姫「嫁に行くことで戦争を止めたいが、わたしの顔は普通なので美しい身代わりを立てることにした」
「…………」 「…………」 「……寒くはございませんか、姫様」 「問題ない。お前こそ、体は大事ないのか」 「少々痛みますが、問題なく」
2020-01-24 19:01:56「まさかあんな無茶をして船に突入するとは」 「凧を操作して飛ぶのは故郷の名物なのです。流石に飛ぶために作られたものでない凧を操るのは骨が折れましたが」
2020-01-24 19:01:56「なんというか、凄かったな。あれ、民草には"傍女を救いたいという姫のやさしい願いに龍が応じた"って伝わってるらしい」 「なんともはや……妄想逞しいことで」
2020-01-24 19:01:56「……なんという顔をしているのだ、お前は」 「なにか可笑しゅうございますか」 「困った顔で笑いおって」 「…………、……姫様の、お命が無事で、ようございました」 「貞操もな」 「姫様」 「ははは、怒ってくれるな。それに……もう姫ではないぞ。名実ともに」
2020-01-24 19:01:56「おいたわしい」 「憐れむな。比較的丸く収まったろう」 「しかし、表向き、手引きした官女として島流しになるとは」 「さりとてそなたの妹は正式に王妃となった。我が国には王弟殿が婿入りし、いずれ王となる。無謀な策の収まりどころとしては悪くあるまいよ」
2020-01-24 19:02:53「……最所からこのつもりで?」 「いずれはこうなると思っていた。早いか遅いかの違いだろう」 「姫様」 「それに……よいところなのだろう?西の最果ての国は」
2020-01-24 19:02:53「……ガラス質の花の咲く、稀有な土地でございます。風と共に生きる、私のような顔かたちの民の多い……」 「美形の国かぁ。私のようなものは浮くだろうなあ」 「……我が国の美の条件は、黒髪に大きな目の、背の低い女性ですよ」 「えっ」 「姫様は、お美しいですよ」 「……お前の国の基準でな?」
2020-01-24 19:02:53「…………ど、どうしたの」 「姫でなくなったとおっしゃるので、口説いても構わないかと」 「くど、口説いてるの!?正気か!?」 「発狂したように見えますか」 「頭ぶつけたかなって……」
2020-01-24 19:04:03「心外です」 「ごめん……」 「……今のは、お返事ですか」 「えっ、こくは、告白のつもりか!?今の!?」 「はい。──神美(シェンメイ)さま。伝わらぬならもう一度」
2020-01-24 19:04:03「まっ、待て」 「待ちましょう」 「こっ、こんなこと、あるか?現実に……」 「姫様。事実は、小説より奇なるものでございますよ。身をもってお分かりになったでしょう?」 「いや、…………うん…………」
2020-01-24 19:04:03「…………では、女性向け恋愛小説のようにいたしましょうか?」 「えっ」 「シェンメイ」 「は、」 「愛している。──美しいあなたを、今宵、おれのものにしたい」 「………………っは~~…………お前……お前そういう……お前なあ……」 「水をささないで。お返事は?」
2020-01-24 19:06:00「姫様の読んだ小説の中で、十数年ぶんのこじらせたものを抱えた男はどうなりました?」 「そういうの読んだことない……」 「では、実際にしてみましょう。──いいな?シェンメイ」 「確認するな」 「よいと仰いませ。……ね」
2020-01-24 19:06:01「顔がいいのをわかりきったごり押しをするな!……返事、わかってるんだろう、お前」 「ええ、勿論。私と姫様は、長年連れ添った間柄ですから」 「人聞きが悪いから言葉遣いを改めろ」
2020-01-24 19:06:01フォロワーにイメージを伝えたら姫様のイラスト描いてくれて大変嬉しく心臓が止まりましたので見てほしい