- Zhuravlik_KC
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お風呂で唐突に思い浮かびました。
はぐれ艦娘。それは、どこの鎮守府にも属さず、どこで補給や入渠を行っているか、普段どこにいるのかもわからない、ある意味では謎の存在。艦娘を攻撃することは勿論なく、寧ろふらっと現れては苦戦を強いられている艦隊を助け、そしていつの間にか去っていく。それが、その呼称の理由だ。
2017-02-21 00:39:35その存在には、色々な議論がある。幽霊だというものから、実はどこかの鎮守府に所属している艦娘が勝手に出撃している、というものまで様々だ。
2017-02-21 00:40:00数週間ほど前からだろうか。太平洋で任務に就いている複数の艦隊、艦娘が、時折はぐれ艦娘の存在を報告してきていた。そのはぐれ艦娘は、戦艦級の深海棲艦を単独で複数相手して、それを全く無傷で倒してしまう、とまでのものだった。
2017-02-21 00:40:20しかし、誰一人としてその姿をはっきりと見た者はいなかった。故に、「はぐれ艦娘の正体は戦場で沈んでいった艦娘の幽霊である」という考えを持つ者が出てくるのは、そう想像に難くないことだった。
2017-02-21 00:40:31最初にそのはぐれ艦娘が報告されてから二週間ほどが経った太平洋北部。薄く霧の掛かったキスカ島の南の海上。輸送船団護衛作戦を遂行していた大湊所属の艦隊が、SOSを発信した。深海棲艦の主力艦クラスが現れたからだ。
2017-02-21 00:40:56護衛艦隊は球磨型軽巡洋艦、木曾を旗艦に、吹雪型駆逐艦、吹雪、白雪、深雪、初雪、磯波の五隻。輸送船団を護衛しつつそれらを相手するのは、あまりに分が悪かった。回避しようにも、深海棲艦は既にこの艦隊を捉えているようで、まっすぐにこちらへ向かってくる。これは被害を覚悟しなければならない。
2017-02-21 00:41:12その通信は、以前から報告されていたはぐれ艦娘から送信されるものと全く同じだった。木曾はそれを聞き、咄嗟に艦隊全体に面舵を取るよう指揮する。回頭が始まった刹那、そのまま直進していたら確実に命中していたコースで、戦艦の砲弾が着弾した。海に突き刺さったそれは、大きな水柱を立てる。
2017-02-21 00:42:30「木曾より艦隊、大湊へ。はぐれ艦娘と思われる者がオレたちの支援をしてくれるようだ。行けるぞ」その通信を入れた直後、砲撃音がする。その音の方角はいましがた砲弾が飛んできた方角とは異なるものだった。木曾はそちらへと目をやる。その砲撃音はあまり大きくはないが、遠くで確かに爆炎が見える。
2017-02-21 00:43:09その砲弾は、敵の戦艦へと吸い込まれるように飛翔し、装甲を貫く。三隻の戦艦を含む深海棲艦の艦隊は、あっという間にその戦艦を全て無力化され、敗走してどこかへ消え去った。呆気に取られていた木曾たちも、敗走していく深海棲艦を見ると、慌てたようにモールスを送信した。
2017-02-21 00:43:28「シエンニ カンシャスル キカンハ ナニモノゾヤ」 遠くにぼんやりと見えていたその姿は、また離れるように移動していっていた。その時、辺りに立ち込めていた霧が晴れる。
2017-02-21 00:43:48良かったら