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帽子男 @alkali_acid
過去に恋人を寝取られた経験があって十も年が離れた許嫁を孕ませて束縛しようとする名家の男 odaibako.net/detail/request… #odaibako_alkali_acid
帽子男 @alkali_acid
寝取られた。つらい。過去といってもごく最近の話です。 「おい寝取られたではないか」 「はい。見事に」 「寝取られるのってこんな感じなのか?かなり衝撃なのだが」 「さあ、自分は経験がないので何とも」 「ええい。どうすればよい」 「あきらめるべきでは?」 「いや困る。困るぞ」
帽子男 @alkali_acid
ヘルムート・フォルバイン博士は頭を抱えた。 「ゆくゆくは結婚し、吾輩の研究すべてを受け継ぐ子供を作る計画であったのだぞ」 「残念ですな。養子をとられては?」 「ならんならん!子供を作る、と言ったはずだ。吾輩が求めているのは大いなる天才の母胎となるべき人物なのだ」
帽子男 @alkali_acid
助手のピケは淡々と応じる。 「自分はツチブタの世話がありますのでこれで」 「あやつらには勝手に土を食うだけではないか!それより吾輩の恋愛問題の方が重要だぞ」 「いや、ツチブタが最近人肉の味を覚えたようで、うっかり博士の恋人を平らげていないとも」 「なんと?まことか?」
帽子男 @alkali_acid
主従はツチブタを放し飼いにしている泥沼に出かけて行った。 人間を食べられるぐらい成長している二頭を調べてみたがとりあえず歯などに残滓が挟まっている痕跡はない。 「あとは糞ですね」 「炭になってしまえば何も解らんぞ」 「指輪ぐらいなら見つかるかも」 「ふうむ…」
帽子男 @alkali_acid
ツチブタは博士が品種改良したもので、本来は金剛石、ダイヤモンドの糞をするはずだったが、育ってみると黒炭をひるだけの生物になってしまった。石炭よりも高温で燃えてほとんど煙を出さないので重宝しているが。 博士はしかし巨大で半水棲の醜い獣を眺めるたび過去の失敗を思い出し不機嫌になる。
帽子男 @alkali_acid
とはいえ博士の実験で成功した例の方が少ない。 助手のピケにしてからがそうだ。 ピケは瓶の小人、いわゆるホムンクルスとして作り出したのだが、今や身の丈は六尺あり、なお大きくなりな気配だ。幸い博士の屋敷の醸造所でできる火酒さえ飲んでいれば栄養が足りる便利な体質ではあるが。
帽子男 @alkali_acid
これまた博士にとっては眺めるたびにいらつく存在ではあるが、しかし助手がいなくても困るのでそばにおいている。 だが小人ならぬ大人が、申し訳程度に腰にぶらさげた玻璃の瓶から茴香を漬けた酒精をすするたび、いつもしくじりが蘇ってくる。
帽子男 @alkali_acid
恐らくは瓶の中で生まれたピケがなかなか、博士の呼びかけに意味のある受け答えができるようにならないのにいらだって、与えた薬、紆余曲折を経て完成した、珍しい成功例である成長薬のせいだろう。
帽子男 @alkali_acid
「あの時、ひとさじ少なくしておけば」 「後悔先に立たず」 「だまらっしゃい!ピケよ。お前はまずまずの成功例だが、吾輩の研究を引き継ぐ息子とするにはいますこし足りぬ」 「こちらからお断りしたい所存です。自分は助手で十分。あとは火酒さえ切らさずいただければ」 「なんと野心のないことよ」
帽子男 @alkali_acid
「真の学問を修めるにはぎらぎらとした貪欲さが不可欠なのだ。吾輩が千塔の都で教えていたころの弟子の中には…まあろくなのはいなかったが」 博士は、泥をはねかせて泳ぐツチブタを見守りながら考え込む。 「いや、理想の跡継ぎはやはり作らねばならん。どうあっても妻がいるのだ」
帽子男 @alkali_acid
「また恋人を買ってきますかな。銀貨をはずめば喜んで囲われる女は沢山おりますぞ」 「いかんいかん!そういうのはこりごりだ。また逃げられては困る…しかしどうやって出たのだ。ここに辿り着くのも、出てゆくのも簡単ではないはず」 「はて」 博士と助手は見つめ合った。 「ピケ、もしやお前」
帽子男 @alkali_acid
「それより博士。跡継ぎを作るための妻だか恋人だかは」 「おお。そうだったそうだった…ふむ。町の女はいかん…やはりここは…貴族か…郷紳…豪商、豪農あたりの娘がよかろう。年頃まで修道院かなにかに入っていて義理堅くて夫から逃げるなど考えもせぬのがよい」 「ですが博士」
帽子男 @alkali_acid
瓶の大人はまた火酒をあおってから指摘する。 「そのような女性(にょしょう)は、錬金術師の妻になどなりますまい」 「む?なぜだ?」 「異端です」 「おお、異端か…確かにな…忘れておったぞ」 錬金術師はまた考え込む。 「ええい教会のやつばらめ、新しいのも古いのもうっとうしいことよ」
帽子男 @alkali_acid
博士は不機嫌そうに杖を振り回してから、来た道をとってかえす。助手はおとなしくついていく。 「ふむ…ふむ…書斎に戻れば何か妙案が得られよう」 「泥を落とさないで下さい。掃除したばかりですよ」 「ふむ…ふむ…」 主人はあれこれの古い巻物だの綴本だのをひっくりかえす。
帽子男 @alkali_acid
下僕は、瓶の中に入った透き通ったしかし辛い代物を舐めながら尋ねる。 「何をされておいでで」 「吾輩には…許婚がおったぞ!」 「おや」 「ほれ、毎年どこぞの修道院に世話料として銀貨を送らせておる」 「あれはてっきり私生児でも養っているのかと」 「違うとも。近頃はとんと手紙もないが」
帽子男 @alkali_acid
錬金術師は勝ち誇ったように一枚の羊皮紙を掴みだす。 「ほれこれよ!アンフレーロ・ヴァンシーム!確か鶏舎をいくつも持っている豪農の四女で実家はどこぞの市民権も買っておった」 「おいくつになられます」 「はん?吾輩より十は年下だが」 「博士は今年でおいくつに」 「さて、七十…五?六か?」
帽子男 @alkali_acid
ピケは瓶にふたをして首を回す。 「失礼ながら博士。するとそのヴァンシーム嬢は六十いくつになっていらっしゃる」 「うむ?」 「お子を設けるのもいささか困難では?そもそも生きていらっしゃれば」 「何を言う。死んでいれば修道院からもう世話料はいらんと連絡があろう」 「どうでしょう」
帽子男 @alkali_acid
助手は顎に指をあてて話す。 「博士の御用であちこちへ出かけるたびに見聞きする噂では、修道院というのは悪辣な尼や僧の巣窟だそうです。そのヴァンシーム嬢はとっくに亡くなっていて、世話料欲しさに黙っているだけかもしれませんぞ」 「何を?まことか?いや確かめてみねば!車を出せ!」
帽子男 @alkali_acid
錬金術師が命じると、瓶の大人はしかたないとい肩を竦めて準備にかかる。 車というのは、主従が二人して組み上げた、発条だのなんだのを沢山つめこんだ箱型で、どんなでこぼこ道でもあまり揺れず、六つの輪は巧みに路面の高低に合わせて動くすぐれもの。ただし牽くのは馬ではなくツチブタである。
帽子男 @alkali_acid
助手は用意が済むと、井戸に備えつけた太陽熱式の霧吹きを調整してあたりにたちこめる湿気の帳を濃くし、チスイコウモリの巣になっている塔楼の格子をすべて開け放った。 翼ある吸血の小獣は、泥沼に住む土食いとは仲が悪いがいたしかたない。 「何をもたもたしておる」 「泥棒よけです」
帽子男 @alkali_acid
「泥棒だと!一度もお目にかかったことがない」 「自分はこの十年に二度ほど、ツチブタが齧ったのとチスイコウモリが吸い尽くしたのを見ました。ただ迷い込んだだけかもしれませんが」 「なんと!なぜ言わん」 「研究にご熱心でしたので」
帽子男 @alkali_acid
「ばかもの!せっかく腑分けの腕を磨き直す機会を…まあいいいくぞ!許婚が先だ!」 主従は豚車に乗り込み、御者台に助手が、客席に博士が座る。 鞭をくれると、汚い鳴き声とともに勢いよく乗り物は走り出した。 「ところで、なぜ博士はそのヴァンシーム嬢と結婚されなかったのです」 「ん?」
帽子男 @alkali_acid
「おおそれか…いや吾輩は当時、錬金術師の下働きでな」 「自分のような、ですか」 「いやピケ、お前のような助手とはまるで違う。実験用具を洗ったり、あれそれの調合材料を薬種屋やなんかから買ってきたり、飯を作ったり掃除をしたり」 「やはり同じでは」 「違うとも」
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コメント

にょんギツネ @nyol2novel 2019年5月4日
すごいのじゃ……美しきはっぴぃえんどにしてとぅるうえんどなのじゃ……
Ryosuke Suzuki @RyosukeSuzuki11 2019年5月4日
帽子男さんにしては珍しくハッピーエンドで笑う
夜行ぬえ(誤字マン)は棘皮動物になりたい。 @yagyou 2019年5月4日
無学すぎて途中のガジェットがなんだかわからんかったけどハッピーエンドなのかこれ
(・ิω・ิ)もろきう(・ิω・ิ) @moroQ_mayuge 2019年5月4日
(ヽ'ω`)ハッピーエンドすこ (ヽ'ω`)ところでねこりどこ?ここ?
からす @pashikuru 2019年5月5日
うーん、いい。仕事で時間ないのについ読み込んでしまった。