廃棄物日誌LOG15（鈴谷・佐倉慈編）

廃棄物13号@カクヨム連載中 @eibis_splicer

鈴谷たちと愛宕たちの激突の最中。 外では別の騒ぎが広がっていた。 戦いの匂いに引かれたのか居場所を失った野良艦娘たちがゾンビのように廃墟から現れ、無差別に暴れていた。 民間人も治安維持部隊も関係がない。目につく者全てが敵で、手が届く範囲の物が目標だった。 #廃棄物日誌

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それに現在進行形で巻き込まれているのが処理場の人形。 そしてラケルたち生体人形である。 駆逐艦程度なら撃退できるものの、重巡戦艦、果ては空母までもが タガとリミッターが外れているため、怯むことなく、臆することなく襲い掛かってくる。 #廃棄物日誌

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あたかもそれは、艦娘の本性であるかのように。 とにかく愛宕達と合流しなければ。鎮圧もほどほどに切り上げ一行と合流しようと混乱の中を走るラケル達の前に、まさにゾンビとしか言いようのない姿の軽巡が立ちはだかった。 身体中の皮と肉が裂け、人工骨格が覗いていた。 #廃棄物日誌

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その軽巡ゾンビは那珂だったのだが、恐らく艦娘が一般公開され始めた頃に捨てられたのだろう、彼女は改二ではなく、改ですらなかった。 あ、ともお、ともつかない呻き声を上げて、那珂は先頭のラケルに飛びかかった。 グロテスクな姿と数秒後の自分の姿が浮かび、思わず目を瞑る。 #廃棄物日誌

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しかし、悲鳴を上げたのは自分ではなく、仲間でもなく、飛びかかった那珂だった。 彼女が不自然に持ち上げられる。胸を貫いていたのは、槍だ。それも、古い散弾銃がくくりつけられたような、骨董品のような槍だ。 刃が完全に那珂から露出すると、那珂は槍ごと横に投げ出された。 #廃棄物日誌

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槍の主は人形だった。先ほど混乱の最中にはぐれてしまっていた。 「大丈夫ですか」彼女は顔についた返り血を拭いながらラケル達に言う。 「後もう少しで齧られるか引き裂かれるところでしたが、なんとか」 そうですか、と彼女は言うと、近くの廃車からまた別の武器を引き出す。 #廃棄物日誌

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更に腰に巻いていたベルトに提げられていた杖を引き抜き、右手に持つ。 廃車から引き出したのはレバーアクションライフル、ウィンチェスター。 見た目はやはり骨董品だ。しかしその古臭さから妙な心強さを感じる。 左手に持ったそれを回転させ、華麗に装填。 #廃棄物日誌

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流れるようにまず前に立った、三角コーンを被った夕張に一発。 発射されたのは7.92mm弾。 何処で入手したのか、弾丸は艦娘の炸薬で強化されたものだ。 凡そ二倍のサイズの弾丸と同じ威力を発揮するため、艦娘にも通用する。 #廃棄物日誌

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メンテナンスもまともに受けていない艦娘の身体を破壊するには充分だ。 三角コーンに隠された、焼き焦げた顔を晒しながら夕張がくの字に曲がって飛んでいく。 歩きながら慣れた手つきでスピンコッキング。 起き上がろうとした夕張の頭に銃口を押し付け発砲。夕張が沈黙する。 #廃棄物日誌

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横から伸びた腕が、まさしく「伸びた」腕がウィンチェスターを掴み、握り潰した。 腕の主は利根。しかしその両腕は不自然なまでに伸びていた。 自己流の改造で人工骨格を延長し、伸ばしているようだ。何の為なのかは分からない。 その伸ばした腕は人形にも迫る。 #廃棄物日誌

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彼女は動じることなく右手の杖を捻り、そして利根に向けて振った。 杖が鞭のようにしなり、そして無数の刃となり顔を切り裂いた。 悲鳴を上げて利根が顔を押さえる。勢いよく杖を地面に叩きつけ、レイピアのように持って突き出す。 一本の杖に戻った「仕込み杖」が利根の胸を突く。 #廃棄物日誌

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今度は杖は変形せず、杖の形を保ったまま利根の胸を貫く。 動きが止まったのを見て、腰に着けていた、ファンタジー世界で見れるような形状の大型の散弾銃を持ち、至近距離で発砲。 引き裂かれた利根の顔がスイカのように砕けた。 #廃棄物日誌

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人形が何かを察し、後ろに飛び退く。 先ほどまで彼女がいた場所を瑞雲が爆撃した。 利根を跨いで現れたのは、今度は異常なまで脚を延ばした筑摩だ。 背中に直結した千歳と千代田の水上機カタパルトに限界以上に瑞雲が載せられている。 まるで竹馬のような体勢で人形に迫る。 #廃棄物日誌

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その間もひっきりなしに瑞雲が飛び出し、人形や後ろのラケル達に爆弾を落としてくる。 ラケル達が悲鳴を上げて逃げ惑う中、それを見た彼女は近くに転がった、剣が刺さった鉄筋コンクリートを片手で持ち、フルスイング。 筑摩の延長された脚を叩き折った。筑摩はバランスを失い倒れる。 #廃棄物日誌

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しかし筑摩はまだ艦載機を操り、人形の死角、背後から瑞雲を放つ。 だが、それを知っていたかは別にして全力で振ったコンクリートの塊が後ろまで回ったことで、瑞雲が粉砕される。 まるで模型のようにバラバラになった瑞雲が散らばっていく。 #廃棄物日誌

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彼女は武器、教会の石槌を構え直すと、そのまま筑摩の頭目掛けて振り下ろし、叩きつけた。 頭を砕かれた筑摩はそのまま沈黙。瑞雲も力を失ったように落下した。 人形は利根と筑摩を乗り越え、ふと空を見る。 #廃棄物日誌

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空の月が真っ赤に染まっていた。 彼女はその意味が分からなかったが、電脳に刻み込まれたブラッドボーンの記録が、 ただの赤い月ではないと彼女に伝えている。しかし、記録が告げる状況ではない。 それでも、彼女には分かる。 #廃棄物日誌

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たった今、獣狩りの夜が開始されたのだと。 #廃棄物日誌

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獣狩りの夜が始まったという事は、獣を狩らなければならない。 そして、その先の獣とは異なる怪物も。悪夢を晴らすために狩らなければならない。 ここでの獣は、勿論艦娘でしかない。襲ってくる艦娘は、勝手に敵味方識別装置で赤い三角マークでスポットされている。 #廃棄物日誌

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「ウニャアァァーッ！」雄叫びを上げる猫のような絶叫と共に最初に前に出たのは足柄だ。 しかし、彼女は何故か首にニンニクを結んだネックレスのようなものを着けている。 何の呪いなのかは分からないが、血と鉄と腐臭が混じったような匂いを消すには足らなすぎる。 #廃棄物日誌

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ニンニクのネックレスよりも、その足柄は髪型と服装が足柄の、人狼のような化け物なのだが。 これが獣狩りに集中できるように幻覚を見せられていないのであれば、少なくともそれがその足柄だ。そう人形は思う。 故に獣を狩る道具を両手に持つ。選んだのはノコギリ鉈とノコギリ槍だ。 #廃棄物日誌

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両方とも変形ギミックは同じだが、前者は鉈特有の重い一撃を、後者は槍特有のリーチの長さを生かした攻撃が行える。 とはいえ槍の方は、槍というより使い方は大剣なのだが。 そんなものは些細な問題だ。槍が使いたければちゃんと工房で作られているし作ればいい。 #廃棄物日誌

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獣が狩れれば車輪でも見聞きしただけの知識で真似た槍でもどういう原理なのか分かっていない火炎放射器でも怪しげな霧を噴霧する道具でも問題ない。 猫のような絶叫を上げながら襲い来る足柄に怯むことなく彼女は突進する。 走りながら足柄は狼のような右手を振り上げる。 #廃棄物日誌

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顔面を叩き潰そうと伸ばされた右手を寸での所で回避し、肉薄する形でノコギリ鉈を斜め下から振り上げ、斬り上げの形で足柄を打つ。 刃は艦娘の着衣装甲を容易く引き裂き、その肉さえも骨ごと叩き潰し、血飛沫と破片に変える。 足柄が仰け反る。その隙を逃さずノコギリ槍を突き出す。 #廃棄物日誌

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槍というか剣に近い槍が妨害されることなく足柄の胴体に深々と突き刺さる。 夥しい量の血を噴き出しながら足柄が叫ぶ。折り畳めていた鉈を変形させ、再び鉈に変える。 そして足柄が攻撃も防御も忘れて槍を引き抜こうと手を伸ばした時、今度は鉈による兜割りを放つ。 #廃棄物日誌