ミヤコようちえん探訪 #1

つづかない
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もずの木 @m0zu_txt

古竜アルマ・トーレが墜ち、月瞰の娘老も隠れて久しい。災厄世界バージオとの邂逅がもたらしたものは、つまるところ破滅であった。 1 #mztk1837

2017-04-22 21:19:42
もずの木 @m0zu_txt

世界の繋がりが曖昧となったことで"虚無と稀なる食堂"がもたらされ、伸伸的赤子が首をもたげる中、呪われ人はすべからく電子の海で俺パする運命を決定付けられていた。 2 #mztk1837

2017-04-22 21:21:23
もずの木 @m0zu_txt

『かの地、かの都を求めよ』 ある言い伝えは、やがて語るだろうか? ーーあるいは、希望こそが呪いであると。 3 #mztk1837

2017-04-22 21:22:41
もずの木 @m0zu_txt

【ミヤコようちえん探訪 #1】 4 #mztk1837

2017-04-22 21:22:53
もずの木 @m0zu_txt

古都シバレリア。およそ遠しとされた伝説の地にしかし僅かばかり人の温もりがあったことに、私はひどく驚嘆し、そして安堵した。 5 #mztk1837

2017-04-22 21:24:39
もずの木 @m0zu_txt

彼らはみな私と同じ外来の者。 「人は週末においてこそその多様性を奮起させ、しかし例外なく同じ死を迎える」第一村人がその諦観を語った。 6 #mztk1837

2017-04-22 21:25:31
もずの木 @m0zu_txt

ここへやってきた目的はただ一つ。 シバレリアの奥地にあるとされる"ミヤコ陽鳥園"。人類の絶滅を回避する鍵はきっとここにあるはずなのだ。 7 #mztk1837

2017-04-22 21:25:59
もずの木 @m0zu_txt

歩き続けた先で、ボォン…というSEと共に"昏き森の禁域"のテロップ。そこには巨大な廃墟があった。 8 #mztk1837

2017-04-22 21:28:54
もずの木 @m0zu_txt

それは疎らな太い木に貫かれ、長い年月の経過を思わせる。外観そのものは崩れていないように見えるが、入らないことには確かめようがない。 9 #mztk1837

2017-04-22 21:30:20
もずの木 @m0zu_txt

門には"ミヤコ幼稚園"と書かれている。なるほど、後に伝わるにつれ変化していった結果が"陽鳥園"というわけか。 10 #mztk1837

2017-04-22 21:30:53
もずの木 @m0zu_txt

進入は容易であった。ガラスのなくなったガラス戸など戸足り得ない。框を慎重に上がり、私はついに伝説の遺跡に足を踏み入れようとしてーーたたらを踏んだ。 11 #mztk1837

2017-04-22 21:31:23
もずの木 @m0zu_txt

『なんかきた』『なんか』『なんだろう』聞こえてくる囁き声、ぼんやりと前を横切っていく白い影たち。それらはこの土地が持ち、そして追憶する"記憶"に他ならない。 12 #mztk1837

2017-04-22 21:31:48
もずの木 @m0zu_txt

それらが認識できるのは、ここが永く無人であることの証左でもあるのだが、これほどはっきりと見えるのも珍しいため驚くほかはない。 13 #mztk1837

2017-04-22 21:32:53
もずの木 @m0zu_txt

腐食で抜けそうな部分を避けながら進んでいく中、でたらめなクレヨン画や朽ちた炬燵、虚無のゴーレムや散乱したぬいぐるみ、プロテイン缶や踊り子パーカーなど豊富な残留物が目に留まる。 14 #mztk1837

2017-04-22 21:34:46
もずの木 @m0zu_txt

世界の終焉を止める鍵……不安になってきたが、見つけなければならない。倒れたタンスをどけて地下への道を発見した私はさらに進んでゆく。 15 #mztk1837

2017-04-22 21:34:59
もずの木 @m0zu_txt

地下はお決まりの巨大な空洞で、苔むした顔作画イマイチメカやキュウリの抜け殻が放置されている。ここは一体どういう場所だったのだろう? 16 #mztk1837

2017-04-22 21:37:20
もずの木 @m0zu_txt

イマイ顔メカの開いた操縦席を覗いたところ、小さなロボットが転がっているのを見いだした。「こ…………ぺ……」それはまだ生きているらしく、手の上で微かに震える。 17 #mztk1837

2017-04-22 21:37:31
もずの木 @m0zu_txt

放置された諸々の機器にはこのロボットを接続できるくぼみがあったが、それらは完全にだめになっているようだ。私は仕方なく紙媒体を探しに壁際の棚の群れへと探索の目を移した。 18 #mztk1837

2017-04-22 21:38:52
もずの木 @m0zu_txt

『俺は…………』『#……………薄……』『………のオーブ』『…………落とすやつ………』『…した』『うぅ……』どれもこれも掠れて読めないが、これでも大きな成果である。形が残っているだけ僥倖、持ち帰って修復と解読を急がねばなるまい。 19 #mztk1837

2017-04-22 21:39:23
もずの木 @m0zu_txt

私が意気揚々と地上階の朽ちた炬燵の所までやってきた、その時である。唐突な画面下テロップ表示。「侵入者だと!」すわバージオの使徒かと素早く周囲を確認したが、そうではなかった。炬燵の下から這い出てきたのは4mはあろうかという巨大な狐。 20 #mztk1837

2017-04-22 21:41:50
もずの木 @m0zu_txt

しっかりと目で確認する前に私は走った。関われば死ぬと私の直感が告げたからだ。生きて帰らねばならない以上、私は、逃走した。 21 #mztk1837

2017-04-22 21:42:12
もずの木 @m0zu_txt

((なんなのだあれは))森を抜けるまで走って、追われてはいないと判断したところでようやく考える。獣……となるとバージオの使徒ではなさそうだが、そうなると現れた理由も、その由来もわからぬ。 22 #mztk1837

2017-04-22 21:44:05
もずの木 @m0zu_txt

「そこのあなた」突然に次ぐ突然に私は身構えた。気付くとどこからか何かが空を切る音もしていて、思わず頭を下げる。首が飛んではかなわない。「誰だ」「怪しいものではありません」木陰から出てきたのは妖精。空を切る音は妖精の持つムチだったようだ。 23 #mztk1837

2017-04-22 21:44:41
もずの木 @m0zu_txt

「ここには何もない、早々に引き返すがよろしい」妖精は淡々と告げるが、引き下がるわけにもいかぬ。「教えてくれ。ここはなんなのだ?そしてアレは」「ここは数多ある世界、その可能性の一つ。廃墟となったミヤコ幼稚園という可能性が、このシバレリアに繋がっただけのもの」24 #mztk1837

2017-04-22 21:47:08
もずの木 @m0zu_txt

「つまり」「バージオと同じ。違う世界、違う時間の同じ座標にあるものがここにある。ここで誰かに会ったならそれは、"元の"世界からの迷い人」25 #mztk1837

2017-04-22 21:47:28