【冒険人生、春】福間健二 #k2fact162

2月21日から3月3日まで。去年の夏に「冒険人生」という詩を書いて「イリプス」という雑誌(20号、2016年10月)に発表した。その続篇のつもりでスタートした。2で山田兼士さんからもらった「生涯工事中」を使った。山田さんは森鷗外の「普請中」という短篇のことも思い出させてくれた。3の「日本は日本ではじまり、日本で終わる」は、4月に新版が出る、ぼくの訳したリチャード・ブローティガンの『東京日記』にある言葉。 自分がまだやってないこと、人がまだやってないことを、やりたいのだが、簡単にはできない。このところまた、毎日の楽しみはディケンズを読むこと。 音楽は、なにか中毒になりそうな脱力感をもった歌い方のKhalid の、これはわりと普通の「American Teen」 https://www.youtube.com/watch?v=0NChtZCDCsY
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福間健二 @acasaazul

どこに行くのか。頭が考えることはあてにならないが、富士見通り、西友と公民館のあいだかそのちょっと先かで躓いて拾った冒険人生。ゆっくりでも、「わたしをどうしたいの」とは言ってないきみの、もう序盤じゃない濃縮。穴をあける音かな。それはいま灰色だ。(冒険人生、春1)#k2fact162

2017-02-21 11:09:05
福間健二 @acasaazul

そして廊下の足音とおしゃべりだ。生涯工事中だという山田さんにはわかる。亡霊の指を入れた裂けめからのジュース、きのうときょうでも濃さがちがう。どういう筋肉がいるのか。不透明な「無内容」に流れる時間の、骨に。ここは日本だ。キスは暗くなってから。(冒険人生、春2)#k2fact162

2017-02-22 16:55:28
福間健二 @acasaazul

質問は思い出させるとともに命令している。不規則な息をする者にも、その息を盗む者にも。亡霊/筋肉/「日本は日本ではじまり、日本で終わる」という物語。しかし曖昧な命令だ。手首に包帯をした彼女にとってのすべての彼とその夜、その足場も組み立て中だ。(冒険人生、春3)#k2fact162

2017-02-23 17:23:25
福間健二 @acasaazul

声を出すたびに、かえって迷い込んだ区画から出られなくなる。だからといって、黙っているわけにはいかない。国立駅か立川駅で降りて行方を絶った孤児のこと、胡椒のこと、タマネギのこと。AでBをつくる。Bが次々に赤い目をして現れるのにAがわからない。(冒険人生、春4)#k2fact162

2017-02-24 16:40:43
福間健二 @acasaazul

どうしたらこの世界を好きになれるか。好きなもの、好きな人、好きなA、ひとつでもひとりでも一束でも多く見つけていくこと。答えながら命令の仕返しをして、冒険人生。立ってないで座りなさい。たまには発育不良の「正解」につきあって、粒子はもっと細かく。(冒険人生、春5)#k2fact162

2017-02-25 13:57:43
福間健二 @acasaazul

体と頭、表現と内容、たがいに相手の何周もの遅れを忘れさせて出会う「こんばんは」の形式があって、彼に足りないものはない。昨夜の場合なら、タラ、鶏肉、牡蠣、豆腐、白菜、ネギ、そして死者の思い出と比喩としての深い眠りの先に日曜日が来て、いい天気だ。(冒険人生、春6)#k2fact162

2017-02-26 09:59:39
福間健二 @acasaazul

くじける。無気力。それでも勧誘員か。そうです。小さな黒い山に針を刺していき、まるいものを育てる。それはボールペンのひと突きで牛を動かすようなこと。廊下の先、開いたままのドアのむこう、無断居住者の一員になってあくびをしながら夜の調べを聴く。(冒険人生、春7)#k2fact162

2017-02-27 16:36:05
福間健二 @acasaazul

実は、そんなものだということ。OKストアで買った食料のうち、コンニャクと油揚げ食べるの忘れていた。そのままでは食べられないもの。涙もろくて不明瞭な連結線にくたびれながら、このシステムは人の苦しめ方がわかっている。茶色、もうためらうことはない。(冒険人生、春8)#k2fact162

2017-02-28 19:01:30
福間健二 @acasaazul

攻撃的でも防御的でもない。でも目が感謝していない。とくに、小さなものに対して。バスで来た人たち。きのうは縛りつけられていたのだ。胡椒やタマネギのせいにできる「正解」は待合室に待たせて、自分では動かずに倒されるまで立っている大きなものに。(冒険人生、春9)#k2fact162

2017-03-02 07:42:16
福間健二 @acasaazul

自分が工事中の男の、冒険人生。どの顔、どの春を追ってきて、迷路なのだろう。百年以上前に鷗外はその分身に「日本も普請中だ」と言わせた。気温が少しあがって、遠くの空と夜がそれを思い出している。ぼくは自分が縛りつけられているかたまりを砕きたい。(冒険人生、春10)#k2fact162

2017-03-03 11:36:19