提督代行　加賀：番外　未成の魂　其の六

猫を愛でる加賀@猫航戦 @love_cat_Kaga

#未成の魂　其の六

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「んー？」 気の抜けたような天城の声が前方からするので、ツェッペリンは視線をそちらに向ける。 そして、正面遠方に何かの影を認めた。 「人型だが艤装に反応が無い。敵影……ではないのか？」 #未成の魂

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「何か、嫌な感覚が……」 身を硬くした土佐が静かに構える。 「なんだろうねぇ。なんにせよ、聞いてた話とは違うっていうのだけは、確かだね」 天城は冷静に見つめ、正面から視線を外さず手探りだけで艤装を戦闘準備段階に移行させる。 #未成の魂

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「グラーフ、指揮をお願い。あたしが前に出るから、土佐は十分に距離をとった上で援護を」 「了解した」 「は、はい……」 高まる緊張感の中で、ツェッペリンは前を行く天城の背を見つめた。 #未成の魂

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同じ未成艦を元にした艦娘同士なのだから、三隻とも初陣のはずである。 しかし、三者三様の中で、先を行く天城は明らかに一段上にいると感じた。 （天賦の才というものだろうか。ヒトの部分がそうさせるのか、それとも艦として備えていた部分が現れているのか……） #未成の魂

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艦娘とはつくづく面白いものだと我ながら思う。 自律した兵器の優位性は高度な自己判断が可能という点にあると考えていて、自分の前を快走する天城はまさにそれを体言する存在だった。 #未成の魂

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（私も負けてはいられないな。さて、実戦でどこまでやれるか） 腰のポーチに手を伸ばし、手探りだけで数枚を取り出す。 そのうちの艦戦のカードをカタパルトの裏面に装填し、発艦の態勢を取る。 #未成の魂

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その時、声が聞こえた。 知らない声だが、明確にグラーフ、グラーフと呼び続けている。 穏やかで優しく、ゆったりとした女の声。 正面の陰を凝視すると、見知らぬ女の姿がそこにあった。 突然の事にツェッペリンは困惑した。 #未成の魂

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「落ち着きな、幻覚の類だよ。あたしには赤城の姿が見えてる。多分この声も」 天城の低い声にツェッペリンは気を取り直す。 「私に見えているのは別の者だな。私の名を呼んでいるが、知らぬ顔だ」 「個々の精神に働きかけているって事？　なんかこう、不愉快な感じがするね」 #未成の魂

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「……姉さん？　姉さんなの……？」 震える土佐の声を聞き、二人ははっとした。 虚ろな目をした土佐は、戦闘態勢も取らずに立ち尽くしていた。 そして、影の方に手を伸ばしながら、ゆっくりと水面の上を歩き出した。 刹那、天城の脳裏に戦艦土佐の艦暦がよぎる。 #未成の魂

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「グラーフ、発艦急いで！　『姉妹艦』を知識でしか知らないあたしらと違って、土佐は心で『姉妹艦』を知ってるんだ。このままだとまずい事になる」 「了解した」 即座に第一波を発艦。カタパルトより射出されたカードはややあって艦載機に実体化し、不明艦に向けて飛び立った。 #未成の魂

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続きはまたいずれ。 #未成の魂