忘れ去られた少女のSCPと男と虹色の魚
軍時代の知人に電話をかける。 他愛のない会話をする。何か変わったことはないかと聞く。 よくあるゴシップ。だが知らない名前が多い。 「お前は変わらないな。声も若い」 そんな話がある程度。
2017-07-17 23:47:01ひょっとすると時間の流れに取り残されているのだろうか。 不安になるが、これといって確かめる術がない。サイト、というかSCPと生活する一軒家を離れる訳にはいかない。
2017-07-17 23:48:01夜遅くに目を覚まし、台所で水を汲んで飲み 食卓に座ってじっと考える。 「財団はまだあるのか?そもそも最初からあったのか?俺は本当にDクラス職員なのか?すべて妄想?」
2017-07-17 23:50:24翌朝目を覚ますと、少女が猫のようにベッドの端で丸くなっている。 「おい。ここに入るのはよせと言っただろう」 「ごめんなさい。ひとりだと怖くて眠れなかったの」 「…寝室にあの魚を連れて行っていい」 「ランとロンを?」 「ランとロン?」
2017-07-17 23:53:25家の上水管が木質化し、本管ではなく地面深く潜り込んで根分かれし、理解不能な源泉につながっていると知ったDクラス職員。 掘った土の側に突き立てたスコップにもたれてしかめ面を作り、水道会社を呼ぶが、見に来た職員は、 「私では分からないので専門の技師を呼びます」と言って帰ってそれっきり
2017-07-18 00:04:53「コーヒー。おいしくなった気がする」 「慣れたか」 「ううん。ほんとに味が違う。前はもっと苦かった」 「苦いのが嫌なら無理に飲まなくていい」 「ううん」
2017-07-18 00:05:43水道会社の簡易検査で水質に変化はないはずだが コップに汲んでしばらく置いておくと、スペアミントに似た匂いがする。 一時間もするとアップルミントに近い薫りになる。
2017-07-18 00:06:52「ああ。相変わらず質がいいね。おたくの大麻は本当に」 「どうも。ところでアサの花は…こすれあって金属質の音をさせるものか?」 「イヤな音かい?」 「いや、楽器のような」 「吸っててそうなったって人はあんまり聞かないな」 「そうか…いいんだ」
2017-07-18 00:11:30風がふくたび、シャンシャラシャンシャラと鳴る大麻の花 Dクラス職員が腕組みしてむっつり見守る横で、SCPは両耳に掌をあてて聴き入っている 「きれいな音」 「ああ」 「ねえ。花瓶に活けて家の中に飾ってもいい?」 「花瓶がない」
2017-07-18 00:13:43