日本におけるコンプライアンス問題にまつわる松浦晋也さんの指摘

コンプライアンス規則の弊害は日本で出やすいが、それについてジャーナリストの松浦晋也さんが書いておられたこと。 ・情報が流通している実態があるなら、それを妨げるように制度を設計してはならない。 ・日本ではもともと規則と実態の乖離を前提に形だけの厳しい規則を定める傾向が有る ・現状では規則に実態を合わせる運用がなされており、これによる弊害が強く出ている。もっと実態に寄せた規則が必要。
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松浦晋也 @ShinyaMatsuura

経産省の情報管理・施錠について「当たり前」「やっとか」という反応が目立つが、関係業界などもフリーの環境下で「経産省が今何を考えているか」という情報を得てきた。日本の情報生態系はこのようなアンオフィシャルな情報流通を前提にできている。これが切れるとかなりまずいことになると思う。

2017-03-01 12:25:38
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

情報の流れを変える時は、仕事の手順も変えなくてはいけない。明文化されていない慣習としての手順を変えるのは容易なことではない。しかし、手順を変えずに情報流通だけを変えると、仕事が回らなくなる。私は、この悪影響はじわじわと出てくると予測する。

2017-03-01 12:28:08
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

最低でも「すべてを公文書化、しかも速やかにすべての公文書をネットで公開する」としないとまずいはず。が、今の霞が関は「文書は破棄した」という言い訳を振りまわしている状況だし……高度経済成長が、ザル情報管理体制の実現する非公式ルートによる高速情報流通の元で達成されたことを思いだそう。

2017-03-01 12:32:25
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

今のままのほうがいいということではない。必要なのは、必要な情報が必要とするところに速やかに共有され、更新され続けていくこと。かつてはそれがちょっとした非公式の面会で行われていた。代わりの手立てなしに情報流通を絞ると、ひどいことになると思う。風通しを悪くして栄えた組織はないのだ。

2017-03-01 12:38:03
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

「会社ではごく当たり前のことでしょ」というtweetが流れてきたが、一般企業でも厳格化するようになったのは1990年代後半から、1980年代から90年代初めの日本経済絶好調時の企業はずっと緩かった。工場は厳しかったが、本社は中を保険のおばちゃんやヤクルト売りがうろうろしたり。

2017-03-01 14:57:19
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

要するに本音と建前が分離していて、その隙間をみんなよろしく便利につかって情報を流通させていたのである。当時はそのことが活力を生んだ。コンプライアンスがうるさくなり、管理を厳格化するようになったが、かわりの情報流路をや仕事の手順を用意しなかったことは、経済停滞の一因となった。

2017-03-01 15:00:12
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

「一因となった」と書いたが、これは取材を通じた私の印象。断言するには別途実証的研究が必要だろう。が、コンプライアンス強化と日本経済の落ち込みが並行して起きているのは事実。また私より上の「もっといい加減な管理の時代」の働き方を聞いていくと、やはり両者には因果関係があるように思える。

2017-03-01 15:03:22
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

繰り返すが「だから元にもどれ」ということではない。「新しい時代・新しい体制・新しいシステム」には、「新しい情報流通・新しい緩さ・新しい余裕」を仕組みとして作り込まねばならないということ。それが出来なければ、日本経済ますます沈みっぱなしになるのではないかと危惧している。

2017-03-01 15:06:41
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

Googleの20%ルールは、そのひとつなのだろう。また深圳から次々にベンチャーが出てくるのは、あの土地ならではの緩さが有利に働いているのだろう。経産省の件を「当たり前だ」と言っていたら、我々は活力を失っていく一方になるのではなかろうか。新しい次世代の主役は常に野放図なのだから。

2017-03-01 15:11:25
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

この問題、前から気になっていたので連投しました。  2013年に書いた記事。 コンプライアンス強化と「守れる規則」は表裏一体である:ITpro itpro.nikkeibp.co.jp/pc/article/col… #ITpro 全文閲覧は要無料登録

2017-03-01 15:29:04
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

@jmz 人の付き合いというのは慣習で、通常システムは慣習に対応して自生するものですが、日本の場合、コンプライアンス強化が外から入り込んでいるということだと思います。欧州の人の付き合い方は今のシステムに合っているのでしょう。この件を分析するには文化人類学的視点も必要ですね。

2017-03-01 15:55:31
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

@terakinizers 規則自体が本音と建て前の乖離を前提に、とても守れないようなものになっていますからね。それをコンプライアンス厳守すると組織が立ち行かなくなると見ています。

2017-03-01 19:48:44
松浦晋也 @ShinyaMatsuura

@terakinizers それなんですよ。だったら隙間をシステムに作り込まなくてはいけないのに、そういう動きは滅多にないですからね。今回の経産省の件も経産省自滅の引き金になりはしないか心配なのです。

2017-03-01 20:17:22