出口なお 安丸良夫

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GMBO2008 @GMBO2008

こうした文脈では、民衆とは、自己と世界の全体性を独自に意味づける権能を拒まれている人たちのことであり、神がかりとは、こうした人たちが神という現存の秩序をこえる権威を構築することによって、自己と世界との独自な意味づけに道を拓く特殊な儀式のことである。 「出口なお」 安丸良夫

2017-01-29 23:10:17
GMBO2008 @GMBO2008

自らと自らをとりまくものを意味付けることを他者に委ねることは、自らと自らをとりまくものから疎外されることであり、それを意味付けるものによって支配されることである

2017-01-29 23:13:28
GMBO2008 @GMBO2008

この木棉も、信淵によれば、「小百姓ニハ貧窮人多クシテ、干鰯干鯡油糟等ヲ始メトシテ高料ナル肥料ヲ用フル事能ハズ」、ただ「芝青草」を「埋肥」するばかりで、「真ノ豊熟」をうることはなかった。 「出口なお」安丸良夫

2017-04-03 23:19:20
GMBO2008 @GMBO2008

もし、この小百姓が何らかの手立てにより一時的にでも干鰊などの肥料を入手できれば、生産のサイクルを一段あるいは数段上げることができたのかも知れないしできなかったのかも知れない それは投企である また、わかっていてもできないことは制約である

2017-04-03 23:31:28
GMBO2008 @GMBO2008

なおの生活思想からすれば、誰にも不平をいわず辛抱づよく耐え、勤勉、律儀で正直に生きれば、結局のところはどのような困難もくぐりぬけられるはずだった。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-06 23:30:03
GMBO2008 @GMBO2008

いまこうした生活思想を、「通俗道徳」的な自己規律・自己鍛錬と呼ぶとすれば、こうした形態をとった自己規律・自己鍛錬こそ、封建社会から近代社会にかけての日本社会の転換をその基底部でささえた民衆的なエートスであり、民衆の精神的な自立のかたちであつた。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-06 23:34:13
GMBO2008 @GMBO2008

だが、「通俗道徳」型の努力が「家」の繁栄と永続の方法であり、結局は自分が幸福になる方法だといっても、それにはすくなくとも二つの前提条件が必要だった。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-06 23:42:17
GMBO2008 @GMBO2008

その一つは、家族構成員全員か懸命に家職にはげめば、その成果はまがりなりにもその「家」に安定と繁栄をもたらしうるほどに、「家」をとりかこむ社会体制が小生産の安定性を保証していることである。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-06 23:46:47
GMBO2008 @GMBO2008

いま一つの条件は、家族構成員全員(将来の家族構成員もふくめて)が「通俗道徳」を実践すること、とりわけ、一家の家父長とその跡とり息子が実践することである。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-06 23:53:13
GMBO2008 @GMBO2008

なおの父の五郎三郎や夫の政五郎のように、こうした生活規範の枠組のまったく外へ出てしまった人物を家父長とする家では、その家の主婦であるそよやなおの努力は、ほとんど底のないバケツで水をくむようなむなしいものになってしまうのであった。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-06 23:53:59
GMBO2008 @GMBO2008

しかし、たいしてうまくいっていないときにも、「通俗道徳」の説得力はかんたんには失われない。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-07 00:01:07
GMBO2008 @GMBO2008

「通俗道徳」的自己規律という生活思想は、個々人の「通俗道徳」型の努力→「家」の繁栄→みずからの幸福というサイクルで、個人の内面的世界を社会体制のなかに統合している方式であり、その時代のなかで説得性をもつほとんど唯一の方式だったからである。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-07 00:02:35
GMBO2008 @GMBO2008

なおは、おそらく早熟かつ過敏にこうした生活思想を身につけ、その後の生活史の全過程でもそれに固執した。孤独ななおは、こうした固執とそこに生まれた矜恃なしには、自己の統一性(アイデンティティ)を守ることができなかった。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-07 00:13:01
GMBO2008 @GMBO2008

そして、そこに存在していた孤独な矜恃が、神がかりにいたるための跳躍台だったのだろう。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-07 00:15:56
GMBO2008 @GMBO2008

なおのすべてに「控へめ」な生き方は、じつははげしい「我を折」ったところになりたっている屈折した生き方のことである。生活者としてのなおは、不運な諸条件のなかで、「家」や夫や子供たちのために、ほとんど完璧に自分の「我」を折り、自己犠牲的生活をつらぬいてきたのだが、 「出口なお」

2017-04-14 23:18:13
GMBO2008 @GMBO2008

なおは、本当はきわめてつよい「我」を持っているのだが、「我」を出しすぎた艮の金神の罪を贖うものとして、「我」を折り、「我」を心の内奥へ鎮めて、あらゆる苦難に耐えねばならない。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-14 23:11:57
GMBO2008 @GMBO2008

しかし、こうした生き方の内実はきわめて強靭な「我」にささえられてはじめて可能なものだったのであって、いま、そのことはほとんど自覚されているといえる。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-14 23:21:04
GMBO2008 @GMBO2008

あえて奇矯の言を付加すれば、近代化日本の社会意識の水面下の部分に蓄積されてゆく鬱屈を、男性的構造からいっきょに解放すれば、超国家主義的ラディカリズムとなり、女性的主体構造からいっきょに解放すれば、民衆宗教となるのではないかと考えられる。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-14 23:27:21
GMBO2008 @GMBO2008

100年前の日本の農村出身者をラストベルトの元工場労働者に置き換えるとパラレルに見えるものがあるような気がする

2017-04-14 23:49:00
GMBO2008 @GMBO2008

ラストベルトの元工場労働者の置かれている状況は「社会の近代化」の過程ではないが、社会の境界線が拡大し、それに伴って曖昧になることにより、安定した社会が解体され、そこから疎外されていく過程ではあるだろう

2017-04-14 23:49:27
GMBO2008 @GMBO2008

こうした状況のなかで五感に強烈に訴える神憑現象がつくりだされ、しかもそれがより超越的な能力としての審神者によって操作されうることが証明されると、あいまいに潜在していた人々の霊魂観に火がつけられ、つよい驚きと感銘をあたえたのである。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-16 11:02:44
GMBO2008 @GMBO2008

こうした鎮魂帰神法が、なおの周囲にいた素朴な人たちを驚かしただけではなく、高等教育をうけた知識層にもつよい衝撃をあたえうるものであったこと、 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-16 11:03:59
GMBO2008 @GMBO2008

鎮魂帰神法による神霊の実在の確認が大本教団の発展の原動力の一つ(とくに大正十年の第一次大本教事件までは)だったことは、十分に留意すべきことである。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-16 11:04:31
GMBO2008 @GMBO2008

ここで、もしなおが、教義と組織の体系化を喜三郎にまかせ、自分は神がかりする霊能者=教祖として崇敬されて、喜三郎によってつくられつつある体系の頂点に坐りこんでしまえば、 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-16 11:11:36
GMBO2008 @GMBO2008

神がかりする霊能者(しばしば女性)と俗事にもたけた組織者(経験ある男性が多い)の組合せからなるありきたりの小教団が成立したことになろう。 「出口なお」 安丸良夫

2017-04-16 11:15:26