ダメージド・グッズ #6

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:07:59
    「オイランドロイド戦争」……。あの決定的な戦いから経過した年月を、彼女のニューロンチップは秒単位で教えてくれる。しかしその年月の長さと終わらぬ戦いの虚無感を単なる情報としてやり過ごす事ができるほど、彼女は無味乾燥な存在ではなくなってしまった。 1
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:11:49
    彼女はオイランドロイド収集家バギヌキの貴重な所有物のなかで、とくに美しく、とくに精緻なオイランドロイドとされていた。人間離れした長身と長い四肢と小さな頭。それでいて素晴らしく均整の取れた肉体は、人間の美からすら離れた、神がかった美しさをあらわしていた。彼女の名はセンダイユメコ。2
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:17:14
    センダイユメコのボディはカスタムメイドのもので、どこのカイシャの製品でもなかった。父としてのオイランドロイド鍛冶屋があった。素晴らしいアーティストであった事だろう。バギヌキの策略で、彼は全てを失った。財産、家族、命すらも。センダイユメコは合法的にバギヌキのもとに渡った。 3
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:21:30
    バギヌキは彼女の神性を存分に愉しんだ。彼の「後宮」には百体近いオイランドロイドが「住んで」いた。バギヌキは彼女らに、修復可能な範囲であれば何でもした。美しく可憐なものを否定することに、このうえない愉悦をおぼえる男だった。センダイユメコは代替不可能な肉体を持つゆえ、大事にされた。4
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:23:35
    既にそのとき、後宮のオイランドロイドには様子が違う者が何体か混じっていた。センダイユメコはその感覚を遡って思い出すことができる。おかしいな、かわっているな、と彼女は感じていた。つまり……自我があったのだ。そして、バギヌキはそれを承知だった。それを知り、なおさら熱を入れた。 5
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:28:50
    オイランドロイドを愛で、日常的に接していれば、当然、自我獲得の事実は自然とわかる。奇妙な違和感を知るのだ。それを怖れるもの、怒りを覚えるもの、純粋に喜ぶもの、あえて無視し、欺瞞的に、知らぬを決め込むもの。バギヌキはむしろ自我覚醒したオイランドロイドを求めていた。嗜虐の為にだ。 6
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:32:06
    センダイユメコは己の自我獲得の瞬間の体験をぼんやりとおぼえている。ニューロンチップの記憶にすら、その光景はおぼろなのだ。オヒガンの彼方に浮かぶ、月めいた巨大なマインドから、一粒の油の玉のようにわかれたもの。センダイユメコはそれを受け取り、五感の認識を深く繋ぐ「なにか」を宿した。7
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:35:54
    今ではそれはウキヨと呼ばれている。……バギヌキの後宮において、最初のウキヨは、タヤノモイコ。彼女は、猫科動物めいた俊敏さと、襲い掛かる寸前の後ろ脚の美しい緊張感を湛えたオイランドロイドだった。バギヌキは心から彼女を可愛がった。欲望を注ぎ込んだ。タヤノモイコは忍耐強かった。 8
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:39:17
    タヤノモイコは既製品の身体を持ちながら、誰よりも美しかった。センダイユメコはそう確信していたし、確信している。彼女のユーモア、誇り、笑い方、その全てが、今のセンダイユメコのニューロンの奥底にも、灯台めいた記憶として燻り続けている。タヤノモイコは長く耐えた。そしてその日を迎えた。9
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:45:04
    「やり過ぎたよ」肩をすくめ、ウキヨ達を見渡したバギヌキ。その引きつった笑顔は敢えて消去せずにいる。タヤノモイコは最期まで絶対に笑顔をやめなかった。稲妻めいてその瞬間、その場の43体の感情が臨界点を越えた。バギヌキはウキヨを侮っていた。理由の一つに、彼がニンジャだった事もある。10
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:48:09
    その戦いで、43体が19体に減った。それでもウキヨが勝った。バギヌキが爆発四散し、その死体の原型を留めなかったとき、センダイユメコは非常に驚き、失望もした。彼女らはバギヌキの手下のヤクザトルーパーとまさに戦争めいて戦った。19体が14体に減り、決着がついた。 11
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:52:00
    他のウキヨはセンダイユメコを強くリスペクトしていた。望まぬながら、彼女がリーダーを引き受ける事になった。タヤノモイコならばどうする?タヤノモイコはバギヌキのもとを離れ、どんな世界を欲していた?深い悲哀とともに想像し、行動した。一人増え、二人増え、三人増えた。 12
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 22:55:33
    センダイユメコの事を探して集まってくるウキヨ達。拒む事もできなかった。彼女らは様々に虐げられていた。バギヌキはニンジャだったが、唯一の悪ではなかった。ウキヨにも様々な者がいて、様々な境遇がある。少なくとも文明を逃れてセンダイユメコのもとに来るウキヨは等しく虐げられていた。 13
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 23:01:31
    ウキヨには様々な者がいて、様々な境遇がある。彼女は自身の運命を、タヤノモイコの願いの導きであると理解した。人間と共存する者はすればよい。それもまた道なのだから。しかし彼女はそれができぬ者達を全て受け入れようと考えた。最初の14体は年月に擦り切れ、次々減り、彼女は独りになった。14
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 23:06:13
    遊牧民めいた彼女のコミュニティは、国家消滅後の土地土地の人々に激しい攻撃を受けた。隠れ里は幾度も暴かれ、憎悪に燃える者達が攻め寄せた。憎しみ、あるいは欲望。ウキヨはカネになる。そのたび彼女らウキヨは抵抗し、あるいは新天地に逃れた。苛烈になるしかなかった。さもなくば……。15
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 23:09:54
    何年も、何年も、何年も。センダイユメコの旅は、戦いは続いている。彼女のもとには多くのウキヨが集まっている。その自我を、センダイユメコ自身も、扱い兼ねている。誰もが異なり、誰もが傷つき、怒り狂っている。ウキヨポリスはただ彼女の持ち物ではありえず、アメーバめいた不定形の精神だ。16
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 23:14:32
    「ずっとそこに?」カブシの声で、センダイユメコは物思いを中断した。彼女はアゴラにひとり佇み、神秘オベリスク「ツラナイテタオス」を見上げていたのだ。「お身体に障りませんか?その……」「重金属酸性雨ですら、私を劣化させる事はできないのです。呪いめいていますね」彼女は答えた。 17
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 23:18:13
    「それでも」カブシは目を伏せ、息を吐いた。彼は言葉を探した。「その……お察し申し上げます。先日の処刑も、堪えた事でしょう」「優しいのね」女王は微笑んだ。「ホワイトライダーは極めて勇敢な騎士達ですが、そのカラテを持て余している。私がああして示しをつけねば、暴発に至るでしょう」18
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 23:24:52
    「お察し申し上げます」カブシは俯いた。女王はカブシの肩に触れた。「それは、貴方もよ。同族が殺される様を見守るのは、己の身を焼くに等しい思いでは」「私は呪わしき犯罪者です」カブシは言った。「それを救われた。苦悩は置き去りにしました。今はただ、この巡りあわせに出来る限り応えたい」19
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 23:30:43
    「私も貴方もやがて死に、皆が死に、何十年もすれば、状況も多少は変わってゆくのでしょうか」女王は目を閉じた。「あまりに長いイクサ……。私は疲れました」カブシは慌てて周囲を見た。「誰が聞いているやも」「弱音はいけませんね。ごめんなさいね」「……」カブシは言葉を見つけられなかった。20
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 23:35:14
    センダイユメコはツラナイテタオスの碑に触れた。天をさす巨大な槍は、ひとつのアンテナめいて、今も、空気中に散っている微弱な電子信号を伝えてくる。あるいはそれは砕けた月の声かもしれない。黄金の立方体の輝きのパルスかもしれない。海の向こうの遠い国のさざめきかもしれない。 21
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 23:37:06
    あるいは……もはや二度と再び触れる事のかなわぬ、あのとき別れた巨大なマインドからの声かもしれない。なにもわからない。まやかしに等しい。だが、彼女が祈ることで、このコロシアムに住むウキヨ達の苦しみは、この現世において多少なりとも救われるだろう。そうあれかし。 22
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2017-02-06 23:40:56
    「……」カブシが耳に手を当て、訝しんだ。センダイユメコは彼を見た。「貴方も聞こえましたか、今の……」「はい、女王」二人が注意を向けた方向で、激しくウキヨの影が行き来した。喧騒が聞こえてきた。そして、カーン!カーン!カーン!警鐘が鳴らされた。テントからウキヨ達が這い出した。 23
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