航空機銃小話~エリコンのない世界のIF零戦・イスパノスイザを添えて~
こうしてHS8とHS7/9のエリコン特許回避版が作られ、23mmはHS401、20mmはHS402となる。これらはエリコンと同じRB薬莢(リムが一段細くなっている)をそのまま使用していたのだけど、この薬莢形状は非エリコン方式の機関砲には無意味で、そして信頼性を落としていた
2017-06-11 07:18:15特にRB薬莢の形状は発射速度向上に不利だったという事なので、リムと抽筒子の保持が不確実だったのかも知れません。そのためイスパノは弾薬も独自の新型とした新機関砲を開発しようとします。まず1934年にHS403が研究されるも、これは図面から出る事はありませんでした
2017-06-11 07:23:38そして1936年にイスパノは新しい機関砲を完成させます。モーターカノン用のHS404が有名ですが、その他にも20x71mm弾薬で軽量型・爆撃機銃座装備向けのHS405、23x122mmの銃座用406とモーターカノン用407等、一連のシリーズになってたようです。作動方式は全て同じ
2017-06-11 07:27:20HS405は20x71mmという弾薬からも分かるように性格はエリコンFFに似てます。重量25kgで初速600m/s、弾頭重量130g、60発ドラム弾倉とまあ、ほとんどそっくり。ただし発射速度は760~780発/とFFの1.5倍程で、発射速度を重視した403以降の改良が活きてます
2017-06-11 07:32:34HS405ってこうして見るとなかなか悪くない機関砲なんじゃないでしょうか。エリコンFFより反動はキツイでしょうが銃自体はほぼ同規模に収まるだろうし火力は1.5倍。エリコンのない世界のIF零戦にも悪くなさそう……(だけどエリコンがないとイスパノが誕生しないので駄目ですね)
2017-06-11 07:37:37作動方式と保持方式の特徴
機関銃における「リコイル動作」も「ブローバック動作」も一般には「反動利用」と呼ばれる。装薬が燃えてガス圧で弾頭がすっ飛んで行くと、その反作用がどこか(薬莢の底)に掛かる。その力を直接使うのが「ブローバック」だけど、これは弾頭が銃口から飛び出す前に遊底が下がってしまう。
2017-06-11 07:18:38ではショートとかロングとかの「リコイル動作」と「ブローバック」は何が違うのか。リコイル動作も薬莢底にかかるガス圧=弾頭加速の反作用を後退に使う。ただし遊底「だけ」が下がるのではなく、銃身・薬室・遊底がまとめて一緒に下がる。
2017-06-11 07:20:21昔の大砲陣地は「下り坂」に作り、大砲を撃つと砲車ごとゴロゴロ坂を上って後退し、また自重でゴロゴロ戻るような作りをしてたけれども、リコイル方式の自動火器における「リコイル退却」の原理は同じ。復座力として坂のかわりにバネを使う。
2017-06-11 07:22:46大砲が坂を上りきったところで尾栓を開いて次の弾を込めるのが「ロング・リコイル」。「ショート・リコイル」は大砲が坂を上り始めたところ(弾頭が砲口から飛び出したところ)で尾栓を開く。砲身の退却はそこで止まり、尾栓だけが続けて後退してゆくことになる。
2017-06-11 07:25:20大抵の機関銃では、動かない「フレーム(レシーバー)」の上にレールを作り、その上に前後動する「銃身」と「遊底」を乗せて(両者まとめてリコイルメンバーと読んだりする)、それぞれが適切な距離を動くよう「ロッキング機構」や「リターンスプリング」を組み込む。
2017-06-11 07:27:28さてえすだぶ氏が解説中のイスパノHS404は、弾倉も含めた機関部全体がリコイルメンバーであり、固定される「フレーム」に相当する部分がものすごく銃口先端側に偏って設けられているというのが特徴。銃身前方に巻きついたバネがショートリコイルスプリングで、固定部分はその直後になる。 pic.twitter.com/mvZ8lVmLj3
2017-06-11 07:29:32この一見へんてこりんな設計は、ひたすらモーターカノンとしての実装「だけ」を考えたため。この場合、エンジン減速ギヤボックスの後部とショートリコイルスプリング後部がぴったり一致する。 pic.twitter.com/228Apmiz03
2017-06-11 07:30:59なので原型HS404は「モーターカノン以外」の実装で余計な工夫を強いられることになった。たとえば対空機関砲に使う場合も、わざわざ銃架を前方に伸ばして銃口直後を支えてやる必要がある。en.wikipedia.org/wiki/Hispano-S…
2017-06-11 07:32:19ウェストランド・ワールウインドも、鉄パイプでV字の強度構造を作って銃口後部のマウントポイントを支えている。ここを支点として機関砲全体が前後に数センチガタガタ動くのがイスパノの特徴。 pic.twitter.com/eQdfupiaIV
2017-06-11 07:35:13HS404を主翼装備する場合、桁材から筒状の強度構造を伸ばし、そこに機銃をはめ込んで筒の先端でマウントポイントを保持していたようだ。 pic.twitter.com/ekZSzjpBje
2017-06-11 07:42:00閑話休題
HS405の形態はよくわからないのですが、ささきさんの言うような搭載方式上のイスパノの特徴はどう解決するつもりだったんでしょうね。モーターカノン用の404なら割り切れるけれど、銃座装備用の405で大掛かりなフレームとかは少々面倒そうで……
2017-06-11 07:40:42イスパノ406と407はどちらも23mm口径。マドセンとかVYaのようにしばしば独自発生してくる不思議口径です。20mmよりもう1ランク上、という所で丁度いいんでしょうかね。弾頭重量が200gくらいになる、というある意味キリの良い所もあります
2017-06-11 07:49:52HS406と407はどちらも23x122mm弾使用で、200g弾頭を600発/分でばら撒きます。違うのは重量と砲身長と初速で、モーターカノン用407は56.5kgの900m/sという重量級。銃座用の406は少し軽く短く、52kgの840m/sになってます
2017-06-11 07:52:58407はソ連のVYaより軽くて火力同等だし、銃座用406は404と殆ど重さ変わらないのに遥かに大威力だしで、これだけ見るとイスパノ23mmって素敵やん! と思っちゃう所です。しかし「20発ドラム弾倉」で全てが台無しに
2017-06-11 07:58:23しかし実際のところイスパノ23mmが流行らなかったのは、機関砲そのものではなく当時のフランスにおける軍需企業国有化の流れにあったようです。イスパノも例外ではなく、これに伴って同社の新機関砲開発もシャテルロー造兵廠に移管。これが原因で開発が遅れに遅れることに
2017-06-11 08:05:29この混乱のためにバグ出し段階にあったHS405, 406, 407の作業は遅々として進まず、開戦時点でこれらの「404以外のイスパノ」はそれぞれ1門の試作砲しか存在しなかったようです。404だけはどうにか量産に漕ぎ着けたものの、未だ完成と言える状況とは程遠く
2017-06-11 08:13:44@FHSWman あー、それで「パリ陥落の直前にイギリスの密使がイスパノ工場からベルト給弾装置の試作品1基と図面一式を持ち出し、自動販売機のモリンズ社が開発を続けて完成させた」という漫画みたいな話になったんですね(;´Д`)
2017-06-11 08:18:45@uchujin17 なんとそんな話が……。そしてここでもモリンズとは。軍需とはあまり縁のなさそうな本業なのに、機関砲から自動砲、高射砲信管調定機まで八面六臂の大活躍ですね
2017-06-11 08:23:28