ビー・ギブアップ・オール・ホープ　＃1

えみゅう提督 @emyuteitoku

「イヤーッ！」「アバーッ！サヨナラ！」チェルノボグのチョップにより、胴を両断されエレファントは爆発四散！「イヤーッ！」「アバーッ！サヨナラ！」コールドレインのコリ・チャクラムがエレファントの首を切断、宙を舞う首が断末魔を上げ爆発四散！1

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「イヤーッ！」「グワーッ！」ライオンハートのアッパーでエレファントが打ち上げられた。無防備なエレファントにナバルがすかさず主砲を発射！「イヤーッ！」「アバーッ！サヨナラ！」エレファントは爆発四散。立て続けの三隻撃沈！ゴウランガ！2

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だが、見事なワザマエを見せる味方の活躍の中、スクトゥムはやや不機嫌であった。「エレファント、エレファント…なんでどいつもこいつも揃いもそろってゾウさんなんだよ！」ディープオーダーの面々に襲い掛かる深海棲艦は、違う艦種、違う顔、同じ名前、異質なイクサであった。3

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西方の海岸にミサイル発射基地が設置されたという不穏な噂。その真偽を確かめるべく西方海域を訪れたディープオーダーは、アンダーテイカーが発見した巨大な運貨筒を引きずる輸送艦を追っていた。しかし、彼らの前に立ちはだかったのは、一様に同じ名前の深海棲艦達。4

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「ぬう…」ライオンハートは悔し気に唸る。敵に統率された動きはない、統一された姿ではない、ましてクローンでもない。「何故同じ名でアイサツする！お前達にも、自分の名とカラテがあるはずだ！何故己を捨てたのだ！」名という個を奪う卑劣な行為を彼は許せなかった。5

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六隻の同じ名前の深海棲艦は、最初のアイサツの際に、タンソウホウ・クランに属すると語った。皆、何かに怯えたような目をしていた。彼女達と比べれば死んだ魚の方がまだ生気があるだろう。彼女達は、上に立つ何かにエゴを押しつぶされた、この者達は、誰かに虐げられている。6

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「君たちを虐げる者は一体何だ。教えてくれ！」ライオンハートの悲しみが篭る声に、残る三隻のエレファントはイクサの手を止める。そして、一隻がゆっくりと歩みを進めた。「ドーモ、ライオンハート＝サン。エレファント改め…コランダムです。何故己を捨てたのか、それが質問だな」7

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進み出たエレファント――コランダムは光のない瞳でライオンハートを見返した。「簡単だ。穴が開いたのだよ、体にも、心にも。そして、世界に穴が開くのを見たのだ」「穴…。できることならば、私は君の心に開いた穴を埋めたい」ライオンハートはコランダムに手を差し出し握手を求めた。8

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仮にもイクサの最中だというのに、ライオンハートの勧誘癖を見てナバルは眉間に拳を置く。「何もこんな時に始めなくても…スクトゥム？」こういう時に普段なら真っ先に呆れ顔を見せるスクトゥムは思考を巡らせ、記憶を辿ろうと首を傾げていた。「コランダム…何か聞いたことが――あっ！」9

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スクトゥムのニューロンが記憶を引き上げた。「ジュエルマスター・コランダム！」「知り合いか？」コールドレインが視線を投げかける。「知り合いじゃないが、ムテキ・アティチュードの使い手としちゃ憧れのタツジンさ。大西洋を拠点とするとは聞いていたが、お目にかかれるとはな」10

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「お前がそこまで熱を入れるということは相当な強者なのか？」とチェルノボグが問う。「もちろんテンサイ級の使い手よ！ジュエルマスターのルベウス、サフィルス、コランダム。んで筆頭のダイアモンド＝サンは全身ムテキのまま動くことができるってんだからスゴイのヤバイの！」11

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力を入れて語るスクトゥムとは対照的に、他の面々の表情は浮かない。「私にはそうは見えんのだが…」「なにぃ！」コールドレインの苦言にスクトゥムは素早く食い掛る。「嘘はいてねえ！ジュエルマスター達は超硬質の鉱石でできた艤装をさらにジツで硬化するタツジン…なんだけどよ」12

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スクトゥムは改めてコランダムの姿を見た。鉱石製の艤装は彼女の両手に確かにある。だがその大部分が鋭利に切り取られたように無くなっていた。スクトゥムの話が聞こえていたのか、いつの間にかコランダムの視線はスクトゥムへ向いていた。「一人抜けているぞ。エメリーもいた」13

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「あ、ああそうだった。ジュエルマスターにはエメリー＝サンも…いた、って何で過去形なんだよ？」「懐かしい名だ。言葉にしてくれてありがとう。これでようやく――絶望できるだけの心が戻った！イヤーッ！」コランダムは両手の小さな艤装を投げ捨て、自らの胸に手刀を突き刺した！14

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「バカな！」ライオンハートは差し出した左手を強張らせる。「なぜ、なぜだ！コランダム＝サン！」「アバッ…師がやってくる。君達はあんなものがこの世に存在することなど、知らなくていい！この海から逃げるんだ…留まる理由があるのなら、せめて絶望するだけの心は残せ！サヨナラ！」15

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コランダムは爆発四散！ライオンハートは左手を硬く握りしめる。「何たる非業…断じて許せん。エレファント＝サン！師とは一体――」ライオンハートは残る二隻のエレファントにコランダムの言葉の意味を問おうとしたが、エレファント達の視線は明後日の方角へ向いていた。16

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自然とその場にいる全員の視線が、同じ方角へと向いた。皆の視線の先で、茶色の塊がこちらに向かって爆走している。「グヌオオオ！無事か団員達よー！」全力疾走しながら叫ぶのは全身に剛毛を生やし、腰蓑からはみ出した巨大な砲身を屹立させるル級…っぽいような深海棲艦である！17

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「何か来たー！」「変態だ！」「ある意味一番ゾウさんだな」ディープオーダーが各々の感想を述べる間に変態がエレファントの元に突っ込んだ！「Ｄｏｓｓｏｏｉ！！」「アバーッ！サヨナラ！」一隻のエレファントが変態と激突しアワレ爆発四散！荒い鼻息を上げる変態はそれに気付かない。18

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「ナント！無事だったのはお前だけか！？」「ああその――」「一人でも生き残ってくれたのは嬉しいぞ団員よー！」エレファントが変態の丸太めいた腕に抱きしめられ、岩壁のような胸板に押し付けられた。これではただのサバ折りである！「アバババ！サヨナラ！」エレファントは爆発四散！19

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こうして六隻のエレファントは姿を消し、残ったのはでっかい剛毛ゾウさんだけだった。「貴様ら！よくも団員達を！」「三分の一お前のせいだから！」疾風めいたスクトゥムの指摘！巨躯であってもやはり軽巡、実際速い！混沌としたアトモスフィアを整理すべくライオンハートが踏み出した。20

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「ドーモ、ライオンハートです」ライオンハートのオジギを見て、他の面々も続いてアイサツする。「ドーモ、チェルノボグです」「ナバルです」「コールドレインです」「何なんだこのバカは…ドーモ、スクトゥムです」ディープオーダーのアイサツを受け、変態バカは勢いよく白い息を吹いた。21

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「ムフー、アイサツか。その作法はボスから聞いている。戦いの合図だな。いいだろう――ドーモッ！」変態バカの両腕が太く膨れ上がり高く掲げられた。「俺の名はッ！」スクトゥムを越えるその巨体がさらに強調される。「マンモスですッ！」マンモスが取ったポージングは、オリバーポーズ！22

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『オリバーポーズ』それは伝説のボディビルダー、セルジオ・オリバーが創始した伝説の名に相応しい美しいポージングである。美しいがアイサツには特に関係ない。自慢の肉体を見せつけるマンモスを余所にチェルノボグがライオンハートに耳打ちする。「レオ、こいつではないようだな」23

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チェルノボグが言うのは、タンソウホウ・クランの『師』なる者の事だ。ライオンハートは小さく頷く。「ああ、どうみても上に立つ器ではない。だが…」ライオンハートはマンモスの体を観察する「エレファント＝サンの末期の爆発を密着して受けたというのに、一切損傷がない。油断ならん」24

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マンモスはライオンハートの視線に気づいたのか、ポージングをサイドチェストへと切り替える。「グフー、見惚れたか？触ってもいいぞ。俺の筋肉の硬さは、あの石ころ共とは比べ物にならんぞ？」石ころ、その言葉にスクトゥムが反応した。「待ちな！その石ころってのは聞き捨てならないな」25