【夢日記】@Hazama_Yujiさんの「神蟲戯師の夢」

狭間有事 @Hazama_Yuji

全ての蜂蟲が死んで、だが鬼火の群れは抜けた。中に匿われていた二匹が鬼火術師の身体に突き刺さる。そして二匹の伸ばす尾が繋がり―その刹那、20Aにもなる電流が鬼火術師の身体をその回路の一部として流れる。鬼火術師はその場に崩れ落ちた。

狭間有事 @Hazama_Yuji

この神蟲は私が電池蟲と名付けた新しい神蟲だ。私は研鑽を進める中で神蟲に他の術師の持つ属性を付与できないかと試行錯誤し、その中で水袋蟲、風船蟲、蔓蟲、焔蟲などを生み出して来た。鬼火術師とやり合うなら水袋蟲かとも思ったが、あれも火に弱い。お互いがお互いに弱点ならば火の本職には負ける。

狭間有事 @Hazama_Yuji

その点、電池蟲は良い。人間で20Aの電流に耐えられる奴などいない。それに数多の術師がいるが電気を使う術師はいない。雷を使おうとした奴らはいたようだが、成功していない。だから電気は完全にノーマークだろうと踏んだのだ。それに、電気など汚らわしい科学文明の技術だ、と忌み嫌う奴も多い。

狭間有事 @Hazama_Yuji

電池蟲を作るには科学文明の技術たる金属加工とか化学の知識とかが必要であるからまあそう思うやつもいるだろう。両親もそんなやり方は神蟲戯師のやり方ではないと嘆くかもしれない。だが、そのお陰でこうして生き残り術を伝えることもできるのだから文句を言われる筋合いはない。

狭間有事 @Hazama_Yuji

私は彼女に話しかける。彼女が話すには、彼女は今まで多くの術師に付け狙われてきたという。なるほどあれ程の素質を持っていればそうだろう。だが強硬手段を取った奴はいないと言う。当たり前だ。本人の意思なくして術師になどなれるものではない。

狭間有事 @Hazama_Yuji

だが運が良かった。もし彼女の力を脅威と感じて殺そうとする奴がいたら彼女は抵抗できなかったろうし、私は弟子をとることはできなかった。私は彼女に、私の弟子となることを提案する。

狭間有事 @Hazama_Yuji

「私の弟子にならないか。君のその力はどうやったってああいうのを呼ぶ。力の抑え方も知らないままうろついているのは危険だ。それに…君を殺そうとする奴がいるかもしれない。私は君に力の使い方を教え守ることができる。

狭間有事 @Hazama_Yuji

それに私は他の術師どもとは違って山に引きこもりっぱなしではないし文明も適度に嗜む。もちろん今のままの生活というわけには行かないがそれ程の力を持っていればきっと楽しい世界のはずだ。それに」ここまで言った所で遮られる。「弟子にしてください」私は少しうろたえる。

狭間有事 @Hazama_Yuji

「本当にいいのか？楽しいだけではないぞ。危険なこともある。影に生きることになる」「構いません。今の生活にも未練はありません」私は彼女の意思の硬いことを知る。どんな人生を送ってきたのかは知らない。だがそれはこれからの神蟲戯師としての人生には関係のないことだ。

狭間有事 @Hazama_Yuji

「分かった、弟子にしてやる」そう言って私は懐から一匹の小さな神蟲を取り出す。「これは刻印蟲だ。こいつを体内に入れれば力を制御できるようになるし、見えないものが見えるようになる。これを入れれば戻れないぞ、構わないか」彼女が頷くのを見て、私は彼女に刻印蟲を入れる。

狭間有事 @Hazama_Yuji

こうして私は弟子をとった。 私は鬼火術師の死体を布に包み、大型の神蟲に乗せて山奥の研究所に運ばせた。何に使うのかと訊く彼女に神蟲の苗床にすると教える。彼女は愉しそうな顔をした。とんでもない奴を弟子にしてしまったかもしれないと思いニヤリと笑う。これは楽しくなりそうだ。

狭間有事 @Hazama_Yuji

私は彼女を連れて夜の横浜の街に向かう。どこへ行くのかと問う彼女に、パスタを食べに行くと答える。意外そうな顔をする彼女に「文明も適度に嗜むと言っただろ？」と言いニヤリと笑ってみせる。彼女もニヤリと笑う。母は一日に同じものを二度も食うなんてと嘆くかもしれないが美味いものは美味いのだ。

狭間有事 @Hazama_Yuji

斯くして私は弟子をとり、神蟲戯師は2人になった。 ～完～