錦戸先生!

10
前へ 1 2 ・・ 8 次へ
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

26 考えながらも、首を振る。 しっかりしろ私! あんなアイツの言葉に惑わされるほど、だてに今まで横山先輩を見てきたわけじゃない。 トイレの鏡に映った自分に喝をいれるように、顔をパンッと両手で叩いた。 --- [先生…] 「よく考えてみ?な?」 『…あっ、』

2017-05-15 01:20:18
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

27 濡れた手を拭きながら廊下を歩いていると、空き教室で錦戸と女子生徒が何か話しているのが見えた。 ドアが少し開いていて、会話が微かに聞こえる。 私はとっさに柱に隠れ、その様子を見ていた。 女の子、泣いてる…? [私… 先生の事本気で好きなんです!]

2017-05-15 01:20:35
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

28 女子生徒が錦戸のジャケットを握る。 [先生…私が生徒だとか考えないで… 内緒にするから… 遊びでもいいから!] 涙をすすりながら、すがるように話す女の子。 修羅場だな… すると錦戸はそっと女子生徒の手を掴み、そして離した。

2017-05-15 01:20:52
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

29 「ごめんな。 俺、 生徒をそういう対象では見られへん。」 そう錦戸がはっきり伝えると、女子生徒は泣きながら走っていった。 私もそっとその場から去ろうとすると、 ガタッ 「あ?」『あっ…』 ゴミ箱につまづいて、錦戸にバレてしまった。 「何してんねん。(笑)」

2017-05-15 01:21:27
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

30 「うっわ、隠れて見てたんや!趣味悪いわぁ。」 『べ、別に見たくて見てたわけじゃ…』 「…今年になって、これで5人目。」 『あなたの犠牲になった生徒?』 「犠牲って言うな。惚れた、と言うてくれ。」 『…はぁ。 先生が思わせぶりだからじゃないんですか? 最っ低』

2017-05-15 01:21:55
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

31 「思わせぶりやなくて、女なら誰にでも優しく接する。 それが俺やからな!」 腕を組みながら自信満々に言う錦戸。 『(小声)ドヤ顔すんな…』 「でも…」 『?』 「俺は生徒には惚れない。 生徒とそういう関係になるつもりはない。 これからも。」

2017-05-15 01:22:36
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

32 すっと私を見て言う先生。 ふーん…あっそ。 『じゃあ、なんであんな意味の無い賭けをするんですか? 私を惚れさせてどうしたいんですか?』 「お前を手なずけるため。」 『は?それだけ?』 「みーんな俺を好きになんのに、 お前だけや。興味無さそうにしてんの。」

2017-05-15 01:23:00
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

33 「こんなに構ってやってんのに、 ほんま腹立つ。」 …ほんと訳わかんないわコイツ。 理不尽にも程がある。 『だから… どうして私に構うんです? 他に生徒なんか沢山いるでしょう。』 怒り交じりに言うと、 錦戸はさっきの冷たい表情から一変して、真剣な顔になった。

2017-05-15 01:23:33
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

34 そしてジリジリと私に近づき、壁に追いやる。 「可愛いから…」 『は、はぁ?』 「なんか構いたくなんねん。 小学生が好きな子にイジワルする事あるやんか… それと同じ。 お前って… 他の生徒より純粋で、何にも染まってない感じがすんねん。 せやから…」

2017-05-15 01:23:54
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

35 トンッ 錦戸が壁に手をつく。 そして私を見つめながら、 「俺に構われるん…迷惑?」 と寂しそうに呟いた。 『…そ、そんな事言われても…』 錦戸の顔が近すぎて、目を合わせられないで俯いていると、 「……っふふ。」 『?』 「お前ってさぁ…」

2017-05-15 01:24:15
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

36 「…単純すぎ。 顔、赤なってんで?」 そう言われた瞬間、恥ずかしさが胸の奥から込み上げ、じわっと身体が熱くなった。 「あれ…ときめいちゃった? そうやって簡単に騙されたらあかんで。じゃ。」 笑い交じりに言い放ち、背中を向け手を振りながら、錦戸は教室を出ていった。

2017-05-15 01:24:51
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

37 --- はぁ… もうなんなの。 不覚にも、錦戸にドキッとさせられてしまった私。 自分だけは、他の女とは違うと思ってたのに。 そんな簡単にヤツに落ちるわけないって、思ってたのに。 私も結局みんなと同じなの? …いや、ありえない! 私があいつを好きになるわけ…

2017-05-16 18:29:47
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

38 “どうしたん?(笑)” その声に振り返ってみると… 横山先輩だった。 『!?』 私はびっくりしすぎて、後ずさりし、尻もちをついてしまった。 ドンッ 『っ、たぁ…』 “ふっ。ほんまドジやな。” そして横山先輩は、あの日と同じように手を差し出す。

2017-05-16 18:30:04
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

39 『すいません…』 “帰ろ思ったら、一人でぶつぶつ言いながら頭抱えてる子がおったから、誰やろって見たら…キミやった。 おもろいな、お前(笑)” 私の手を引きながら、笑う。 その笑顔がキレイすぎて、私は見惚れていた。 “今から帰るんやろ? 家どっちなん?”

2017-05-16 18:30:24
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

40 『駅の方です…』 “途中まで同じやん。 一緒に帰ろうや。” --- 横を向くと、憧れだった先輩が一緒に並んで歩いてる。 ちらっと目が合うと、横山先輩が私に微笑む。 これって…夢? 『…あの、』 “ん?” 『えっと… 今日部活なかったんですか?』

2017-05-16 18:30:41
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

41 “おん。今日はコーチが体調不良らしくて、俺らも今まで休みナシやったから、今日は休みになってん。” 『そうなんですね。』 “あ、いつも見に来てくれてるよな!練習。” えっ、バレてる…。 横山先輩、私がいつも見てたこと知ってたんだ。 『なんかすいませんっ…』

2017-05-16 18:30:59
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

42 『私のこと、覚えててくれたんですね。』 “忘れへんよ。見かけると、あっ転んでた子や〜っていつも思ってたで(笑)” あぁ。 嬉しすぎて涙が出そうだ。 夕暮れの雰囲気と相まって、先輩の凛とした横顔は、やっぱりすごくすごく素敵だった。 このまま時が止まればいいのに。

2017-05-16 18:31:13
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

43 だけど、残酷なことに楽しい時間はあっと言う間に過ぎていく。 『あ、私こっちで…』 “そうなんや。じゃ、またな。” 『…また。』 横山先輩は小さく手を振って、歩き出した。 ゆっくり去っていく先輩の背中が名残惜しくて、 グイッ 気付いたら私は彼の袖を掴んでいた。

2017-05-16 18:31:57
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

44 『あ!あの…』 “え?…どうしたん?” 『…先輩、 好きです! 中学の時からずっと…』 思い切って言った言葉。 自分でもどうして言ってしまったのか分からない。 心臓が飛び出そうになりながら、横山先輩の顔を覗く。 先輩は驚いたのか、目を丸くしていた。

2017-05-16 18:32:36
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

45 “あ、えっと…俺…” どうしよう、困ってる。 私は我に返って、パッと袖を掴む手を放した。 『す、すみません! 急に言われても困りますよね? 返事は今じゃなくていいんです! ゆっくり考えてからでも… “ごめん” 『……え?』 “俺、付き合ってる人がおんねん。”

2017-05-16 18:32:55
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

46 そう言う横山先輩の顔は、今までの柔らかい表情ではなく、真剣だった。 “あ、いや…付き合ってるって言うか…俺の一方的と言うか… …とにかく、君の想いには答えられへん。 ほんまにごめん…” 申し訳なさそうに言う彼。 …謝らないでよ。 そんなの仕方ないことじゃん。

2017-05-16 18:33:11
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

47 振られるのなんか、分かってたのに。 『…えっと、 いいんです!全然! 何で私こんな事言ったんだろ(笑) 先輩みたいな人、付き合ってる人がいて当然ですよ! 今のことは全部忘れてください!では!』 “あっ!ちょっ…” 私は深々とお辞儀をして、その場を走り去った。

2017-05-16 18:33:19
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

48 --- 『はぁ…はぁ…』 どれくらい走っただろう。 身の程知らずの自分に、恥ずかしくなった。 『ははっ、馬鹿みたい…。』 力の抜けた私は、公園のベンチにドサっと倒れ込むように座った。 何年間もの片想いは、こんなに一瞬で崩れ去ってしまうものなんだ。

2017-05-17 17:18:08
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

49 あぁ…横山先輩。 好きだったなぁ… そう思い、空を見上げると、蛇口をひねったように涙が溢れ出た。 『っっ、』 言わなければ良かった。 ずっと憧れで良かったのに。 止めどなく溢れてくる涙を拭っていると、 スカートに涙ではない水が落ちて来た。 …雨。

2017-05-17 17:18:36
まるこ@エイト妄想 @eightmaruter

50 私は折りたたみ傘を持っているのも忘れ、ただ雨に打たれていた。 しとしとと、私の服や顔を濡らしていく。 もういっそのこと、この悲しい気持ちも一緒に洗い流してよ。 サー… 『……』 しばらくベンチにぼーっと座っていると、 誰かの足音が背後から聞こえた。

2017-05-17 17:19:43
前へ 1 2 ・・ 8 次へ