ジャーナリスト・烏賀陽さん(@hirougaya)が語る「記者の客観性って」

烏賀陽　弘道 @hirougaya

記者の「客観性」についてメモ１／民事訴訟を取材するとする。原発に反対する住民の反対運動を建設主が「工事妨害」で提訴したとする。

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メモ2／記者は反対住民側＆弁護士に取材する。「原発は環境破壊です」という話を聞く。

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メモ３／次に記者は、原発推進側、電力会社＆弁護士に話を聞く。「いやいや、P月Q日に工事船が妨害されて現場に入れませんでした」という話を聞く。

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メモ４／ここで「意見が対立するときは当事者双方の話を聞く」という「客観性」「中立性」を担保するための取材は終わり。

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メモ５／記者は、もうこれ以上の発想が出ない。あるいは「中立性」「客観性」を誤解しているので、「両方を等しく扱う」ように「両論併記」して記事は終わり。

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メモ６／このままでは「両方の意見が書いてあるだけの何のこっちゃわからん記事」なので、どっちかに味方している「識者」の談話をつけて自分の色を「にじませる」。しかしそうした手法も「陳腐」と行き詰まる。

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メモ７／ここである記者が「ちょっと待て、エネルギー政策というナショナルイッシューを工事の妨害という裁判上の争点にすり替える『論点のすり替え』ではないのか」と気付いたとする。

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メモ８／さらにその記者は「ちょっと待て、これは民事裁判を使った攻撃、。嫌がらせではないのか」と気付く。ネットで調べると「SLAPP」という言葉が出て来る。

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メモ９／記者は「裁判を攻撃に利用しているのか」「意見表明の抑圧に使っているのか」「それを防止できないとは、これは裁判精度に欠陥があるのではないか」と考える。

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メモ１０／こういうふうに「両論併記」から踏み出すことは、客観性の侵害になるのか？中立性の侵害になるのか？

烏賀陽　弘道 @hirougaya

メモ１１／実は、客観性も中立性も侵さない。

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メモ１２／新聞の紙面を見ると、こうした「踏みこんだ発想ができない」ことを「中立性」「客観性」のルールのせいにしているような気がする。

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メモ１３／裁判精度そのものに問題があるのではないか？と「制度そのもの」や「今まで誰もが当たり前だと思っていたものを疑う」という発想は「主観」そのものではないのか。

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メモ１４／そういった「個人の独自の発想」を「主観」と呼んで否定するなら、記者にオリジナリティなど期待できない。記者たち、上司たちはそういう誤謬に陥っているのではないか？

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メモ１５／記者のオリジナリティ、今まで見たことも無いような記事、独自ダネとは、そういう「両論併記」を入り口ですませ、さらに「発想」という「主観」を延長させていった先にあるのではないか？

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メモ１７／独自の発想とは「常識や世間がどう言おうと、私はこう考える」という「主観」そのものではないか。たった一人でも、不合理なことには抗う思考は「主観」そのものではないか。

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メモ１８／『主観的である」ことには「独自の思考」「独自の発想」「独自の知識」「独自の感情」がある。「客観主義」が排除しようとしたのは「独自の感情」だけだろう。そのことを誤解してはならない。

烏賀陽　弘道 @hirougaya

メモおしまい。ぐあああ