【夢日記】@Hazama_Yujiさんの「神蟲戯師の夢」

結構面白かったのでまとめさせていただきました。
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狭間有事 @Hazama_Yuji

神蟲戯師は平安時代の終わり頃、中央から離反した陰陽師の一部がなったものである。禁術とされていた蟲を使う術を極めるうちに道を踏み外し外道へと堕ちた人々。彼らは長い年月を影に潜み暮らした。また時として歴史に干渉することもあった。彼らは常に日本の歴史の裏にいた。

2017-01-02 09:16:46
狭間有事 @Hazama_Yuji

神蟲戯師の使う蟲は特別な蟲である。神蟲と呼ばれるその蟲は、自然の蟲を数多の神蟲戯師たちが改変し闇の不の悪の陰の力を付与した蟲である。多くの種類があるが、その見た目が醜いことは共通している。神蟲戯師はその蟲を更に改変し、また使役する。

2017-01-02 09:19:43
狭間有事 @Hazama_Yuji

神蟲戯師たちは、他の多くの人の世から外れた術を使う者達と同じく、科学文明の侵略により滅んでいった。彼らには闇が陰が必要であった。科学はそれらを駆逐した。明治、大正、昭和のうちはまだ僅かに生き残っていたが、先の大戦の折、そのほとんどが死滅した。

2017-01-02 09:23:44
狭間有事 @Hazama_Yuji

主人公の「私」は現代に生きる最後の神蟲戯師である。父母共に神蟲戯師である純粋の神蟲戯師。生まれは大正の初め頃。以後何度も肉体を乗り換え現代まで生き延びてきた。 ここからは「私」の話になる。

2017-01-02 09:25:28
狭間有事 @Hazama_Yuji

私は横浜の街を訪れていた。如何に神蟲戯師と言えども食事は必要だし、それを手にするには現代では街に出るのが一番だ。私はかつての神蟲戯師たちのように山奥に研究所を構えてはいるが、それとは別に街にも住処を持っている。私は山奥と街をひと月ごとに往復して暮らしていた。

2017-01-02 09:29:13
狭間有事 @Hazama_Yuji

そんな訳で私は横浜の街にいた。久々に街に出てきて美味いものを食いたくなっている。私は一軒、横浜で美味いパスタの店を知っているのだ。母はそのような食べ物は神蟲戯師の食べ物ではないと嘆くかもしれないが、美味いものは美味いのだ。仕方あるまい。

2017-01-02 09:32:13
狭間有事 @Hazama_Yuji

食事を終え私は街をうろつく。現代は全く便利だ。かつてなら全ての道具を自作し全ての材料を自ら集めたと聞くが、現代では半分くらいは街で代用品が見つかる。父はそのようなやり方は神蟲戯師のやり方ではないと嘆くかもしれないが、便利ならば使った方がいいに決まっている。

2017-01-02 09:34:15
狭間有事 @Hazama_Yuji

こうして効率化していけば私はかつての神蟲戯師たちよりも更に深い真理にたどり着けるかもしれない。私は最後にして最高の神蟲戯師になるのだ。 最後。実は、私が最後である必要はないのだ。幾度も身体を乗り換え身体に神蟲を埋め込んだため、最早子を成すことはできないが、弟子をとることはできる。

2017-01-02 09:37:58
狭間有事 @Hazama_Yuji

そもそも神蟲戯師の全盛期には弟子をとり弟子に自らの全てを伝えるのが普通であった。子を成し子に術を教えるようになったのは、衰退の始まった江戸時代からである。新しい伝統なのだ。だから私がそれに従う必要もない。弟子をとり後継者にすれはいいのだ。

2017-01-02 09:40:32
狭間有事 @Hazama_Yuji

だが現代では素質を持つ人間が少ない。1700年の後半頃から、地脈が弱まっている。江戸時代、子を後継者にする伝統が生まれたのは、これも原因の一つだ。素質を持ち意思を持つ人間を探し弟子にするのは大変だが、神蟲戯師の子ならほぼ素質を持つ。確実に術を後世に伝えるために生まれた伝統なのだ。

2017-01-02 09:43:51
狭間有事 @Hazama_Yuji

だから、難しいとはいえ、弟子をとり術を伝えることはできる。素質持ちは少ないとはいえ、いない訳ではないのだ。私が最後のひとりということを考えればすべきなのだろう。肉体の乗り換えもあと四、五回はできる。時間はあるのだ。

2017-01-02 09:46:39
狭間有事 @Hazama_Yuji

それでも私がそれをしないのは、美しくないからだ。私の弟子は、私を超えることはできない。両親から素質を受け継いだ私は最高の素質を持つ。そしてどの神蟲戯師よりも効率的に、長い時間をかけ術を研鑽した。私は神蟲戯師の絶頂点だ。だから私の代で終わらせたい。絶頂点で滅びる。美しいではないか。

2017-01-02 09:50:42
狭間有事 @Hazama_Yuji

そんなことをつらつら考えながら歩いていたら、いつの間にか横浜港大桟橋埠頭まで来ていた。日は既に沈んでいる。はぐれ神蟲がゆらゆらと飛んでいた。沖の方に地脈の光が見える。かつて日本列島を縦断していた地脈の多くは太平洋側に移り、残った地脈も弱まっている。神蟲たちも生きにくいだろう。

2017-01-02 09:57:21
狭間有事 @Hazama_Yuji

私はそこで信じられないものを見る。1人の少年がこちらへ来る。その瞬間空気が変わった。はぐれ神蟲たちが集まっている。あれは素質持ちだ。だがあそこまで強い素質持ちが現代にいるとは。そして彼はまだ他のどの術にも染められていないことは明らかだ。でなくばあれ程の力を垂れ流してるはずがない。

2017-01-02 10:04:35
狭間有事 @Hazama_Yuji

私はすぐさま懐から蟲笛を取り出しはぐれ神蟲を集める。そして少年を足止めさせる。彼も何かが起こっているのは理解しているようで、怯えている。そのままゆっくりと彼に近づいて―驚いた。少年ではない、少女だ。いや、だが性別は関係ない。とにかく彼女にコンタクトをとることだ。

2017-01-02 10:09:27
狭間有事 @Hazama_Yuji

私は彼女に名前を訊く。彼女は怯えて答えない。私は彼女に歳を訊く。彼女は怯えて答えない。こんなやり取りが何回か繰り返された。埒が明かない。私は彼女に術をかけた。これで彼女も神蟲が見えるはずだ。彼女は怯えて声も出ない。…まあ仕方ないだろう。突然こんなものを見せられても。

2017-01-02 10:12:01
狭間有事 @Hazama_Yuji

私は彼女に神蟲について話す。「これは、神蟲と言って…まあ私たちが使役する妖怪…みたいなものだ」彼女の反応は鈍い。「今までこういうものを見たことないか」語尾を上げて尋ねる。「たまに…見ます…でも怖いから無視してきました」初めての反応が返る。「今まで見たのはどんなやつだ」続けて問う。

2017-01-02 10:15:33
狭間有事 @Hazama_Yuji

彼女の答えを聞いて私は慄然とした。鬼火術師の奴らも彼女を狙っているようだ。あいつらもまた神蟲戯師と同じく道を外れた術師で、神蟲戯師の天敵とも言える奴らだ。奴らと神蟲戯師は とでは相性が悪すぎる。とにかくこの場を離れるのが先決と私は大型の神蟲を呼び出す。

2017-01-02 10:19:39
狭間有事 @Hazama_Yuji

だが間に合わなかった。私が飛び立つより早く鬼火術師の奴が来た。「離してもらおう。彼は僕が弟子にするのだ」「彼女だと。こいつは女だ。私の弟子にする」迂闊だった。あれ程の素質を持ち力を垂れ流しているのだ。他の奴らが狙わないはずがない。ここ数十年他の術師に会わなかったから油断していた。

2017-01-02 10:24:27
狭間有事 @Hazama_Yuji

私は鬼火術師と戦うのは初めてだ。最後に戦った術師は怪木壊師で、相性は最高だった。微塵も勝てる気がしない。だがここは戦うしかない。素直に彼女を差し出しても彼は私を殺すだろうし、それに私はもう彼女を弟子にすることを決めていた。

2017-01-02 10:28:04
狭間有事 @Hazama_Yuji

彼女は恐らく私より素質がある。彼女に私の術を託せば、間違いなく私が独りで究めるより、更なる高みに到達できるはずだ。これを知って、放棄してしまえば神蟲戯師は絶頂点で終わることができない。ちくしょうなんて奴に出会っちまったんだと悪態をつきながら私は神蟲を集め始める。

2017-01-02 10:31:23
狭間有事 @Hazama_Yuji

鬼火術師の奴も私に引く気がないと気づいたのだろう、いやそれより前から始めていたのか、とにかく鬼火を作り始めている。私は飛ぶつもりで呼んだ大型の神蟲に彼女を庇わせ、攻撃特化の蜂蟲で陣を作る。まだ何十人か残っている鬼火術師と違って私は最後の一人、相性は悪いが力量はこちらが上だ。

2017-01-02 10:35:09
狭間有事 @Hazama_Yuji

緊張が高まる。臨界点に達したとき戦端は開かれる。そしてその時が私の勝機だ。私は一つ私独自の術を試してみようと思っている。これはどんな書にも載っていない私が作り上げた術だ。これが成功すれば或いは勝てるかもしれない。とにかく勝機は一瞬だ。緊張が臨界点に向け高まっていく。

2017-01-02 10:38:52
狭間有事 @Hazama_Yuji

臨界点にに達した。奴は対神蟲戯師の基本である大量の火で押し切るつもりのようだ。数百の鬼火を全て一気に私と私の蜂蟲に向けて放った。私は蜂蟲の陣に二匹の神蟲を放ち、蜂蟲がそれを覆う。そのまま蜂蟲の団子は鬼火の群れの中に突っ込む。外側から順に蜂蟲が燃え死んでいく。

2017-01-02 10:42:46