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そして3人目は柳原。想良を挟んで祥汰の反対側に立ち、Dデザイアのカバー範囲をフォローする要員だ。子供達を受け止める手段は風属性の盾などでも良いが、彼の鞭はもっと適している。彼が選ばれたのは、それが理由には違いないが、弟が空中にいるのを誰かが慮ったというのもあろう。 18
2017-02-20 00:01:41クッションは秒速3メートルで上がり始め、徐々に減速する。急ぎたいが、加減を間違うとクッションが引力球に引き裂かれてしまう。想良1人なら素早く蝶の元へ辿り着くのも不可能ではないが、まさか制御が難しい球で子供たちを引き寄せる訳にもいかない。速度よりも確実性を取った形だ。 19
2017-02-20 00:11:27祥汰と柳原は焦燥した表情で焦れながら上昇を待つ。想良は一見ぼんやりしているようにしか見えないが、少なくとも正体には真剣な時の表情であるのは分かっていた。月明かりの元、3人は上空の片桐と蝶、そして子供達の様子を注視する。 20
2017-02-20 00:20:47『よし、カウント3で行くぞ』 「…はい…!」 回転がどんどん増していく。空に浮かぶ月はもう太線にしか見えねぇし、蝶はその白い太線を2つに分ける細い黒線だ。先輩のコントロールを疑う気はねぇが、俺の三半規管と目が無事に機能するかは怪しいところだ。つぅかしくじると俺が死ぬ。 21
2017-02-20 00:26:41『3』 体を投槍の上に動かす。 『2』 何時でも跳び立てるように体制を整える。 『1』 歯を食いしばる。 『0!』 先輩が鎖を開放し、槍は右側上空へ横薙ぎにすっ飛んでいく。俺はその上で風圧とGに耐えながら、進行方向を向く、気合を入れて目を見開く。目指す敵の姿がそこにあった。 22
2017-02-20 00:38:53「うぉわああああ!!」 槍は蝶の横を掠める軌道だ。直接ぶち当てる訳じゃねぇ。すれ違う直前、槍を真下へ蹴飛ばしながらワイヤーガンを撃った。…ダメだ!外した!…先端のフックは奴の脇腹から背を掠めて後ろへ吹っ飛んだ。 「まだだ!」 俺は両膝を胸の高さへ曲げると足の下へ刃を動かす。 23
2017-02-20 00:43:08「オラァッ!」 足に最速で引きつけた足場を全力で蹴り飛ばすと同時に、展開済みのワイヤーを鞭の要領で奴の背後から打ち付ける。動きの鈍い左羽の上から根本側へと一回転して絡みつく。 「っし!」 ワイヤーを引き戻して羽を締め上げながら、奴の背に飛び乗る! 24
2017-02-20 00:45:09ワイヤーガンを両手で引き戻しつつ蝶の背を登る。蝶は粘着剤と鋼糸で60度左に傾きながら飛んでいる。右足を蝶の肩辺りに掛けるとガンを無理やり口に咥えて両手を空け剣を取る。分離出来る刃は左に一枚、右には折れた一枚だけ、後は切り離し不可の剣本体だけだ。粘着弾も後一発、戦力は少ねぇ。 25
2017-02-20 00:50:32奴の肩を剣の柄で殴りながらその上に登ると、口吻がこっちを向いた。口を開いて麻酔液を吐こうとしただろうそれを、ライトが鉄パイプをも切断する鋏で押さえ込む。タカシは奴の目の前を飛び回って気を逸し、ノゾムはある場所で待機する。さっき蝶に引っ付いた時にコイツらを残しておいたんだ。 26
2017-02-20 00:56:57俺を振り落とそうとする蝶にしがみ付きながらワイヤーを引き戻してワイヤーガンをホルスターに仕舞う。代わりに抜いた粘着銃で左羽に最後の弾を当てる。蝶が常人の可聴域ギリギリのカン高い声で咆哮し、更に大きく左に傾く。もう地面と垂直に近い。蝶が足掻いて起こす風も弱くなってきた。 27
2017-02-20 01:01:37俺は用の済んだ銃を遠慮なく下に放り捨てると、剣に持ち替え、先端の折れた刃をを蝶に浅く突き立てしがみつく。 「片桐!」 久浦の声が届く…近い。まだ鱗粉が邪魔で麻衣さんとは通信出来ねぇが、お陰で頃合いだと分かった。 28
2017-02-20 01:06:11「行くぞ!!」 俺は右手の剣を深く突き刺しながら、一瞬左手を離し剣を取る。目の前の子供に話しかける 「下で受け止めてくれるからな!辛抱しろよ!」 風に消されねぇように大声で言う。言葉とは呼べねぇほどの微かな声が返事をした気がした。それを確認すると剣の一閃で脚を斬り落とした。 29
2017-02-20 01:06:46「っあっ!?…うわあああ!」 一人目の子供が落ちていく。クッションは地上と俺達、どちらからも20メートルの辺りまで浮いてきている。久浦の蛸モンスターの射程にはギリ届かねぇが問題はねぇ。蛸に投げられた久浦が空中で子供を受け止めて、蛸の上に着地する。 30
2017-02-20 01:10:29蝶が浮き上がる。 「っべぇ!」 重さが減ったせいだ。俺は左の剣で子供がいた辺りの腹をぶっ刺し、右の折れた刃を切り離し、本体で胸の横を突き刺す。蝶は藻掻きまくるが、脚の締付けは強くなった。2人を落としそうにはねぇが、早く助けねぇと重傷になるかも知れねぇ。下の様子をまた窺う。 31
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