ＰＰＡＰが流行したのは、家族や友人と一緒にyoutubeを視聴する上でのきっかけにできたため

生命情報保存研究所 @rodan670

子供から老人に至るまで満遍なくＰＣあるいはスマホを所有する時代となった。また世界で最も人気があるサイトはyoutubeであるため、それは同時にあらゆる層がyoutubeの視聴者と化している事を意味する。

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しかし、ここにある系列の動画にはまっている個人がいたとして、その人物が家族または友人に、今視ている動画の内容について語ることは多くない。それは、一つには近しい存在に、自らの嗜好がばれることを恐れる心理に由来する。

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好んで視聴している動画がアニメであれアイドルに関するものであれ、あるいは特定のyoutuberが投稿したものであれ、プライベート空間において本人が心を許したものである以上、それらは当人の精神性の写し絵でもある。

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一つ一つの動画だけならまだしも、何かの間違いでyoutube内での視聴履歴などが開示されるようなことがあれば、当人の飾らぬ人となりがたちどころに丸裸にされてしまう。その上で「あなたがそういう動画を見る人だとは思わなかった。何かイメージが変わった」などと言われては立ち直れない。

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近しい人とyoutubeについて深く語れないもう一つの理由には、「自分の趣味ばかりを嬉々としてしゃべりたがる空気の読めない人」と化してしまうことを回避したいという心理がある。

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youtubeには関連動画表示機能がついており、一つの動画を視聴した人物に、その者が興味をそそりやすいいくつもの他の動画を提示してくれる。その誘惑にとらわれれば人はたちまち自分にとって最も居心地のいい映像の海に溺れて時を忘れる。

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youtubeを開くということは、必然的に閉じた世界でオタク的になるということである。よってその経験と興奮をそのまま話題にすれば、相手に引かれ、あるいは不快がられる恐れがある。

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よって現実世界で繋がりのある、近しい人との間でyoutubeについて語るには、「今日の天候」に近い、双方にとって当たり障りのない題材が必要となる。だがこの題材はそうそう見当たらない。

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日本屈指の著名youtuberであっても、相手によっては知っていないことはざらにある。またツイッター上で多くリツイートされていた「話題の動画」であっても、相手のタイムライン上でも同様に話題になっているとは限らない。

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ゆえに、その動画について話題にしたが最後、場合によっては問題の動画にたどり着いた経緯（当人が好んでフォローしている集団等）を相手に探られることとなり、その過程においてやはり当人の嗜好と人間性は露呈する。

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個々人の嗜好に合わせ、コンテンツを極限まで細分化させたyoutubeの世界において、誰もが知っている共通認識の発見はきわめて困難である。想定されるそれはもはや「話題となっていることが話題となっている」レベルのものでなければならない。

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そしてそれを見出せないうちは、人は近しい存在の前ではyoutubeの話題についてある程度封印せざるを得なくなる。それが近しい存在であるならば当然同じ空間でスマホを起動し、同じ空間でyoutubeを視聴することもあろうが、その際は互いに互いのフィールドを侵害し合わぬよう画面を隠し

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背中を丸めてコソコソ映像に食い入るしかない。これはあまり気分のよいことではない。ＰＰＡＰの登場は、このようなジレンマ構造に風穴を空けるものであった。再生数が世界ランクのトップ入りを果たした事実をもって「話題になっていることが話題」となり、さらなる視聴者を集め

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これにより大手マスコミでも取り上げられるようになった。こうなるとＰＰＡＰについて語る行為は完全に免罪符を得ることとなる。マスコミが連日報道している事実を隠れ蓑に、個々人は自らの人となりにかかわる部分を晒す恐れなく近しい人とyoutubeについて語り合うことができるようになる。

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夕食時のテレビにピコ太郎が出現し、「ＰＰＡＰ」とは何か？という話題になった家族が、そのうちの一人のスマホに群がり、ＰＰＡＰを開いて同時に談笑する、という経験を持った人々も少なくないものと考えられるが、これがどれだけ貴重で得がたい心理的障壁解消の瞬間であったかは

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これまでyoutubeを通して家族と意思疎通できたことが何回あったかを考えてもらえば一目瞭然であると思われる。ＰＰＡＰはまた「視聴者の興味関心が第一にはピコ太郎本人にではなく、ストーリー性も意味も不明なＰＰＡＰという一本の動画に集中している」という強みも持ち合わせている。

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youtube内存在が地上波のテレビに取り上げられ、共通認識となりかける瞬間は、これまでにもヒカキン等著名youtuberの事例であった。しかし取り上げられたのがyouruber当人であれば、その人間を話題にする行為は、

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当のyoutuberの人となりやストーリー性にこちらが関心を抱いたことを意味し、結果やはり己の人間性の開示に繋がってしまう。意味不明であるがゆえに無職透明なＰＰＡＰにはこの危険性がない。

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ただＰＰＡＰ、あるいはＰＰＡＰ的共通認識をダシにした、youtubeに関するコミュニケーションの先に、人はある逆説的な欲望も見出している。例えば、自分のスマホを使って近しい存在とＰＰＡＰを鑑賞する瞬間、

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ＰＰＡＰの脇にはＰＰＡＰと直接の関連性を持たない、むしろこれまでの己の視聴履歴を材料に抽出された関連動画が複数個表示されている。それを通じて、自らがどのような動画に関心があるかを、不可抗力的かつ、詳細すぎない範囲にて、さりげなく相手に伝える、

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この形による自己表現の喜びを、人々はＰＰＡＰという共通認識の出現によりようやく得ることができた。