【ミリマスSS】アンナの日記#2-4（完結）

創務丹/蝶乃雨冠(ﾁｮｳﾉ ｳｶﾝﾑﾘ) @chou_tan_

(これまでのあらすじ：ギルド対抗戦に挑むvivid_rabbit(望月杏奈)とlilyknight(七尾百合子)。vivid_rabbitが敵・MADSに洗脳されてしまうが、lilyknightが虹色ハナビでこれを解除する。裏切りガンナーのライアも味方に戻り、戦況は三対一へ！)

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【アンナの日記】#2 微かな灯火 -4

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ライアくんはMADSに銃を向けた。逆立っている髪を片手で撫で下ろす。「『ファイナルバレット』の話は、嘘だったのか」「……どうだろうね」「『ファイナルバレット』の在り処なんて、本当は知らなかったんだろ」「知ってたかもね。知らなかったかも？」大粒の雨が地面を叩いた。　01

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「『ジェラスショット』！！」銃が火を噴いた。雨を弾き消す業火の弾がMADSに迫る。MADSの手から泥が飛び出し、弾を捕らえる。じゅぅ、と、小さな音が響いた。「……これで3対1。こうでなくっちゃね」MADSは笑った。「ここからの逆転劇が、楽しいんだ」地面に手をかざす。　02

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次の瞬間、私たちは、地面に膝をついていた。「なっ……！？」足を誰かに掴まれ、引き倒されたのだ！「気づくべきだったね、君たちは。これだけエサがあるのに、食べずに放っておくとでも？」私たちの足を掴んでいたのは――「どうして、みんな」ギルドの仲間たちだった。　03

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たしかに、私がここに来たとき、地面にみんなが倒れてた。けどそれは、MADSにやられたからだと思ってて。「みんなを、洗脳したんですか」「これで、3対……15、くらいかな？　うふふ、でもね。まだ増えるんだよ」MADSは雑木林のほうを指さした。「そろそろこっちに着くはずだからね」　04

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嫌な予感が、背を伝う。「まさか」vivid_rabbitが手を振りほどこうともがく。「そんなわけないっ！」「暴れないでくれるかな」「メンドスさんは負けたりしないっ！」「ふふ、おやおや」MADSは厭らしく笑う。「僕はまだ何も言っていないけど……どうしてそんなふうに思うのかな」　05

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雑木林の奥からズズゥン、と、地鳴りが響く。「君は、誰が来ると思う？　ライア」「メンドスさんだ」ライアくんは力強く言い切る。「あの人は一度、GILに勝ってる」「そう上手くいくかな」雑木林がガサガサと開かれ、巨大モンスターグロデスルスが姿を現した。その上に誰かが乗っている。　06

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グロデスルスの上に座っていたのは――紫色の甲冑を着こんだ影！「メンドスさん……！」思わずうるっときてしまう。けれど、すぐに、異変に気付いた。「……なんでグロデスルスの上に？」グロデスルスは凶暴なモンスターだ。ブリーカーでもないメンドスさんが乗りこなせるはずがない。　07

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とすると、導かれる答えはひとつ。「突撃ィーッ！」どこからか、そんな声が聞えた。同時にメンドスさんが飛び上がり、ライアくんの目の前に着地する。「メンドス、助けて、僕は――」メンドスさんが巨大鎖鎌を振り上げ、ゆっくりと下した。「『デスクラッカー』」ライアくんの頭が弾け飛んだ。　08

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血が、噴水のように飛び上がり、メンドスさんの鎧に吸い込まれていく。「ハァーッハッハッハ！」高笑いが響き渡る。間違いなく、GILの声だ。「よくやったぞメンドス！　我が下僕に相応しい働きだ！」GILは、グロデスルスの上に――さっきメンドスさんが座ってた、その後ろに立っていた。　09

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「洗脳……！？　いつのまに……！？」「君の疑問はもっともだ、lilyknight。去りゆく君に教えよう……」MADSが私に歩み寄る。「このギルド対抗戦が始まったとき、近くにヌマズリというモンスターがいただろう」思い返す。確かに、いた。体表が泥で覆われている、非定型の……　10

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「泥」「そう」MADSは手を地面に向ける。手から泥が滴り落ち、何かが形作られる――それは、蠢く小さな泥の塊だ。「僕の術は泥を介する。君たちが出現するスポットの近くに、こうやって、ヌマズリもどきを配置しておいて……襲わせる。運が良ければエサが獲れる……。今回は強運だったよ」　11

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いつのまにか、GILがMADSの横に立っていた。「これで揃った」MADSが呟く。「揃った……って、なんの話ですか」「役者だよ。この一世一代のショーの役者がすべてここに揃った！　クライマックスだよ」「ハァーッハッハッハ！」「うふふふ……ふふ……ハァーッハッハッハ！」　11

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ふたりの笑い声が共鳴する。「「ハァーッハッハッハッハ！！」」聞いているだけで頭がおかしくなってしまいそうだ。「メ、メンドス……さん……！」vivid_rabbitがメンドスさんを見つめる。「目を、覚まして……！」返事はない。「「ハァーッハッハッハッハッハ！！！」」　12

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「さぁ！　メンドス！　その二人を殺せッ！」GILが叫んだ。「力のない奴らは強者に屈するのだ！　ファーハハハッハハ！！」メンドスさんが巨大鎖鎌を構え、私に近づいてくる。「メンドスさん……！」手を振りほどこうにも、ギルドのみんなが相手だ。無茶はできない。万事休すだ。　13

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もうメンドスさんは目と鼻の先だ。「メンドスさん、思い出してください……！」私は一生懸命に訴える。「私たちは仲間じゃないですか……！」「……」「それを……斬るなんて……」「……」巨大鎖鎌が振り上げられる！「いいぞメンドスッ！　やってしまえェーッ！」GILの囃子が飛ぶ。　14

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「誰が誰に……屈するって……？」「へっ？」「……『デス・グロック・クラッカー』！」鎖鎌が私の頭上を空ぶった。鎖鎌から衝撃波が飛び、GILとMADSに直撃する。二人の頭が弾け飛び、ライアくんのときと同じように、血が噴水のように迸って渦を巻き、メンドスさんの鎧に吸収されていく。　15

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『WIN!』という文字が、でかでかと空中に浮かび上がった。私を掴んでいた手が緩む。ギルドのみんなの洗脳が解けたのだ。「勝った……？」報酬品がジャリンジャリンとアイテムボックスに放り込まれていく。「勝った、の……？」vivid_rabbitも、ぼうっとした様子だった。　16

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「ああ、勝ったさ」メンドスさんがヘルムを外した。「倒してやった。二人まとめてな。スッキリしたぜ」「メ……メンドスさぁ～～～ん！！！」「うぉ！？」私とvivid_rabbitは、思わずメンドスさんに抱き着いた。「離れろ離れろ！　落ち着けお前ら！」「一体どうやったんですか！」　17

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「あぁ……お前らにはちゃんと説明しとこう、お前らのおかげでもある」「私たちの……？」「まぁみんな座ってくれ」私と含むギルドのみんなは、その言葉通りに大人しく地面に座る。少しぬかるんでるけど、まあ、問題ない。メンドスさんはコホンと咳をした。「ミスベムランサーを覚えてるか？」　18

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ミスベムランサー。忘れるはずがなかった。私とvivid_rabbitが疎遠になっていたとき、ギルドのみんなが手配して、私をvivid_rabbitと会わせてくれた。そのとき出てきた巨大モンスター。それがミスベムランサーだ。あいつとの戦いを経て、私たちは元通りの友達になれた。　19

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「あのとき、あいつの麻痺毒に随分苦しめられただろ。だから、俺は状態異常耐性を上げることにしたんだ」紫色の鎧をコツンと叩く。「こいつはあらゆる状態異常を俺の体から吸い取る。あのときミスベムランサーに会わなかったら……お前らの仲直りの手伝いをしてなかったら、この鎧はなかった」　20

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「そうだったんですか！」驚きの事実だ。「じゃ、今回勝てたのは、私たちが仲悪くなってたおかげだったってことですね！」「ま、そういうことだ。……ってお前、自分で言うのか、それ！」「へへ」「lilyknight、ふざけすぎ……」vivid_rabbitは少し拗ねてしまったようだ。　21

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「ま、ともかく、二人のおかげで、今回も危機は救われたってことだ！　みんな、二人に拍手を送ってやってくれ！　今夜のショーのメインスターに、スタンディングオベーションだ！」メンドスさんがそう言うと、ギルドのみんなは、次々と立ち上がって拍手を送ってくれた。なんだかこそばい。　22