茂木健一郎（@kenichiromogi）さんの連続ツイート第2040回「起源を隠蔽した作品が人を癒やす」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート２０４０回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は感想です。

茂木健一郎 @kenichiromogi

創造のプロセスは一種の自己治癒であるが、その結果生み出された作品には、作者だけでなく、他人をも癒やす効果がある。なぜならば多くの人にとって、苦しいこと、辛いことが由来するポイントは、共通だからだ。

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しかし、作品が自己治癒であるためには、作者を自分を見つめる視線が深く厳しいものである必要がある。クリエーターにとってもっとも警戒すべきなのは、ナルシシズムである。三流のクリエーターはナルシシズムに陥り、結果として深いところで人を癒やす作品をつくりえない。

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自分という存在の芯に突き刺さるような厳しい自己認識を持っている人だけが、多くの人を癒やす作品をつくることができる。そして、その際に大切なのは、起源がわからないくらいに変形してしまっていることだ。

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アインシュタインが「創造性の秘訣は起源を隠蔽することである」と言ったことは、作品の本質にあてはまる。どのような傷や痛みが起源になっているのかわからないくらい巧みに変形された作品だけが、傑作の名前に値する。

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夢はしばしば元の素材が結びつきや変形を通して表面化するのでその起源がわかりにくいことが多いが、すぐれた作品も同じことである。こんな傷があってそれがこうカバーされるというわかりやすい構図を持った作品は、所詮安物に過ぎない。

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マジシャンのフーディーニは、閉鎖精神病棟の拘束された患者の様子を見てショックを受けて、脱出マジックを考えたという。しかし、脱出マジックを楽しむ人は、そんな起源を知らない。だからこそフーディーニの創造は、一流なのである。苦しみや痛みをエンタテインメントに変える錬金術がそこにある。

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以上、連続ツイート２０４０回「起源を隠蔽した作品が人を癒やす」をテーマに６つのツイートをお届けしました。