遠くに聞こえる人混みの声

影追い人セズィ @mumei_gc

@glnewto 相手の問いに苦笑いを返す。 何となく此方の考えを見透かされている気すらした。 「いや？むしろ逆だな。昔馴染みが多いもんでね、こんな姿を見せんのは男として情けなくてな」 ポツリと呟くように発せられた言葉は男の本音だった 「…だから、強くなんて無ぇんだよ」 →

影追い人セズィ @mumei_gc

@glnewto 小さくため息をつくと、相手に向き直った。 「で？お嬢さんの聞きたいことはそれだけかい？もっと別の町の話でも聞かれるのかと思ったが？」

トト＠TYA中邪 @glnewto

@mumei_gc 理由はない。 その昔馴染みさん達と、この人とが、再び笑い合える日を願う。 憐憫だの同情だの、まして感傷でもない。 フードの内側に黴が生えそうだったから、とは、口が裂けても言えない。 別の町。話を出されて我に返る。 「教えて頂けるなら大いに助かりますが……」→

トト＠TYA中邪 @glnewto

@mumei_gc 口元に手を添えて考え込む。 「流石に甘えが過ぎる気がします。自分の足を運べば分かる事ですし。……冒険譚に目を輝かすような心根も、生憎とありません」 出来るだけ軽口に、自嘲して、ささやかな抵抗をしてみるが、余計に年の差を痛感した気がする。

影追い人セズィ @mumei_gc

@glnewto 相手の心情を察した訳でも無いだろうが、答えられた言葉に軽口を肩竦める 「ンな大層なモンでも無ぇだろ？最初に言った通り＂いい暇つぶし＂だってな。ま、確かに人に話を聞くよりかは自分の目で確かめた方が早い気もするが…」僅かに眼を細める「いまは世界が揺れてるからな」 →

影追い人セズィ @mumei_gc

@glnewto スルリとフードを被り直す。相手の視線と思いなど気付く事などもない。 「外に出んなら要らぬ諍いに巻き込まれる可能性はあるぜ？あと、そうだな。パンドラという名には気をつけるといい」

トト＠TYA中邪 @glnewto

@mumei_gc この人に何の非も責もない事は重々承知で。 フードに隠れた顔へ遠慮なくジト目を向ける。 「出来るならその言葉こそ二日……いえ、三日前に言伝て頂きたかったです」 治ったはずの不調が僅かにぶり返した気さえする。 こちらの表情も見えないだろうと安堵して、苦笑した。→

トト＠TYA中邪 @glnewto

@mumei_gc 「犠牲が出る事は苦しいですが、諍いは……あってくれた方が安心します」 自分の理想に本音はこんなにも程遠いのかと。 「貴方には暇つぶしでも、私には情報でしたから。感謝致します」 表情の見えなくなった顔を見上げて、礼をする。→

トト＠TYA中邪 @glnewto

@mumei_gc 「この町で待ち合わせに使えそうな所は、宿場か先ほどの酒場のどちらかです。ご案内します。……あ。でもお別れの前に」 ふと思い出して、何の気なしに尋ねる。 「お名前を伺っても？ 『黒痣のお兄さん』では、長過ぎるので」

影追い人セズィ @mumei_gc

@glnewto 「なんだ？もう既に遭遇済みか？」 何処にでも現れるからな、と苦笑交じりに相手の言葉を受け流し、視線を道の先へと向けた。 「案内も必要無ぇな。丁度来たようだ」 振り返れば、少し離れた場所にやはり旅装束姿の男が立っていた。目の前の男より年齢は少し上だろうか？ →

影追い人セズィ @mumei_gc

@glnewto 名を問う言葉は無視をして、僅か数歩ほど歩き出してから思い出したように貴方に振り返る 「俺の名なんてモン聞いても、また会うと思うか？」 質問に質問で返す。

トト＠TYA中邪 @glnewto

@mumei_gc 「……」 口元しか見えない顔に、真意を見る事はできず。 「いいえ」 空いた手を握りしめる。 「ご武運を。旅の方」 その足が前へ進むなら。 握った手の力を今一度抜く。 私は静かに、心から祈るだけのこと。 「大元に、辿り着けますように」

影追い人セズィ @mumei_gc

@glnewto 「アンタも達者でな……」 僅かに柔らかい声色で、呟くように言葉を返す。 「もし仮に、また会えたら」 もし仮に、まだ俺が生きていたら 「まー、そん時は宜しく」 軽い口調でそう告げて、貴方に背を向けた。 （何も無ければ、こちらからは以上かなと思います）

トト＠TYA中邪 @glnewto

@mumei_gc 黴の次は茸が茂りそうな声に思えた。 背なに投げる。 「女性を見初めた際には、そのフード、被らずにいる事をお勧めします」 踵を返す。 「銀色と紅を、失くされませんように」 小声で呟く。 「気に掛けてくださって、ありがとうございます」 ざり、砂を踏みしめた。

影追い人セズィ @mumei_gc

@glnewto ジャリッ、と、土を踏みしめる音が止まる。 「それは要らぬ心配だな」 この手で掴めなかった恋しい娘の姿を思い出す。 「俺のモノはパンドラに奪われたんでな。……復讐の旅さ」 僅かに振り返った男の声には何の感情も持ち得ず、ただ淡々と言葉の羅列が告げられるのみ。 →

影追い人セズィ @mumei_gc

@glnewto 「俺の色は黒だ。影を追いかけるだけの男。だが、まぁ、アンタには他の色に見えたんなら、心に留めておくよ」 僅かに自嘲気味に笑う。 「アンタこそ、一人で路頭に迷うんじゃねーぞ、お嬢ちゃん」 酒はまだ早いんじゃねーかなぁ？と軽口を叩いて、その場を後にする。