Extra super moon
頭痛が段々酷くなってくる。近づいてきている証拠だ。ずきずきする頭を押さえながら、不思議な魔女は水盆が波打つのを眺めている。体内の水分までもがざわつくのが判る。大きな月が満ちる。19年に一度のExtra Super Moon。このタイミングを逃してなるものか、と。 #twnovel
2011-03-19 08:38:40満月を追ってお散歩しよう、と彼女が言い出した。東へ、南へ、そして西に向かって。「明るくて迷わないね」コンビニで買った缶チューハイを呑みながらふらふらふらりと彼女は月夜の街を泳ぐ。「ほら、えくすとらすーぱーむーん! で、ここは何処?」前にもこんなことがなかったか? #twnovel
2011-03-20 03:08:45箒に乗ったままだとおちおち酔いも出来ないので、不思議な魔女の月見は魔女的な風流さには欠けるのかも知れない。満月の夜の仕事は全て終えた。万端。廃ビルの屋上で東北の一升瓶を開ける。一杯目はそっと静かに祈りを捧げて。あとは、杯に月を浮かべながら。肴は西へとゆらり行く。 #twnovel
2011-03-20 03:17:50いつも恥ずかしいから電気を消せと言う彼女に黙って、暗い部屋のカーテンを引いた。南向きで良かったね、と囁く。電気は点けてないよ。いつもより近い月光に照らされる白い肌が徐々に朱に染まっていく様が、化学反応でも見ているようでとても楽しい。乱れたシーツの跡すらも淫らだ。 #twnovel
2011-03-20 03:25:1219年に一度の満月なんだって。深夜に外に飛び出した人たちはみんなぽかんと空を見上げている。こんな夜は誰でも魔法使いになれるような気がする。手にした携帯電話をいじる慣れた手つきすら照らされて。「今夜は月が綺麗ですよ」たったそれだけのメールすらも魔力を帯びるようで。 #twnovel
2011-03-20 03:32:19暗闇を駆逐するような眩さで、月が不安に揺れる人たちを静かに明るく照らしてくれますように。俯いている人の顔を上げさせてくれますように。ただそこにいてだけでいいから。何だ、あなたと同じだ。だから安心出来るんだ。どうしてこんな大事なことに今まで気づかなかったんだろう。 #twnovel
2011-03-20 03:47:41