ザイバツ・シャドーギルド #5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

デジ・プラーグ2は電子箱庭であり、そこで相互に情報を通信できるのは互いに許可しあった者同士に限られる。これは大前提だ。システム基盤を掌握したエゾテリスムですら、この秘密通信の原則は崩せない。「頼んだ覚えはない」「そもそもこれは内内の問題だ」「お前も他所者には違いない」 23

2017-03-09 00:01:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「貴方たち、義心は無いのですか!」コトブキが口を挟んだ。「このコルヴェット=サンは愛の為に……それに、敵は無差別破壊行為をしています!今この時もきっと被害が。成敗しないと子供達が眠れない夜が……」「何だ、コルヴェット=サン、この不快なアカウントは」「不明瞭だ」「非論理的だ」 24

2017-03-09 00:06:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「旗色が悪いな」ニンジャスレイヤーは他人事めいて言った。コルヴェットは電子的に身を乗り出した。「貴公らは高みの見物をしてい給え!汚れ仕事は我らにて。危険も我らが負うのみよ。ただ黄金の小道と聖ヴィート大聖堂を繋ぐ経路の標(しるべ)を得たい。それだけだ。それだけで構わんのだ」 25

2017-03-09 00:12:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「危険は被ると?」「然りよ!」「フム」彼らは顔を見合わせた。「待て」うち一人が指摘した。「イクサが起こってデジ・プラーグの魔術的基盤に歪みが生じればどうなる?十年百年の修復が必要となろう。その責を他所者は負えまい」「そうだな……」「バカ!どうしようもない」コトブキが罵った。26

2017-03-09 00:17:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「交渉はここまで!とんだファック野郎どもです!」コトブキは怒り狂い、魔術師たちは呆れた。コルヴェットがなだめる。「お前さんはそこで黙っとれ、な?いいか、お歴々、俺が言いたいのは……」ZZZT!ワイヤフレーム世界がふいに毛羽立ち、亀裂めいたノイズが走り抜けた。ZZZZZZT! 27

2017-03-09 00:19:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

世界が明滅し、唸り、再びワイヤフレームが復帰した。「奴だ」ニンジャスレイヤーが呟いた。魔術師たちは息を呑み、互いに目を見かわした。「フン。またぞろ、どこかの都市がやられたんだろうよ」コルヴェットが言った。「奴に更なるサクリファイスが流れ込むぞ。次は更に大きい歪になろうな」 28

2017-03-09 00:23:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」魔術師のアトモスフィアが変化した。拒絶から恐怖へ。そこにコルヴェットが畳みかけた。「今のでおわかりだろう。危険なのだ!今なら止められる。もう一度言う、お歴々に直接の危害は及ばんよ。俺達がすべて被る。奴を倒す。失敗したとしても俺達が死ぬのみだ。万事問題なしだ!」 29

2017-03-09 00:26:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「黄金の小道で戦闘するべからず。絶対に。それが条件だ」「当然だとも」コルヴェットが請け合った。「……よかろう」魔術師のアカウントが明滅し、デジ・プラーグ2の精密な複製都市上に標(しるべ)の炎が灯っていった。それは迷宮めいたプラハ城の侵入経路を示すものだった。 30

2017-03-09 00:28:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……ゴーグルを外すと、コルヴェットがバツが悪そうにしていた。コトブキは不機嫌に屋内へ戻っていった。「見苦しいところを見せた。いや、奴らは身内でもないが、その……まあ何と申したらよいか。協力は取り付けられたゆえ……」「少なくとも、お前の事はわかった」ニンジャスレイヤーが呟いた。31

2017-03-09 00:32:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何?」「お前の必死ぶりに繕いが無い事はわかったと言っているんだ」ニンジャスレイヤーは言った。「この家にザゼンできる場所はあるか」「ああ、あるとも」「案内しろ」 32

2017-03-09 00:37:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

狭い部屋の飾り窓から斜めに差し込む陽光が、宙に舞う埃を白く光らせる。広さは無いが、濃厚で独特なかぐわしさを含んだ空気で満たされた、力のある部屋だった。用途不明の真鍮魔術具が置かれた机に、エゾテリスムは銀の杯を三つ並べた。「まさかブラスハート=サンがおいでになるとは」 34

2017-03-09 00:41:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「サンズ・オブ・ケオスの特定の二人が頻繁に会談し、ビズをしているとなると 、ククク」部屋のもう一人、デシケイターは面白そうに含み笑いをした。「まあ、落ち着かんのじゃないかね。あのパワープレイヤーは」デシケイターの瞳は乾いていた。エゾテリスムは指を立てた。「シッ。彼は強大です」35

2017-03-09 00:43:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それは疑いようもない。だが、御さねばなるまい」デシケイターは小声で囁いた。「仮にやつが三度目の接触を……ンンッ。クク、ククク」彼は咳払いし、笑い始めた。エゾテリスムは氷の中からワインを取り出し、無造作にチョップで切断した。やがてドアが開き、三人目……ブラスハートが現れた。 36

2017-03-09 00:46:12