金剛のものがたり。九話『霧島のものがたり』

はるか @Kurosu_Haruka

「ふは〜。銭湯って気持ちいいネ〜」 「お風呂はいいですね、金剛お姉様」 「榛名、ちょっと！　姉様に近づきすぎ！」 「比叡お姉様！　榛名は大丈夫です！」 「私が！　嫉妬で！　大丈夫じゃないよ！」 「お、落ち着くネ、二隻とも。ここは民間の銭湯ヨ〜」 #金剛のものがたり

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「すみません。鎮守府の大浴場のノリで入っていました」 「せっかくなので！　金剛姉様のおっぱい！」 「ほわっつ！？」 「気合！　入れて！　見つめま……げふ！？」 　比叡はわたしの拳を受けて仰け反り、ミルク風呂の中へと沈んだ。 「グーパンは酷いです！」 #金剛のものがたり

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「比叡とお風呂は身の危険を感じるネ……」 「まったく姉様はガードの固い」 「比叡お姉様といると金剛お姉様が大丈夫じゃないです」 「そういえば、メガネはどうしたのヨ」 「霧島は私を見る目が怪しいので身の危険を感じ、気合！　入れて！　置き去りにしてきました！」 #金剛のものがたり

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「比叡お姉様、自分のことを棚にあげないでください」 「榛名！　榛名も本当は金剛姉様の乳尻太ももに、気合！　入れて！　かじりつきたいくせに……ごふ！？」 　わたしの拳を受け、比叡は再びミルク風呂へと沈む。 「グーパンは！　気合！　抜いて！　やめましょう！」 #金剛のものがたり

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「それに榛名がかじりつきたいのは……」 「ひええ！？」 　榛名は比叡へ、にじり寄り流し目で微笑む。 「榛名ぁ！？　わたしというものがありながら浮気デース……！」 「金剛お姉様だって提督とイチャついてるじゃないですか！」 「司令なんか！　海岸に埋めてしまえ！」 #金剛のものがたり

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「提督とイチャついてなんかないわヨ！　それと比叡、提督を埋めたらノ〜！　なんだからネ！」 「金剛お姉様って提督とイチャついてますよね、比叡お姉様」 「イチャついてるわよね、榛名」 「くっ……してないワ！　わたしだってイチャつきたいのにサ〜……！」 #金剛のものがたり

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「司令、振り向いてくれないんですか！？」 「ウン……あのスットコドッコイ、わたしなんか眼中にないネ」 「人間なんかと！　恋しても！　不毛です！」 　突然、比叡が飛びかかってきた。 「Shit……！」 「私と！　恋の花！　気合！　入れて咲かせ……ぐえ！？」 #金剛のものがたり

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わたしの拳で比叡は三度、ミルクの海へと沈む。比叡は三度沈むのだ。 「でも比叡の言うとおりデース。報われない愛を追っても虚しいだけネ」 「でも、それでも好きなのですよね？　提督が」 「ウン……スキ」 「それじゃ、司令を驚かせましょう！」 #金剛のものがたり

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比叡は突然立ち上がり、握り拳を掲げ気合のポーズを取る。 「金剛姉様の可愛らしさ！　気合！　入れて！　アピールです！！」 【金剛のものがたり。九話『霧島のものがたり』】 ────── 「はっ……！？」 　ここは一体。 #金剛のものがたり

はるか @Kurosu_Haruka

私が目覚めるとそこはどうやら弾薬庫だった。「眼鏡はどこ？　めがね〜めがね〜……」 　眼鏡をかけていないと私はなんにも見えない。 「あ、おでこにあったわ。ふふ、ドジね、私も──」 　ん？　体が動かない？ 「私、縛られてるー！？」 ────── #金剛のものがたり

はるか @Kurosu_Haruka

私の名は霧島。一部の人や艦娘は私を眼鏡と呼ぶ。 　今日ここで語るのは他でもない。私の身に降り掛かった理不尽な災厄を後世に伝えるためである。なぜか私は目覚めると弾薬庫で緊縛されていた。理由はわからない。 #金剛のものがたり

はるか @Kurosu_Haruka

本来なら、私は姉たちと銭湯に行き、今頃幸せな時間を送っていたはずだ。なぜこんな仕打ちを。薄暗い弾薬庫で身動きも取れず、ただ唖然としていなければならないのか。そもそもなんだこの縛り方は。荒縄に鎖、ワイヤー。さらにはピアノ線、そしてご丁寧にしめ縄まで使っている #金剛のものがたり

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どうやら犯人（ホシ）は私に確実な拘束時間を与えたかったらしい。私が動くとこまるなにか。切実な理由が、このいやらしい拘束の仕方をする卑劣な誰かにはあるのだろう。 「高速戦艦だけに拘束したってわけね。高速戦艦だけに」 　ふふふ、さすが私のギャグは艦娘でも随一。 #金剛のものがたり

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まずは状況を整理しよう。私は拘束されて弾薬庫にいる。つまりもしかしたら鎮守府は何者かに制圧され、艦娘は分散させられ拘束されてるのかもしれない。 　もしかしたら愛する比叡お姉様は悪漢の手であんなことやそんなことを── 「なんて卑劣な……！」 #金剛のものがたり

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なんとしてもこの拘束を解き、私は悪漢の手から比叡お姉様を救い出さなければいけない！ 「なんとしても！　なんとしてでも！　私は！！」 ────── 「ペグチョイ！」 「！？　なんです、比叡お姉様、その鳴き声は？」 「クシャミだよ」 「変なクシャミネ〜」 #金剛のものがたり

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「誰か気合入れて、私の噂でもしてるのかな〜」 「比叡お姉様も提督たちにモテますからね」 「司令たちにモテても微塵も嬉しくないんだけど」 「エ〜！　提督たちにモテタイ！」 「私は！　金剛姉様に！　モテたい！　です！」 「恥ずかしいから大声だすの止めてヨ……！」 #金剛のものがたり

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「そうですよ、比叡お姉様。ここは格調も高ければお値段も高い、超高級店なのですから」 　そう、わたしと榛名は比叡に連れられて銀座にあるなんだか入りにくいお高そうなビルにやってきた。中には服やらアクセサリーやら、びっくりする値段の物が並んでいた。 #金剛のものがたり

はるか @Kurosu_Haruka

「比叡も榛名もおしゃれなお姉さんって服装ネ〜」 「姉様はなんですか、その格好」 「なんですか言われてもネ、今日は洗濯のローテーションの都合で他に着てこれる服ガ……」 「背中に『あわおどり！』のロゴ。榛名は恥ずかしいです……」 「ザギンでそれはちょっとね」 #金剛のものがたり

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「榛名は三越コラボでおしゃれ学んだからって調子こいてるネ……！」 「失礼ですね。私はオシャレさんです」 「なにいってるネ。ダズル迷彩とか普通の迷彩服とか軍関係の服ばっかり着てたクセニ〜」 「プライベートも寝るときも艦載装備でいた干物に言われたくないです！」 #金剛のものがたり

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「そもそも！　洗濯の！　ローテーションってなんですか！　服はたくさん買ってください！」 「べ、別にあんま外でないし何着もいらないデース……」 「金剛お姉様は干物過ぎて大丈夫じゃないです」 「別に提督たちは艦載装備着てれば鼻の下伸ばしてくれるシ……」 #金剛のものがたり

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「その干物っぷり提督にも教えて差し上げたいです」 「そんなの毎日一緒に暮らしてるから提督が一番知ってるワヨ」 「司令の前でも！　干物してるの、姉様は！？」 「執務室で提督の椅子の下にジャージ転がってモン○ンしてるワヨ」 「うわ」 「気合抜けて引きます……」 #金剛のものがたり

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「ドン引きしないでヨ！　そのままの金剛がいいって提督が……」 　わたしは頬を赤らめ妹たちから目をそらす。 「そのままったってね〜？　榛名」 「ジャージで椅子の下でモン○ンされてたら百年の恋も大丈夫じゃないです」 「しゃらぽヨ…！」 「でましたね、しゃらぽよ」 #金剛のものがたり

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「これ横須賀鎮守府で流行らそうとして流行らなかったやつだよね、榛名」 「そうです。金剛お姉様しか使ってません、しゃらぽよ」 「う、うき〜！　怒ったデース！」 「あはは、姉様が怒った〜」 「と、とにかくネ！」 　わたしは咳払いし、なんとか落ち着こうと試みる。 #金剛のものがたり

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「あのオッサンは一人が好きとかいい年こいて厨ニ病こじらせたような発言してるのヨ。わたしなんて提督のそばにいてもいなくても、大して変わらな……なにしてるノ、比叡」 　愚痴をこぼしてる間に、比叡は豪華で美しいドレスを何着か手に持ち、わたしと見比べては唸っている。 #金剛のものがたり

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「そんな司令を！　見返すためにも綺麗になりましょう！」 「え〜！？」 　きらびやかなドレス。確かにこれを着たら馬子にも衣装というものだ。 「に、似合うカナ」 「もうその場で乱暴働きたくなるくらい美しいですよ……ふ、ふふ」 　よだれを垂らす比叡に背筋が凍る。 #金剛のものがたり