正宗白鳥くんのことども

白鳥くんの評論まとめ
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@hnnsbt_yyyyone

そこに理想や信念はなくただ「ありのままを描く」という自然主義の型を忠実になぞっている(なぜなら当時流行ってたから)だけなので、だざいちゃんが「牛肉の缶詰!」って非難するのも分かるし、UN-GOが「でも牛肉の缶詰美味いじゃん」っていうのもわかる

2017-08-27 21:55:08
@hnnsbt_yyyyone

白鳥くんが自然主義、ことに泡鳴、花袋のことを気軽にぶっ叩くのは「俺は身内だから良いだろう」と思ってるようなふしがあり、他人が同じことをやると「は?お前が何を知っているんだ?は??」って感じで振りかぶって石を投げてくるので気をつけろ

2017-08-03 23:24:53

白鳥くんの評論

@hnnsbt_yyyyone

白鳥の評論は自己の視点を基本としているので、けなす時は絶対に「俺にはつまらなかった」「俺は下手だと思った」から入ってなぜならば〜のくだりで滅多斬りにするんだけど、褒めるときは「俺には面白かった」「愛読している」のときと「(好き嫌いはいわずに)上手い」のときとあるんですよね

2017-10-02 00:59:29
@hnnsbt_yyyyone

白鳥くんが大好きで愛読してるのは藤村、秋声、荷風なんだけど、「秋声の新作、耄碌しすぎててビッックリした。読んじゃいけないもの読んだ気分。緩みすぎで冷や汗でた」とか、「荷風くん、江戸時代の古文とか読みすぎて現代文忘れてない? 大丈夫? 新聞読む?」とか平気で書いてて面白すぎるから

2016-12-20 13:27:34

幸田露伴 評

@hnnsbt_yyyyone

白鳥くんの露伴評で一番好きなのは「露伴が新聞にのせた随筆で『自殺するような馬鹿者共』って書いてて、露伴のこういうとこが俺は昔から嫌いなんだよなーと思った。芥川が自殺したばかりだったからあてつけかよと余計に腹立ったけど、よく考えたら執筆時期はもっと前のはずだから関係ないな→

2017-08-03 23:11:35
@hnnsbt_yyyyone

でもそれはそれとして露伴のこういうとこが俺は嫌いだ。同じ時代の人間だって四迷や独歩はこんな風には言わなかったし、鴎外だってたぶんこんなに頭ごなしに馬鹿なんては言わなかっただろう、たぶん、きっと」です

2017-08-03 23:13:32

(「文壇人物評論」より、露伴の紀行文を読んで)

―ただ、そのうちに「大事な命を粗末にする馬鹿者ども」といったような言葉で、華厳の滝投身者を罵っていたのを読んで、「露伴は昔からこういう風な人なんだな」と、ちょっと嫌に感じたのを思いだしたのである。紀行文の何回目かにそういう文句が出て来たのは、芥川龍之介自殺後、五六日過ぎたばかりの頃だったので、露伴氏は、龍之介氏を間接に罵ったのではあるまいかと、私は疑って、一層いやな思いをしたのであった。
しかし、それは私の思い過ごしで、あの紀行文は、脱稿後よほど経ってから新聞に掲載されたので、芥川自殺の是非には関係がなかったのであろう。(略)

「自殺者は馬鹿だ」とは、地上の誰でも言いそうなことで、問題にするに足らぬ話であるが、露伴氏の小説を鑑賞し批判する時の一つの鍵となりそうだと、私はその時、ぐっと自分の記憶に押し込んでおいたのである。

「自殺する馬鹿者共」という何気ない一節に、白鳥の炯眼は、露伴の小説の根底に流れる厳格で保守的な(ともすれば冷淡な)道徳観を見出しています。白鳥の鋭い観察眼と、露伴とは相いれぬ価値観、死生観を象徴した一節だと思います。

@hnnsbt_yyyyone

白鳥くんの「現代文芸批評」より。白鳥くんの趣味はおいといて、紅露と並び称されてても、露伴先生はより文学青年好み、通好みだったという話 pic.twitter.com/eXwlRPIhPO

2017-01-04 20:02:45
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私は露伴も、目に触れたものは、大抵読んでいたのであったが、氏のものに限って、ほとんど何らの興味をも覚えなかった。紅葉の作品はなんといっても面白かった。
「紅葉は文章は巧いが内容が乏しい。露伴は想が傑れている」などと、あの頃の文学青年は言っていたものだ。露伴のほうが非凡らしく言われていた。世評がそうだから私もそう思わせられていたが、その非凡さを自分の頭脳に感得したことはなかった。(略)なんとなくそう思っていただけで、直接に氏の作品によって感動させられたことはなかった。氏は早くから和漢の文学に造詣深く、文章が難しく凝ってはいたが、しかし、少年時代の私が読み悩むほど、氏の小説が難解の書であるとは思われなかった。

露伴をこきおろし紅葉をベタ褒めしているように見えますが

―文章が雄健で男性的気概を含んでいるらしくいわれて、紅葉一派のおしろいくさい柔弱らしい小説に飽き足りない人々に喜ばれていたのであったが……

よく読むとさすがは白鳥くん、紅葉一派もさらりとディスっている(これはもっぱら風葉、それに春葉と鏡花の初期のことだとおもわれます)

@hnnsbt_yyyyone

白鳥くんの露伴先生評「なんかお高くとまった読者には好かれるけど、紅葉と違って重苦しいし、東洋の古典にばっか心を注いでたからかな、俺には響かなかった。理想派なんていうけど、大した理想じゃねえし。まあでも、「運命」はすごい。厚みも深みもあって、近代歴史小説中の最高位」

2017-01-04 18:05:14

幸田露伴氏は紅葉山人と同様に文学修行の初歩として西鶴を学んだ人であったが、文章は紅葉と違って重苦しかった。紅葉ほど一般的でなかったが、高級な読者には紅葉以上に尊敬されていた。(略)
私は、氏の青年期の評判の高かった小説にも、さして親しめなかった。氏は鴎外氏とともに、明治の作家中、もっとも学識のあった人だが、鴎外氏のように近代欧州文芸に親しまず、もっぱら東洋の古典に心を注いでいたことが、その作品をして私などの心に触れさせなかった一つの原因になっていたのであろう。

露伴は理想派とあの時代には大まかに決められていたが、露伴氏の作中の理想は、取り立てて言うべきほどのものとは思われない。

「高級な読者」というのは白鳥くん流の皮肉だし、後半の近代欧州文芸に親しまず云々も、「西洋から学べよ頭のかてーやつだな」を白鳥くん流にいいあらわしたものだと思われます。
でも褒めるときはめっちゃ褒めるよ。

しかし、氏の晩年の「運命」などは、厚みもあり深みもある優れた歴史小説であって、外形の文章は漢文調であっても、生彩ある人生世相の一面が愁然と叙述されて、我々の胸に迫ってくる。鴎外氏の晩年の史博小説とは趣は異なっているが、共に、近代の歴史小説中の最高位を占めている。

@hnnsbt_yyyyone

好きじゃないってぼろくそにこき下ろしながら、「近代歴史小説中の最高位」まで言えるところが白鳥くんのフェアな視点をあらわしているんだなあ

2017-01-04 18:05:57

あと、筆力についてもおおいに評価しているよ。

―同じく「雑文」とか「随筆」とかいわれるものでも、「洗心廣録」を呼んだあとで、いろいろな雑誌の雑文随筆を読むと、表現の方法がこうも違うものかと驚かれる。同じ厭世調でも意義を正して説かれると重みがあるのだが、今後は、こんな古典的名文を書きうるものは出てこないだろう。露伴氏には模倣者がない。最後の一人である。
(「文壇人物評論」より)

田山花袋評

@hnnsbt_yyyyone

本件とはとくに関係ないのですがぼくらのはくちょうくんは「かたいさー、年食ってから『私は若い頃野暮だった』つって笑い取ってたけど、一生野暮だったじゃん。文章が野暮。描写で感心したこと一回もない。だいたい女の描写がヌルい。処女信仰ダダ漏れ」って、とても率直にのべています

2016-12-19 07:53:32

※以下は「文壇人物評論」田山花袋の章より引用

@hnnsbt_yyyyone

私が勝手に雑にまとめているから、白鳥くんがめちゃくちゃひどいやつみたいになってて申し訳ないね。花袋くんに対する評論の原文を引いておくね。「花袋氏は、(略)最後まで小説道の名人にはなれなかった」「表現のうまさに感動したところはなかった。朗々誦すべき名文句に接したこともなかった」

2016-12-20 14:12:24
@hnnsbt_yyyyone

@yone_hn 「女の描写にしても(略)形容詞がいつも用いられているだけで、その女の姿形がいきいきと紙上に活躍しているのではない。」「鏡花、或いは里見弴の小説に現れているような色彩は、花袋の小説においては全く求め難いのである。」 (略)のところの描写例、私は好きだけどな……

2016-12-20 14:13:15

(略)の部分と、荷風先生の名が抜けていたので補足

どの小説にも主要人物としてあらわれ、「詩よりも強く」愛されている女の描写にしても「ぱっちりした黒目がちの瞳」とか、「白い腕、透き通るような肌」とか、「赤く熟した桃の実のような色をした唇」といったような、形容詞がいつも用いられているだけで、その女の姿形がいきいきと紙上に活躍しているのではない。美しい女の美しさが繪のごとく描かれているのではない。芸者生活をえがきながらその空気が濃厚に漂っているのでもない。鏡花荷風、あるいは里見惇の芸者小説に表れているような色彩は、花袋の小説においては全く求め難いのである。

@hnnsbt_yyyyone

@yone_hn 「昔、氏は「要するに私は野暮であった」と告白して、他の笑いを醸したことがあったが、氏の作品は一貫して野暮ったかった」「洗練された味わいは含んでいないで、田舎臭くて粗忽である」 そろそろ私もつらい

2016-12-20 14:16:05
@hnnsbt_yyyyone

@yone_hn 「少女にあこがれて詩を作っていた時分と同様に、ひとりで恋の境地を空想してホクホク喜んでいるのである」「恋愛その他について、ふた昔も三昔も前のたわいのない空想をもっているのではないか」 しかたないだろプロ童貞なんだから!!!

2016-12-20 14:19:38

「蒲団」以前、すなわち「名張乙女」や「野の花」時代と同様の女人憧憬の空想が、六十歳近い作者の頭脳に漂っているのだ。老人となると、頭脳が枯渇して空想の華がしぼむと、一般に思われていて、私などもそう信じていたが、これらの小説でみると少女にあこがれて詩をつくっていた時分と同様に、独りで恋の境地を空想してホクホク喜んでいるのである。(略)
そして、田山氏だけが特異な老人であったためではなく、多くの老人が、(略)恋愛その他について、ふた昔も三昔も前のたわいのない空想をもっているのではあるまいか。……それはわらい事ではない。

笑い事ではない。白鳥くんはなにも花袋くんをディスってせせら笑っているのではない。真剣に「世間の年寄りってみんなこんなもんなのかよ。やばくないか?」と憂いている。

@hnnsbt_yyyyone

@yone_hn 「描写というより記録といった方がいいかもしれない。それも、くどい記録である。(略)「もう沢山だ」と、読者たる私は作者の愛欲感に食傷する思いをした」「これらの小説は芸術を欠いているように思った。「下手だなあ」と思った。」 とうとう! はっきり! 言ったね!!

2016-12-20 14:22:37
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