった。(どうした)ニンジャスレイヤーはニューロン内で応答した。『ヤバイ、肺がやられて動けねえ。死ぬかも。クソニンジャ野郎……オレの店、客を……ヤベエんだ!』(簡潔に伝えろ)『サンズ・オブ・ケオスの奴が来やがった!つうか、来てる!ピザ・タキに!』 13

2016-12-31 15:58:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「待ッ……」シキベの声をニンジャスレイヤーは置き去りにした。彼は瞬時に跳躍、看板「大きな多メニー」を蹴ってさらに跳び、屋上を連続側転してさらに跳び、電柱の頂点へ着地し、勢いをつけて電線を滑る。シキベは地上を走り出した。初速、加速度は通常の人間のそれではない。だが引き離す! 14

2016-12-31 16:06:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは廃ビルから廃ビルへ跳び、フックロープを前方の看板「荻の窪な」に引っ掛け、遠心力を利用してさらに跳んだ。その後方を三本足のカラスが追いすがる。ニンジャスレイヤーはパルクール・ヒキャクめいてビル壁を走り、跳び、繁華街方向へ向かった。 15

2016-12-31 16:08:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

途端にモノトーンだった情景に暴力的な色彩が溢れる。「セブンス」「貸して返す」「カラオケ市」「電話王子様」「кокэси」「覗いて返す」「おマミ」「餅修羅場」「毎日回転しています」「詐欺NO!」。乱立するネオン電子看板のハレーションと、飛び交う広告爆音だ。 16

2016-12-31 16:13:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ゲーッ!」追い来たカラスは突然の光と音に怯んだ。四方八方からバサバサと羽音が近づき、テリトリー侵犯を咎めるスズメギャングが襲い掛かる。更に悪い事には、BLAM!BLAM!ビル屋上でスタンバイしていたアーバン鳥撃ちがこれに反応、バイオスズメを撃ち始めた。「大猟だぜ!」 17

2016-12-31 16:18:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方、ニンジャスレイヤーは密集店舗のテントの上を雲渡りめいて走り続ける。彼は後方の喧騒に構っている暇は無いし、むしろ撒いておくべきと判断した。『助けてくれ!ハヤク!クソヤベエんだよ!』「黙ってろ!いや、何かわかる事は。そいつの名前や、ジツの類いは!」看板、配管、路地裏! 18

2016-12-31 16:22:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『名前はアモクウェイブ……オレらがまだ知らねえ奴……いきなり客を皆殺しに……どサイコ野郎だ、ただ事じゃねえ。今までで一番ヤバイ。なにか……ブンシンみたいな事をした』「コトブキ=サンは」『わからねえ、多分ありゃダメだ。オレもじきに殺される。怪我して動けねえ。奴は戻って来る!』19

2016-12-31 16:28:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

シキベは広告ネオンの放つ光を吸い込んで輝く水蒸気と屋台街の光景を前に立ち止まった。付近を歩いていたネオン傘の市民が胡散臭げに彼女を見た。やがて三本足のカラスが降りてきて、肩のパディングに爪を食い込ませるように着地した。「見つかりましたか」シキベは尋ねた。 20

2016-12-31 16:34:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

腕を上げてハンドヘルドUNIXを掲げて見せると、カラスは嘴で器用にボタンを押していった。液晶パネルに「ブッダファック」と表示された。シキベは顔をしかめた。「ウェー」 21

2016-12-31 16:36:01