SF作家・星新一が現代に生きていたら...短編創作SF「現代の星新一」が面白い【定期更新】

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星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

満ち足りた世界。SNSを眺めると世界各地の絶景や美味しい食べ物の様子がずらりと並んでいる。世界から戦争は無くなったのだ。エヌ氏は今日も自室のカプセルに籠り、空想がそのままSNSに投稿される装置のスイッチを入れた

2017-06-30 13:45:50

星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

「今回の発明は素晴らしいものだ。是非高く買って頂きたい。」博士は国の役人を相手に商談をしていた。「はて、私にはこの装置の効果がいまいちよく分からないのですが。」「順を追って説明します。この装置は人々に税金が無い世界を体験してもらう装置です。

2017-06-30 14:08:46
星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

公共サービスの無い不便さを知った人々は文句を言わず税金を払うようになるだろう。どうでしょう、私に大金を払っても十分元は取れる計算ですが。」「素晴らしい。我々としてもこのような装置が欲しいと思っていたところだ。金はいくらでもやろう。さっそくこの装置の作動するところが見たい。」

2017-06-30 14:09:12
星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

「そう言っていただけると思っていました。これから初めてこの装置を使ってみるところなので、あなたをお呼びしたのです。」 そう言うと博士はおもむろにレバーを引いた。 「おかしいじゃないか、何も変化がないぞ」

2017-06-30 14:09:40
星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

「これは困った、エラーメッセージ、この装置は税金によって作られた学校に通った博士によって製造されました。税金が無い世界にはこの装置が生まれることはなく、したがって作動することもできません、だと。」

2017-06-30 14:10:12

星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

「お前を痴漢容疑で逮捕する」警官は冷静な口調で男に伝えた。 「待ってください。私は痴漢なんてしていません。そもそも最近の移動は一人一人がカプセルの中に入れられ、そのカプセルが自宅から会社に繋がったチューブの中を通って運ばれる仕組みです。

2017-06-30 15:05:40
星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

個人が完全に分離されたこの最新式移動手段で痴漢なんてできるはずがありません。」 「そんなことは知っている。今回被害に遭った女は、自分のカプセルの中に男が入ってきたと言っている。それに関して反証はあるか。」 「証拠なんてありません、ただ私は本当にしてません。信じてください」

2017-06-30 15:06:30

星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

「いい一手だ。流石人類の英知を尽くしたAIなだけはある。」 「ありがとうございます。そういうそちらも、人間とは思えぬほどミスがなく、勝つ確率は今の所五分五分といったところですか。」 「ははは、人工知能の君には少数第三位以下の細かい勝率まで計算できているはずだが、

2017-07-02 18:42:49
星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

あえて人間らしく五分五分などと言ってくるところが可愛げない。」 「将棋とは人間のスポーツです。私はAIとして、まだまだ人間に学ぶところがあります。」 「これは参った。その言葉だって計算されたお世辞かもしれないが、ありがたく頂いておこう。」

2017-07-02 18:43:23
星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

かつてその地に文明と呼ばれる営みが存在したとは思えない程荒涼とした大地の上で、2体のロボットは次の一手を考えていた。

2017-07-02 18:43:51

星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

「おいSiri、あの女に商品を買えと言え。」「かしこまりました。」 セールスマンの持つ携帯型端末は夫人に話しかける。 「突然のご訪問失礼します。私は今度発売された最新型耳かきのご紹介に参った者ですが、少しお時間を頂けないでしょうか。」

2017-07-07 12:37:32
星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

その言葉に反応し、夫人の携帯型端末は夫人に伝える。「耳かきを買えと言っています。」 「要らないわ。帰れと言って。」「かしこまりました。」 「おたくの耳かきのことは前々から気になっていましたわ。最新機能にも惹かれるのだけど、あいにく主人に相談しないといけなくて。」

2017-07-07 12:38:34
星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

「おいSiri、女はなんと言っている。」「買わないから帰れと言っています。」 その日も思うような成果を上げられず帰社したセールスマンは上司に呼ばれた。

2017-07-07 12:39:13
星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

上司の端末がセールスマンに伝えたのは、「うちもここのところ経営が厳しい。個人的にこんな事はしたくないのだが、人事部の方から希望退職者を募れとの指示が出ている。」 「おいSiri、上司はなんて言ってる。」「お前はクビだと言っています。」

2017-07-07 12:39:44

星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

織姫と彦星の会話。 「その年に届く願いを見ればその年の世相が大体分かる。しかし、今度の年はいまいちよく分からない。金融危機でも起こっているのか。」 「ええ、5000兆円欲しいなんて破格な願いが、次から次へと・・・。」

2017-07-07 13:18:26

星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

「しかし、こうも毎日ハンバーガーを貰うと徐々に腹が立って来る。私はハンバーガーをおまけとしてもらうためにケータイを契約したのではない。」 ある時代から始まった携帯端末会社によるハンバーガーの配布は年々勢力を増し、男は毎日3つのハンバーガーを貰うようになっていた。

2017-07-13 22:29:03
星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

「もういい、多少不便かもしれないがこのハンバーガー地獄には耐えられん。ケータイを解約しよう。」 そう決意すると男は電話をかけた。 「はい、こちらは解約センターです。ただいまケータイを解約されたお客様に、お詫びとして毎日ハンバーガー配布のキャンペーンをしており・・・。」

2017-07-13 22:29:59

星新一っぽい話を考える人 @tsuchi_yami

「電波を受け付けたものは直ちに応答せよ。繰り返す・・・。」 研究所のレーダーは不思議な電波を捉えていた。 「こちらは地球のエス研究所だ。お前は誰で、どこから発信している。」 「そちらの科学力では分析できていないことだろう。我々は地球から遠く離れたある惑星から交信している。

2017-07-16 02:32:27
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