ツイッター小説 お気に入りセレクト 2011/03/04

今日読んだついのべの中から独断と偏見で味のある作品をセレクトしてみました。 ついのべ #twnovel とは140文字以内で書かれた短い物語です。
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おぼろちゃん @oboroose

#twnovel お寺の庭でいつものように暗くなるまで遊んでいると、見知らぬ女の子がやってきて、「じいじ、じいじ」とぼくに泣きつく。この子はいったい誰だろう。すぐに親が駆けつけて連れ帰ったけれど、何かが胸に引っかかっている。風がどっと吹き、ぼくは骨壺に戻され、ああ、と思い出した。

2011-03-03 23:21:43
tokoya @tokoya

#twnovel 携帯電話の入試会場への持ち込みが禁止され、隠れての使用も厳しく監視される事になったが、にも関わらず同様の事件が再び発生した。関係者はこのように語っている「携帯電話には注意していたんですが、あれは盲点でした。まさか堂々とデスクトップPCを持ち込んで使うなんて」。

2011-03-03 23:22:15
しぃとろん @seatoron

携帯が鳴った。「もしもし…」「合格したよ!」「おめでとう!よかったね!」「ヨシダにも知らせるから、切るね。じゃあ」電話は切れた。声の主に覚えはない。電話番号も登録されていなかった。きっと、彼のかけ間違いなのだろうけれど、とっさに私は「おめでとう!」と言っていた。 #twnovel

2011-03-03 23:38:44
夕凪奏恵 @k_you_nagi

#twnovel 玄関を出る。右に曲がってまっすぐ。最初の丁字路も右、次は左。道が緩やかに下る、少しカーブしてる。住宅街を抜け、商店街を歩き、駅。車の音、ざわめき、冷たい風。初めて歩いた時と同じ季節、同じ道を通った。違うのはこの先にあの人が待っている事。一人暮らしは今日で終わり。

2011-03-03 23:44:30
かなりひこくま @kanarihikokuma

#twnovel 頭も痛いし、もう眠る事に決めた。お布団に入り、ぬいぐるみ達に向かって敬礼をおくる。そうだ、眠りもまた冒険。無意識の底には大蛸はおろかヌメヌメの神々が眠っていたとしても不思議ではない。見送るぬいぐるみらに別れを告げ、ぼくは目をつむった。急速潜航!ぶくぶく。

2011-03-03 23:54:28
ヒデユキッス @hideyukiss

#twnovel 一時間に一度はキスをしないと死んじまうキス星人は地球になじめず悩んでいた。先に地球にやって来た先輩は、そんな後輩を見かねてある星人の元へ案内してくれた。「あれを見ろ。みんながんばってる」一時間に一度踏まれなければ死んじまうM星人のまさにその瞬間を先輩は指差す。

2011-03-04 01:48:54
高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕(宝島社文庫)」発売中 @Takuya11

#twnovel 駄目な父親だったが私には優しかった。父がみせてくれた掌から鍵を消す手品が好きだった。母が愛想を尽かし、離婚後、父は行方不明になった。十年が過ぎ私の結婚式の朝、家に封筒が届いた。鍵がひとつ入っていた。父が開け方を知らず、消してしまったものを私は開けたいと思った。

2011-03-04 09:21:00
Hiroyuki inoue @hiro_kinako

#twnovel その男はいつも時間を気に掛けていた。家族との団欒も仲間との語らいも、病気で寝込んだ日も親の今際の際にも。死後、彼は内側に時計が埋め込まれた柩に埋葬された。土の中で二本の針は延々と時を刻み続ける。彼が好きこのんで時計を見ていたのかは、今となっては知るよしもない。

2011-03-04 10:15:25
layback @laybacks

頁を捲りながら物語世界に浸る。こつこつと作り上げた書斎の蔵書は約五百冊。けして多くはないが目の前にお気に入りの書物が並んでいるというだけでとてもいい気分になる。ただ頻繁に邪魔が入るのが難点だ。「お父さん! 早く出てよ!」私は本を書棚に戻し、いそいそと水を流した。 #twnovel

2011-03-04 12:16:41
simmmonnnn @simmmonnnn

#twnovel 洗濯機がぐるぐる廻るのを眺めるのが好きだった。理由は説明できない。でもおそらくそれは無駄な時間だったんだろう。「無駄を省くことが進化だからな」独り言を漏らし、全自動洗濯機を眺める。隣家の洗濯機は旧式だ。窓から覗くと、今日もぐるぐる回転しつつ地面の埃を舞い上げる。

2011-03-04 12:34:16
たくわん @takuwan_takusan

その痩せた水鳥は鯉に餌をやっていた。鯉が丸々と太った頃、水鳥はいよいよご馳走にあずかろうと思った。しかし運ぶには重くなり過ぎていたため、水鳥は諦めざるを得なかった。水鳥が立った水面で、鯉は何かを言いかけていた。一羽と一匹は、それぞれ異なる理由で悲しげだった。 #twnovel

2011-03-04 13:47:42
めだかジイジ @medakageg

彼が無職だと明かすと決まって友人たちからは現実的でないと諭されるのだけれど、一緒にいても飽きが来ず、他の女に取られる事を想像すると落ち着かない気分になるという点で、この同居人に対する感情は愛とか恋といったものとそう代わりないのかもしれないし、恋愛は非日常だ。 #twnovel

2011-03-04 14:14:07
sad @Sotobato_Nihu

#twnovel バスの降車ボタンを押そうとすると、いつも先にブザーが鳴る。今日もそうだった。乗客は私一人だった。

2011-03-04 17:13:36
kgy @kagaya_rollroll

#twnovel 夕方が好きなんだ、と彼は言った。そんなことを思い出したのは、電車の窓の向こうに、久しぶりに夕焼けを見たからだ。わたしは何て返しただろう、わたしも好きですよ、そう答えただろうか。もうすぐ乗り換えてしまう、つかの間の記憶。反対側の窓には、夜がきていた。

2011-03-04 18:14:26
Shimada Yuichi @chimada

「読書には様々な方法があります」「どういうことでしょう」「私の友人は、本を絵を眺めるように読むそうです」「なるほど」「私は音で読みます。文字が母の声になって、私の耳に聞こえてくるのです」(ノーマン・アジェスティヴ『私が出会った愛すべき読書家』より) #twnovel

2011-03-04 20:42:05
140字物語 @shortshortshot

妻は背が低い事をいつもネタにされていた。娘を産んだ時も「子供が子供を産んだ」とからかわれたものだ。しかし彼女は出産してから身長を気にしなくなった。「この子がお腹にいた時成長具合が実感できたの。これって私が小さいのもあるでしょ。そしてこれからもそうだよね。きっと」 #twnovel

2011-03-04 21:21:34