空想の街・花と海の目覚め'17 二日目 #赤風車

𝚏/療養中 @nowhere72

「はい！」私は喜んで受け取ります。この街にいるってわかってるなら大丈夫、祭りは終わったけど、数日中には届けます。 それにしても真っ赤な人。首から大きなリボンが出てる…着物の帯みたいな。「あ、手帳に差出人のお名前をどうぞ！」 @nowhere_7 #空想の街 #赤風車 #ホップ

不可村 @nowhere_7

名前、と言われて青年は、かたわらで廻転自動車に腰かけている女性へ話をふる。 「差出人はこのひと。ね、お嬢。封筒の名と同じにしないと」 ――女性は暫く、じっと青年と少女を見比べていたが、そのうちに立ち上がって手帳に名を書いた。 @nowhere72 #空想の街 #赤風車 #ホップ

𝚏/療養中 @nowhere72

ありがとーございます、と手帳を引っ込めます。封筒もしっかりカバンに入れなきゃ。 …お姉さん、綺麗だなあ。なんか無表情だけど、怒ってませんよね。 「えっと、旅のかたですか？お兄さん、なんだかマジシャンみたい！お名前は？」 @nowhere_7 #空想の街 #赤風車 #ホップ

不可村 @nowhere_7

「ん？まあ旅だよね、人生は旅。ボクはいちもんじ――まあいいや。友達になるんじゃないしさ、キミはとにかく手紙を届けてよ」 急に笑いを引っ込めて青年は耳を引っ掻く。 「ボクら数日街にいるからさ、もし相手がいなかったら、返しに来て」 @nowhere72 #空想の街 #赤風車 #ホップ

𝚏/療養中 @nowhere72

そういえば手渡しだから、書いてある宛名よりも相手の外見とか知っておいたほうがいいかも。…わあ、宛先よく見たら名前だけです。 「えっと、名前だけだと不安なので、もしご存じなら相手のお姿とか…教えて頂いていいですか？」 @nowhere_7 #空想の街 #赤風車 #ホップ

不可村 @nowhere_7

どこかおずおずとした相手に、青年がばっさりと返す。「そっか、名前だけじゃ見つけるの苦労するもんね。これ聞いたらもう行っていいから」 ――女の人だよ。ちょっと広がってる長い黒髪、サスペンダー、白いシャツに黄土色のスラックスの。 @nowhere72 #空想の街 #赤風車 #ホップ

𝚏/療養中 @nowhere72

ひいっ！斬られました！ 結構はっきり言われると私でも堪えるのに…くすん…でもお仕事はしなきゃだし、馴れ馴れしくしすぎた私がよくなかったのかも。ごめんなさい、お兄さんたち。 「分かりました、お任せ下さい！仕事はちゃんとします！」 @nowhere_7 #空想の街 #赤風車 #ホップ

不可村 @nowhere_7

胸をどんと叩いて暫し咽ていた少女だったが、やがて、手紙の入った鞄を抱えて夜の街へ消えていった。風圧で帽子が飛ばされないよう押さえていた青年が、髪を靡かせる女性に話しかける。 「あの子すごい跳躍力だね、ああいうのもありなのかあ！お嬢、見てた？」 #空想の街 #赤風車

不可村 @nowhere_7

――返答は、ない。 がくん、と青年の首が曲がり、女性を窺う。何の反応もなく、ただ女性が立ち尽くしているのを見て、徐に青年は溜息をついた。 「そろそろ限界かな。ねえ、まだボクを飽きさせないでよねお嬢、折角手紙出したんだから。――さ、気持ちを新しくしていこう」 #空想の街 #赤風車

不可村 @nowhere_7

準備は万端だ。 黙ったままの女性を車椅子に戻し、真紅の燕尾服を纏った青年は、緩やかに闇の中へ消えていった。 #空想の街 #赤風車