2部 4章【仮庵の恩知らず】

入江の魔人シリーズ第16弾
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えみゅう提督 @emyuteitoku

「戦艦水鬼もおバカよねぇ~。潜水艦を暗殺なんてさ、まして相手はこの私、戦艦に対潜戦術の何がわかるって話!キャハハハ!」シェミニは上機嫌で饒舌に語る。熱の入った自慢話を応接間で、机を挟んだ対面で聴くのは、普段と変わらないまっさらな笑顔を張り付けた江見悠だ。 22

2017-02-06 20:45:40
えみゅう提督 @emyuteitoku

「いやはや、相手が戦術は違えていたとはいえ、深海本営の追跡を振り切るとは見事な練度だ。仮庵とは言わずに、是非我が艦隊に編入して頂きたい!」「もちろんいいよー!シェミニ・アツェレット、着任しまーす!」「おお、ありがとう!実にありがとう!助かるよ、ハーハーハァ!」 23

2017-02-06 20:46:52
えみゅう提督 @emyuteitoku

「ねえねえねえ!ここに入ったら艦娘の名前が貰えるんでしょ?私にはどんな名前を付けてくれる?どんな呼び方も受け入れちゃうからさ、素敵な名前をつ・け・て♪」「じゃあ『脇ノ裏山芋ぬりぬり丸』と名付けよう」「…あの、すんません調子乗りました。ちゃんとした名前にしてちょーだいな」 24

2017-02-06 20:49:14
えみゅう提督 @emyuteitoku

江見からの不意打ちにシェミニは消沈する。勢いを削いだところで、彼女の意気が冷え切らない内に江見はずいと体を前に傾ける。「君のことはハチとして登録しようと思っている」「ハチ?…ああ、【伊号第八】ね。もちろん構わないけど、なんで?」「仮庵祭は八日間だろう?」江見は簡素に答えた。 25

2017-02-06 20:51:36
えみゅう提督 @emyuteitoku

シェミニ改め、ハチは口を閉じたまま何度か頷き、心の中で新たな名前を反芻する。「ハチかぁ、呼び名なんて適当でいいと思っていたけど、惚れた人から貰ったとなると格別ねー♪」「まあまあ、飽くまで今は仮だ。思っている、というだけだ。君の実力が雇用に値するか、私自身の見聞で確かめたい」 26

2017-02-06 20:53:42
えみゅう提督 @emyuteitoku

江見の言わんとすることは明白だ。実際に戦ってこい、ただそれだけ。「いいよん。誰を沈めて欲しいの?空母でも戦艦でも、姫級だって構わないから」「君はモンドールという名前を知っているかい?」江見が口にした名に、ハチの体が固まる。「知ってるよ。知っているに決まっているでしょ」 27

2017-02-06 20:55:34
えみゅう提督 @emyuteitoku

ハチの返答を聞いて、江見は満足そうに微笑む。「そう、暗殺諜報の天才、本営が君を始末するために雇った対潜水艦のスペシャリスト、軽巡洋艦へ級フラッグシップのモンドールだ」まるで、空気がびりびりと震えるような緊張感。江見はよりによって潜水艦にとって最大の恐怖の名を上げた。 28

2017-02-06 20:56:44
えみゅう提督 @emyuteitoku

巡洋艦モンドール。スニークの才能を買われ、数多の反乱因子を沈め、その報奨を積み重ねていくうちに【金の山】と呼ばれた本営が抱える傭兵である。隠蔽性と対潜能力は極めて高く、待ち伏せからの先制攻撃が主体となる潜水艦の天敵。(ピンポイントだねレムリアさん。こいつは流石に困ったな) 29

2017-02-06 21:01:05
えみゅう提督 @emyuteitoku

ハチは焦った。ある程度の難題は予測していたが、江見はその上を行った。それでも、ハチはそれを受けなければならない。何せ、彼女はモンドールに追われて北方に逃げてきたのだから。「いいよ、始末してあげる。それでちゃんと雇ってくれるならね」「始末?!ハーハーハァ!それは勘違いだ」 30

2017-02-06 21:02:38
えみゅう提督 @emyuteitoku

「私が君に頼みたいのはモンドールの鹵獲だ。生きた状態で連れてきて欲しい。それが条件だ」ハチの目の前が真っ白になった。だが、それは思考の停止でも、絶望でもない。彼女の視界を白く染め上げたのは希望の光、自分に信頼を寄せてくれる人と出会った喜び。「ワオ!そりゃまた…面白そうね!」 31

2017-02-06 21:04:36
えみゅう提督 @emyuteitoku

潜航魚雷艇統制潜水艦ハチ 深海棲艦本営から追われ、極東の友軍の元へ流れ着いた潜水艦。潜航魚雷艇を複数同時に操る潜る潜水母艦。魚雷艇は必要に応じて無線有線を切り替えられる。軽いノリの裏に隠した常識はずれの記憶力と膨大な知識量を武器に、先読みや待ち伏せで目標を包囲殲滅する頭脳派。

2017-02-06 21:07:35
えみゅう提督 @emyuteitoku

艦隊面子との仲は良好、軽口と甲高い声が耳に悪いお調子者。重要な情報でもぺらぺら喋る。しかし、口に出す時は後の処理を考えた上であり、その処理を失敗することもないため、周囲は黙認している。小柄な外見に似合わない持久力を持つが、「江見ちゃんには敵わない(意味深)」とのこと。 pic.twitter.com/7SxVBWPpaU

2017-02-06 21:09:10
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