@alkali_acid 唯一仲間と呼べるのは三毛猫に変身する斑猫ぐらいか。 「ってあいつどこいったんだ。おやつの時間だってのに」 スプーンをしまい、ひとくち餌を出してうろうろする魔法使いの少年。
2017-06-09 23:30:53@alkali_acid 路地裏で、美少女が猫を抱いている。 「ふしぎな子ね。斑から三毛になるなんて」 「(っそおおおおおおおい!!!)(所詮は畜生か。あの人に近づいたらだめだって警告したのに)」 「あら?」
2017-06-09 23:31:53@alkali_acid 美少女はほほえんで魔法使いの少年を振り返る。 「この子の友達、なんですか?」 さあこんなときどういう反応をするのが自然か。強く否定する。肯定する。適当に言葉をにごす。驚いたふりをする。さあどうする。 「いやーべべつに」
2017-06-09 23:33:55@alkali_acid 最悪に不自然な返しをしてしまう少年。美少女はじっと見つめてくる。 「不思議な猫ですよね。まるで魔法を使うみたい。毛並みが変わるなんて」 「けなみぃ?(うらがえった声)気付かなかったなあ」 まずい。まずい。とてもまずい反応ばかりだ。計算と違う。
2017-06-09 23:35:09@alkali_acid 自然な演技を心がけつつ少年はゆっくりとあとずさる。 「その猫よく知らないんで」 「ヴナアアアアアア」 三毛に変身できる斑は汚い声で鳴くと、いきなり美少女の腕から飛び出し、少年の足に駆け寄って首をこすりつける。
2017-06-09 23:36:29@alkali_acid 「(お前!!仲間を売る気か!?所詮畜生!!!情けなどかけたばかりに…ってそうか餌か)」 「くすくす…猫、お好きなんですね」 「ソッスネー」 震える手でセロハンをやぶいて餌を猫に食わせる。
2017-06-09 23:37:39@alkali_acid 「この街ってなんだか魔法みたいに不思議なことが起きる」 「ヘー」 「だから、魔法部なんて、作ってみたんです。不思議なことを皆知りたくて。ちょっと変ですよね」 「ヘー」 「もしかしてご存じないですか魔法を使うって噂のある人のこと」 「シンナイッスネー」
2017-06-09 23:39:08@alkali_acid やばい。リーチがかかった。完全に財団の注意を引いてしまった。 「オットーサン!!急に海外出張とかにならない?」 「だが自営だ」 「僕、留学したい」 「うちには金がないし、お前は勉強ができない。スポーツもだ」 「とにかくこの街にはいたくないんだ!」
2017-06-09 23:40:29@alkali_acid 「何わけのわからんこと言ってる」 「なりふりかまってられないんだよ!実は僕は魔法使いで恐ろしい財団が」 「うるせえ!!!勉強するか家事するかどっちかにしろ!!」 「なんで信じてくれないんだ!!くっそ見てくれ父さんスプーンを」 「ボカッ」
2017-06-09 23:41:25@alkali_acid 「くそ…なんて親だ…本当に子供を大事にする親なら、こういう時、息子の真剣さに気づいて、きちんと話を聞いてくれるはずだってのに…どうする。どうする…僕が世界最強の魔法使いだと知れたら…」
2017-06-09 23:42:39@alkali_acid 少年はとりあえず、スプーンの隠し場所にいく。 「まずあれを処分だ。なに、燃えないゴミの日に出せばいい。そうとも。きわめて簡単で完璧な処分方法だ…ってなくなってるー!!?」 近くで笑い声 「ねえ、そのおもちゃどうしたの」 例の美少女だ。
2017-06-09 23:43:56@alkali_acid 足元には三毛に変身できる斑猫がまとわりついて、前足でねじくれたスプーンを弄んでいる 「(おまえ…どうあっても僕を…売る気か…財団に…くう…いや、しのぎきってみせる。僕は世界最強の魔法使い。先に散っていった仲間たちの想いを受け継ぐためにも)」
2017-06-09 23:45:55@alkali_acid 「また会いましたね。この子のよくいくところ、だいたい知ってるんですね」 「ソッスネー」 「それにしても、この子のあそんでるおもちゃ何でしょう。スプーン?じゃないですよね。毬のような、オブジェみたいな」 「サー」
2017-06-09 23:46:58@alkali_acid 猫はスプーンをくわえて少年のもとへ運んでくると、ぽとりと落とした 「(いつもみたいに曲げろってか!!?このクソ裏切り畜生が!!!絶対にやるか)」 「もしかして、あなたがその子にあげたんですか、おもちゃ」 「(こいつが勝手に盗んだんだよおお)イエー」
2017-06-09 23:47:58@alkali_acid 「ア、ボクカエラナキャ。シュクダイシュクダイ」 猫が不満そうにうなって足にしがみつく。いいとこ見せろという態度。 こういうときはどう反応すべきだ。蹴るか。優しくふりほどくかそれとも。 「(なでなで)」 「本当に仲がいいんですね」
2017-06-09 23:49:13@alkali_acid 「すごくなついてる。魔法を使う猫と仲良しなんてうらやましいです」 「そうかな?よくわからないな」 最近読んだ小説風に答えてから、やさしく猫の拘束をほどく。 「ほら、あっちのきれいなお姉さんと遊ぶといい」 「ヴナアアアア」
2017-06-09 23:50:45@alkali_acid 猫がスプーンをまたくわえて、少年の手のひらに落とす。 とっさに捻れ曲がっていた塊が、さらに変形して、まるで螺旋のようなかたちになる。 「ホワアアアアア!?」
2017-06-09 23:51:43@alkali_acid 「イヤ、そうじゃないかなーって」 「もう、だいじょうぶですよ。無理に隠さなくて。あなたが、魔法使いなんですね」 「チガイマース!!チガイマース!!」 「世界最強の」 「チガイマース」
2017-06-09 23:53:19@alkali_acid 「もしかして、能力ってスプーンを曲げることだけなんですか」 「うおおおお。お願いします!見逃して下さい!この通りだ!!!」 土下座する少年。頬に指をあてて小首をかしげる美少女。 「この前処分した魔法使いは、ライターの火を操れるだけの術師でしたけど」
2017-06-09 23:54:55@alkali_acid 「それでも鞭みたいに火を操って、ちょっと怖かったです。あなたもそんな風に応用できるんじゃないですか?」 「でき…」 まてここはできると答えて一筋縄ではいかない男を演じるのがいいのか、それとも無力さを発露すべきなのか。 「できますん」 「どっち?」
2017-06-09 23:56:04@alkali_acid 「多分。収容する必要はないですよね…」 美少女は通学鞄に手を突っ込んで、自動拳銃を取り出す。 「ひぎぃっ」 「ヴナアアアア!!ギャウッ」 最初に猫が撃たれる。
2017-06-09 23:57:27@alkali_acid 「っておい!!ちょっ、猫はかんけい」 「ごめんなさい脅威度が高い方から処分しないと…あなたもすぐですから」 銃口が少年の方を向く。
2017-06-09 23:58:21@alkali_acid 「くそ…くそあああ!!!!!!!」 「変な覚醒とかしないで下さいね」 美少女はちゅうちょなく引き金を引く。
2017-06-09 23:59:14