少年は一見どこにでも居る平凡な高校生、しかし実は世界最強の魔法使いだ

彼の術とはそう、スプーンを曲げることだ
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帽子男 @alkali_acid

マリナレスカさんの「ごく平凡な高校生」の正体をあぶりだす餌少女の話は面白かった

2017-06-09 22:53:01
帽子男 @alkali_acid

少年は一見どこにでもいる平凡な高校生。しかし実は世界最強の魔法使いで、トラブルを避けるために力を隠しているのだった 彼の術とはそう、スプーンを曲げること

2017-06-09 22:53:58
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid それも金属に限る。プラスチックや木などはだめだ。金属であればほとんど曲げられる。 その力は年をとるにつれ強まる一方で、小学生ぐらいまでかなり厳密にスプーンだけしか曲げられなかったが、最近は十徳ナイフのスプーンや先割れスプーンも曲げられる。

2017-06-09 22:56:20
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 世界最強の魔法使いにしては、いささか堅実に過ぎるだろうか。 実のところ半世紀ほど前までは不老不死瞬間転移未来予知意識改変因果操作時間移動温度制御などのより便利な術を使う連中がいた。

2017-06-09 22:57:48
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid だが残念ながら、全員魔法使い見つけ捉え管理する処分する財団の手に落ちた。 魔法が支配する闇の社会では幾度も激闘があり、人知れず多くの工作員や使い手が散っていった。

2017-06-09 22:59:12
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid そうして残ったのがスプーンを曲げる術の使い手である少年である。暫定一位。 彼の知る限り、ほかに斑猫に変身できる三毛猫万馬券を絶対に回避できる競馬好きのおばあさんがいたが、後者は故人だ。昨年肺炎をこじらせてなくなった。

2017-06-09 23:01:49
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid おばあさんは死ぬ前に財団について教えてくれた 「いいかい。あいつらは執念深い。魔法使いを全員捕まえるつもりなのさ。人類を守るためだとか、真理を研究するためだとか言ってね。警察も弁護士も頼りにならないよ。あいつらのスパイはどこにでもいるんだ」

2017-06-09 23:03:21
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 「息をひそめて、常人のふりをしてやりすごすんだよ。あんたより一万倍ぐらい賢くて一億倍ぐらい強くて一兆倍ぐらい見た目の良い連中がみんな調子こいて負けたんだからね」 「待ってくださいよおばあさん」

2017-06-09 23:04:50
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 「僕は頭の形がいいってほめられるんです。でこぼこしてないし、絶壁でもない。歯並びだって小さい頃からブリッジをしてるし、朝だってランニングしてる。見た目がよくないってのは納得いかないな」 「幸いにしてあんたは特別ブサイクでもなければ特別イケメンでもない」

2017-06-09 23:05:55
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 「かといって逆に疑いをまねくほどフツウすぎもしない。あんまりフツウだと、無能力、魔法が何も通じない特殊な使い手だと疑われるからね」 「ちなみにどのあたりがフツウじゃないですか」 「喉のところに母斑があるね」 「個性ですよこのくらい」 「それでいい」

2017-06-09 23:08:56
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 正直唯一の(言葉が通じる)魔法使い仲間であるおばあさんが肺炎で亡くなったときは非常に落ち込んだが、三毛猫に変身できる斑猫を抱いて墓参りをしつつ まずおとなしく暮らしていた。

2017-06-09 23:10:22
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid もちろん彼とて、自身を特別ならしめているスプーン曲げの術を完全に封印している訳ではない。目立つ行動がとれないなか、例えば一度曲がったスプーンをさらに曲げるとどうなるか 針金で作ったスプーンはスプーンと言えるかなど高度な探究に試験勉強そっちのけで取り組み

2017-06-09 23:11:50
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 事情を知らない親に怒られたていた。そんなある日のこと。 クラスにとんでもない美少女が転校してくる。無口で、考え深げで寂しそうで、目立たないようでいながら強烈な魅力を備えた人物。

2017-06-09 23:13:14
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid もちろん少年はすぐに分かった。とうとう財団の「餌」がこの学校という池にも投げ込まれたのだ。当然ながら針と糸がつながっているに違いない。 「いやあトメさんに言われてなかったらうっかり声をかけるところだったよ。おいよせばか。財団は猫だからって容赦しないぞ」

2017-06-09 23:14:35
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid さっそく美少女に近寄ろうとする三毛猫に変身できる斑猫を抑えつけて、少年はしかりつける。 「いいか、そっとして触らなければ、あの人はまたどっかへ転校していく。ま、それまでの辛抱だ」

2017-06-09 23:15:46
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 数日は何事もなく過ごせたのだが、転校生はさっそく行動を起こした。中堅どころの進学校にいるマイルドな不良にどうやってか勇気を出させ、いじめというか、からみというか、そういう事件を招き寄せたのだ。

2017-06-09 23:17:27
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 「うわー。これは僕が例えば実は時間加速の術とかが使える魔法使いだったらさりげなく助けているところだが、もちろんスプーン曲げはこういう時何の役にも立たないからな。念のため生活指導の先生にチクっておくか…」 少年は遠くからちら見しながら独りごちる。

2017-06-09 23:19:12
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid だが、どの高校にも、美少女の転校生を助ける「ごく平凡な高校生」というやつはいるらしく、さっそく中世的な美貌の少年が止めに入っていった。 「しめしめ…うまいこと避雷針みたいなやつがいったな。これで万事解決だ」

2017-06-09 23:20:18
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 「ごめんなさい。あなたじゃないの」 「え?どういう意味」 「助けてくれた気持ちはうれしいけど、あなたじゃないの。ねえ、この学校に…魔法を使うってうわさの生徒はいない?」 「え?」

2017-06-09 23:21:40
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 美少女はらちが明かないと見えて次から次へと質問して回ってる。さらには何やら魔法部なるクラブを作って学校の変人を集めいるらしい。 「わっはっは。せいぜい青春してろ…しかし念のため僕が転校した方がいいか…それとも休学…いやいかんいかん」

2017-06-09 23:23:30
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 魔法使いの少年は己をいましめる。こういう時は目立つ行動をしてはだめだ。あくまでモブ、目立たないその他大勢として過ごすのだ。 大丈夫大丈夫。財団の餌、だって無限にこの学校にいられる訳じゃない。あと少しの辛抱だ。

2017-06-09 23:25:18
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 「まったくストレスがたまるよなあ」 曲げ続けたスプーンは複雑怪奇に絡まり、まるでメビウスの輪だかクラインの壺だか、何かの現代アートのような形になっている。 「この術、何かに生かせないかなあ…何かに…無理か」

2017-06-09 23:26:38
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid スプーンを曲げる術の活用方法も思いつかない。何かの遠隔操作スイッチにでもすればいいかと思ったのだが、手を触れていないと曲げられないので、意味がない。 ものすごく特殊な金属を曲げることでものすごく役に立つ場面があるかと想像したが、ピンと来ない。

2017-06-09 23:28:08
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 「まあいいさ。僕が世界最強の魔法使いであるという事実だけは確かなんだから…最強だぞ?ほかのやつが皆捕まったせいではあるが。でも最強だからなあ…あー宇宙からでっかいスプーンの形をしたエイリアンが襲ってこないかなー…英雄になれるのになあ」

2017-06-09 23:29:03
帽子男 @alkali_acid

@alkali_acid 「いやだめだめ。目だったら財団に捕まえられちゃう」 そう。そろそろ想像がついているだろうが、魔法使いの少年には友達がいないのだ。

2017-06-09 23:29:35