攻城大陸二次創作IF「もしアヤノとリクトが本編で絡んだら」

武織火花@firefly_takeoriさんによる、攻城大陸https://kakuyomu.jp/works/1177354054882480403 の二次創作作品まとめです!
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佐賀屋火花 @muku_fire_muku

──せっかくこの世界に呼ばれたんですもの。 「沢山沢山殺しましょう。沢山沢山滅ぼしましょう。意味もなく、故もなく、遍くことごとくを殺し尽くして滅ぼし尽くしましょう。楽しくもなく疲れるだけで何の実りもありませんけど、それでも一応やっときましょう。もののついでで──滅ぼしましょう」

2017-03-16 23:47:16
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

──ね、リクト君。 「私ね、リクト君のカノジョになれたらなって思ってたんですよ? 男の人は大っ嫌いです。でもリクト君は別でした。リクト君は……私を、本当に、私として見てくれていたから」 「──あ、やの。それ、なら──」 「──“だから”殺しますね、リクト君」

2017-03-16 23:48:59
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「ミァンちゃんも殺します。リンちゃんも殺します。あの子供達も殺します。優しいおばさんも可愛い犬も憎らしいエルカハルの人達も愛おしいソラスの人達も金魚も畑も野菜も商人も盗賊も弁務官も神官も乞食もお金持ちも悲しんでいる人も喜んでいる人も大好きな人も大嫌いな人も── ──リクト君も」

2017-03-16 23:51:40
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

──ちゃんと全部、殺しますね。 「嫌いな人だけ殺したらいい人ですか? 敵だけ殺したら英雄ですか? それっておかしくないですか? 沢山殺したら沢山殺しただけ罵られるべきじゃないんですか? 私達は悪い人ですよリクト君──どんな理由があっても。誰かを守るためでも。悪い人は悪い人です」

2017-03-16 23:53:24
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「アヤノ──!」 「“だから”私も殺してくださいね、リクト君! 私達、沢山殺したり殺されたりしましょうね! それってすっごく──」 ──恋人みたいです! 憎悪ではなく、恋慕によって。 殺意ではなく、祈りによって。 屍竜が大気を穿った。 槍が伸び、白竜の肩を穿つ。

2017-03-16 23:55:18
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

流れ込む痛みによって、脳と神経が焼き切れるほどの衝撃に襲われる。アヤノ自身もまた共有するはずのこの痛みに、しかし灰色の竜騎兵は微塵も揺るがない。咄嗟に掲げられた双刃断剣を左手の爪で受け止め、更に接近して懐へと侵入。開かれた顎の奥、無数の茨が並ぶ喉奥に、暗い熱情が淀んでいる。

2017-03-16 23:57:15
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「──だいすきですよ、リクト君」 甘い囁きが。 鉄を喰らう音が。 少年の心をも、食い尽くしていく。 白竜と灰竜。もつれあい、絡み合って落ちていく様を、しかし見守る者は誰もいなかった──認識されず、愛されず、ただ二匹だけとなって堕ちていく──。

2017-03-16 23:59:00
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

#攻城大陸 二次創作IFルート覚醒編(リクトvsアヤノ)ひっそり投げる。

2017-03-18 10:22:42
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

白竜の装甲には無数の亀裂。双刃断剣もその半身は折れ、今はただの刃断剣としてしか機能しない。全身は激痛に支配され、今も視界は定まらなかった。気を抜けばいつ意識を手放してしまってもおかしくない。筋肉と骨、神経と腱の全てが悲鳴を上げている。 だからこそ。 だからこそ──負けられない。

2017-03-18 10:25:35
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

──俺が負けたら……アヤノは、また、一人になる! 恐らく、この機体に──屍竜ルッカスに致命の一撃を叩き込めるのは、リクトが知る限りラティだけだ。優しく、淡く、敵を傷つけることさえ怖がってしまう、そのラティの弱さだけがルッカスに抗う武器になる。 痛みの君主。苦悶の支配者。憎悪の王。

2017-03-18 10:27:41
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

傷つけ、傷つくことだけに特化した異端の竜騎兵。 殺すためだけに戦うあらゆる竜騎兵では──抗うことさえ許されず、圧殺されてしまう。 「だから……俺が止めるんだ!」 吠え猛り、その想いが傷ついた白竜の体に力を与えた。リクトの願いに応えるように、全身を包む光の粒子が瀑布のように溢れる。

2017-03-18 10:29:23
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

二対四枚の光翼。白竜の息吹を背部に展開、超高速を纏う機体がルッカスの眼前まで飛翔する。驚愕するアヤノが突き出した槍と茨をかいくぐり、リクトはその穂先に刃断剣を振り下ろした。 絡め、捻り、刃を砕く。 同時に巻き取られた茨が折れた刹那、激痛がリクトの脳を焼いた。

2017-03-18 10:32:17
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「ぐ──ぅ、あ、ぁあ!」 「リクト君──!?」 外殻破損でさえ、常人ならば容易く発狂するほどの痛み。本体である茨の断裂は、狂戦士の魂さえも微塵に砕いてしまう。 それでも。 それでも──リクトの瞳から、光が失われることはない。 「──命を……奪うことに! 許される理由なんかない!」

2017-03-18 10:34:11
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「私は許されなくていいって──」 「それも! 嘘じゃないか!」 肩口からの体当たり。機動力特化型であるが故に軽量のルッカスはあまりにも脆く押され、体勢を崩される。半ば無意識に放たれた棘の弾丸に全身を打ち抜かれながら、リクトは燃え盛る炎のような激痛に耐えていた──悔いていた。

2017-03-18 10:36:15
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

ルッカスの黒炎。直接攻撃力を持たず、だが炎の吹き荒れる中に痛覚の同調をもたらす絶後の息吹。およそあらゆる竜騎兵を殺し尽くし、その果てに自らもまた死に絶えようという怨嗟の吹雪。 「ラティが言ってた! ルッカスは、そんな息吹じゃなかった! アヤノ──お前の願いに、応えてるだけだ!」

2017-03-18 10:38:03
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

──アヤノの願い。 違和感の種はどこかにあった。 全てを傷つけ、全てを拒絶し、繋がりを破棄するアヤノの願い。 その願いが──痛みを分かち合うことならば。 「お前は絶望なんてしてないんだ! 何度も折られて、望みを絶たれて! それでも絶望してなかった! 願いを捨てなかった!!」

2017-03-18 10:39:41
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

組み付き、食いつかれながら、魂が震えるままに叫ぶ。 痛みは既に許容の限界を越えた。今はただ執念だけが体を突き動かしている。それでもリクトは諦めを受け入れられない。 命を摘むのではなく。 傷つけず、けれど倒して勝利していくと決めたのだ。 ──何で、忘れてたんだ──!

2017-03-18 10:40:52
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「違いますよ、リクト君……私はきっと、生まれたときから──おとうさんのことなんて些細なきっかけで──」 「犬も──猫も、人間だって! 生まれたときから、絶望している命なんてあるものかっ!!」 ──アヤノの願いは。 哀れな少女の、あまりにもささやか過ぎる祈りは。

2017-03-18 10:42:05
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「お前は──誰かと、繋がりたかったんだ! 誰かと一緒にいたかった! そうじゃなきゃ、そうでなかったら……!」 ──大好きですよ、リクト君。 「そんなこと……そんなこと、言えるわけないだろう!?」 「──リクト君」 「嬉しいよ。俺もアヤノともっと遊びたい。みんなで一緒に笑いたい!」

2017-03-18 10:43:45
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

刃断剣が、茨に絡め取られていく。 全身を締め付けられ、骨格全てを砕かれるような苦痛の中で。 それでも──リクトは、笑っていた。 茨の棘に穿たれ、装甲を引き剥がされ、その触手が操縦席にまで侵入して四肢を刺し貫いても。 狂い出しそうな痛みの中で──リクトは、ただ、微笑んでいた。

2017-03-18 10:45:08
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

「俺も……リンも、ミァンだって。みんな、お前のこと、好きだった──」 「……リ、クト、くん?」 「──けど!」 光の粒子が迸る。屍の王たる竜、その黒い炎を千々に散らして、群青色の夜空を煌めきに染め上げていく。 「アヤノの後ろにいる奴は大っ嫌いだ! お前は──いらない!!」

2017-03-18 10:46:45
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

呪縛の魂。 アヤノの心に絡みついていた、意味もなく力もなく、ただそこに在るだけの惨めな憎悪。 その突端に向かい──光を纏う刃断剣が、振り下ろされる。 「アヤノを離せよ──お前なんかが! 捕まえてていい奴じゃないんだ! アヤノは……こいつは! もっと! 誰かと笑うべきなんだッ!」

2017-03-18 10:48:13
佐賀屋火花 @muku_fire_muku

本家様リクトだったらーっていうツイートがあって、燃えてやった。後悔はしていない。

2017-03-18 10:49:03