忘れ去られた少女のSCPと男と虹色の魚
SCPそのものの特性として財団に忘れ去られた少女が、たったひとり覚えているDクラス職員の男と一緒に暮らしている サイト****。
2017-07-17 23:20:52毎朝、少女のためにコーヒーを淹れ、ミルクをつけ、ベーコンかハムかソーセージのどれかを焼き、 いつまでたっても上達しない目玉焼きかスクランブルエッグか、できがいいとはいえないオムレツをつけ トーストと買い置きのコールスローも。
2017-07-17 23:24:11少女は図書館で借りた本を読んだり、男と一緒に浜辺を散歩をしたり、 スケッチブックに絵を描いたりして過ごす。ときどき送られてくる手紙の返事も書く。
2017-07-17 23:25:47少女の文通相手が誰なのかはよく分からない。複数いて、恐らく未管理のほかのSCPか、ごく平凡な人間か それ以外の何かかもしれない。Dクラス職員の男にはよく分からない言語だったり、カセットテープに入った録音だったり 消印もあったりなかったり。
2017-07-17 23:26:54Dクラス職員の男への財団からの給与振り込みはあったりなかったり、気まぐれだ。 生活費を賄うために、大麻を育てている。前に一度当局の職員に踏み込まれたが、相手は三人で一緒にコーヒーを飲んだあと、何があったのか忘れて帰ってしまった。
2017-07-17 23:28:41Dクラス職員の男は、果たしてこれが適切な管理状態なのかどうか自信がないが、 しかし財団本部からの新たな指示がない限り、同じ生活を続けていくしかない。 もう任務についてから何十年も経ったのか、あるいはまだ数か月に過ぎないのか、分からなくなる。おおむねその中間というところか。
2017-07-17 23:30:17「それ、おいしい?」 少女が、職員が巻いている大麻を指さして尋ねる。 「いや?」 「じゃあどうして吸うの」 「売り物だし、味見はしておかないと」 「私もしてみたい。味見」 「よした方がいい」
2017-07-17 23:31:19でも少女が何かをしたいと願ったら、それは必ず実現する。 結局職員は紙巻の大麻を渡す。 華奢なSCPは、説明に従って、煙を吸ってから、咳き込み、すぐ返してしまう。 続いてくすくす笑い始める。
2017-07-17 23:32:20空から沢山天使が降りてくる。炎の尾を引き、手には剣。 地上のあちこちに雷を落として、道路に穴を空け、電線を寸断し、水道管を破裂させる。 「まずいな」 Dクラス職員は意味もなく、隠し場所から拳銃を取り出す。
2017-07-17 23:35:35「すごい…おもしろい…すてき…」 少女はそのままひっくり返ってなおも笑いの発作を繰り返しながら、とうとう眠り込む。 天使はひとしきり飛び回ったあと、雲の切れ間に入っていき、姿を消す。
2017-07-17 23:36:38職員は起きたことを正直にレポートにまとめ、郵送する。 緊急用の電話回線にもかけるが、もちろん「おかけになった番号は使われておりません」 という案内があるだけ。
2017-07-17 23:37:16適切なカバーストーリーが作成されたのだろうか。 自分のクリアランスが低すぎて情報が来ないのだろうか。 あるいは明日にも機動部隊がまとめて抹殺に来るのだろうか。
2017-07-17 23:39:34「ごめんなさい。もう味見したいなんて言わない」 「いいさ。何事も経験だ」 しょげかえる少女に、男は鳥籠に入れた虹色の魚を差し出す。天使と違って消えなかったのだ。
2017-07-17 23:40:52やがて少女の文通相手のひとりから、小包が届く。 中身は、透明な海老を乾燥させたもので、ビニール袋に入って、恐らく中国の漢字、のようなしかしどこか微妙におかしなラベルが貼ってある。
2017-07-17 23:42:56SCPはにこにこして虹色の魚に透明な乾燥エビを上げている。 Dクラス職員は台所の掃除をしながら、ときどきちらちらとそちらをうかがう。
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