ダメージド・グッズ #6
「一体何が!襲撃鐘ではありませんな」カブシが足を引きずって喧騒の方向へ向かう。「女王は待たれよ」「いえ、構いません」センダイユメコはカブシに続いた。住人たちが深く頭を垂れる。対照的な二人はかつてコロシアムの入場通路であった回廊へ入ってゆく。「何があったのだ!」カブシが問うた。24
2017-02-06 23:43:47「これは、女王!カブシ=サン!」事態収拾にあたっていたホワイトライダー数名が二人を認め、ドゲザした。「問題は未然に防がれてございます!」示す先はフスマを閉じた一室だ。中から争う声が聞こえたが、やがて静まり返った。フスマが開き、ホワイトライダーが顔を出した。「これは、女王!」 25
2017-02-06 23:46:01「どうしたのです?」「だ、脱走を試みたものがおりまして!」「脱走!?」女王とカブシは顔を見合わせた。入室すると、部屋の隅には芋虫めいて縛られ拘束されたウキヨが床に転がり、もがいていた。「ンー!ンウー!」「いい加減にしろ、コトブキ=サン!」シンジツが抑えつけ、怒鳴った。 26
2017-02-06 23:48:49「じょ……女王!」シンジツは反射的にドゲザしようとしたが、「もうよい!」センダイユメコが遮った。そして明るいオレンジの髪のウキヨを見下ろした。「この者は……」「最近ウキヨポリスに迎えたウキヨですな」カブシが呻いた。「脱走を試みたと?」「ンー!」「猿轡を外してやれ」 27
2017-02-06 23:50:41「ブハッ!これはひどいですよ!」コトブキが訴えた。「解放してください!」「何があったのです」「脱走です。コトブキ=サンはここを出て行こうとして……」「脱走だなんて!それじゃまるで監獄じゃないですか」コトブキがもがいた。「わたし、生活を体験しました。ネオサイタマに帰るんです!」28
2017-02-06 23:54:03「何を考えている!入って、出ていくだと?」シンジツが怒り余って拳をかためた。「お前はそんなヌルい気持ちでウキヨポリスに……!」「よせ!よさぬか!女王の御前である!」カブシが制し、センダイユメコはグルグルと思考を巡らせてよろめいた。「これは……しかし……!」29
2017-02-07 00:00:08「わたしには、ここは向いていないと結論しました」コトブキが言った。「だから、帰ろうとしたんです」「それは……」センダイユメコは目を閉じ、開き、宣告した。「……許されない事です、コトブキ=サン。ウキヨポリスは隠された地。ウキヨだけが迎え入れられる。誰にも知られてはならない」 30
2017-02-07 00:02:12「そんな事……!」「保安上の問題なのだ」カブシが言った。苦悩に眉間を皺寄せて。「情報がひとたび外に漏れれば、たちまちウキヨポリスは賞金稼ぎやウキヨ誘拐団の標的となる。お前の事情は理解はする。だが……」「この者を獄につなぎなさい」センダイユメコは命じた。「他に選択肢は無い」 31
2017-02-07 00:05:59