アーマードコアみたいな艦これを書きたかった

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

『…世界を破滅させるのは、人間自身だ 人間に可能性なんて、存在しない…』 #今夜の川内裏

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

『戦域に到達 …これより、作戦行動を開始します』 耳元からは聞き慣れた女性の声 『…敵艦隊を確認、目標の南西諸島侵攻の中核艦隊です』 肉眼では何も見えない彼方に緑のコンテナが６つ浮かぶ 『…状況、開始』 #今夜の川内裏

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

川内が足に力を込めるとくるぶしにマウントされた機関が甲高い吸気音を上げ、身体が前に飛び出した 『システム、スキャンモード』 腕部内に埋め込まれたコントロールユニットから身体の各部神経に張り巡らされた光ファイバが川内の意思を汲み、自動的に視界が切り替わる #今夜の川内裏

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

宵闇の、肉眼では薄暗かったはずの風景が緑に明るく光り、多段ズームで敵旗艦を自動追尾 『…戦艦リ級です 敵は大口径の主砲を装備しています』 データリンクにより自動的に割り振られた目標へ隷下の駆逐艦達が向かうのを確認すると、川内も敵戦艦へと再度集中する #今夜の川内裏

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

『機動力を生かした攪乱戦法が有効です』 脳内で響く20代中盤のいかにも仕事のできるキャリアウーマンめいた合成音声に従い、体重を左足へかける その左足の神経細胞からの電流は直ちに機関の推力比を変更 左舷の電磁推進装置が唸りを上げた #今夜の川内裏

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ちょうどスキーのモーグルのように波間に華麗な鋭角が刻まれた 『(ﾋﾞﾋﾟｰｯｯ)ロックされています 回避してください』照準用レーザー感知警告を受けすかさず軸足を変え右へ転進 再度左へ取り舵、両舷全速直進… ジグザグ航法で弾着の水柱の中を舞う #今夜の川内裏

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『(ﾃｨﾛﾃｨﾛ ｯﾋﾟｰｰｰ)システム、戦闘モー…』 射程に入ったことを告げるブザーが鳴り響くと同時に川内は単装砲を構え、まだボイスが終わらないうちに斉射を始めていた 『…左腕部１から４番砲、残弾70％、右腕部射出機に被弾、耐久… 左腕部同残弾、60％…』 #今夜の川内裏

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視界の右下に白く写る７門の主砲の模式図の、残弾数を告げる数字がみるみる減っていく 右腕で敵弾を防ぎつつ川内の左腕からは、釣瓶撃ちされる曵光弾の航跡が身をよじる蛇のように薄暗闇の空へと伸びていく 『…敵艦、耐久50％』 #今夜の川内裏

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『腰部一番魚雷に被弾、耐久70…(ﾋﾞﾋﾞｯﾋﾞﾋﾞｯﾋﾞﾋﾞｯ…ﾂﾋﾟｰ)』川内は被弾を省みずにマスターアームスイッチを切り替えた 魚雷発射管からは圧搾空気を生み出すコンプレッサーがｶﾞ…ﾀﾞ、ﾀﾞ、ﾀﾞﾀﾞﾀﾞ…と唸りを上げる #今夜の川内裏

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『全弾の発射は危険です 自動的に発射数の変更を…(ﾋﾞｰ) …全弾、発射』 ﾊﾞｼｭｼｭﾝ…と撃ち出される魚雷と腰椎から背骨全体を揺らすかのような独特な衝撃 酸素魚雷を積まない川内からは真っ白な８条の雷跡が延び… 『…敵艦の撃破を確認』 #今夜の川内裏

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『…システム、スキャンモード 友軍に損耗が広がっています …全目標の撃破を確認 システム、通常モードへ移行します 戦果を確認しますか？』 水晶体内にレーザーで映し出されるディスプレイを確認すると、川内は全艦へ帰還命令を発するのだった #今夜の川内裏

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「当然の結果ね！ いいのいいの、そんなに誉めなくても！」 執務室に戻ると川内は満面の笑みをうかべた 「ああ、すごい戦果だ 大したもんだよ」 提督も机上のディスプレイに映る、戦闘の録画映像に顔を綻ばせた 「川内も今や立派な軽巡だな」 #今夜の川内裏

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その言葉に川内はエッヘン！と腰に手をあて胸を張る 「まあまあ、私に任せといてよ！」 「ああ、だがまずは修理と補給を… お、おい!?」「大丈夫だって、まだ小破判定だから！」そう言うと川内は提督専用サーバーから、また新しい出撃任務をダウンロードする #今夜の川内裏

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「それじゃ、また行ってくるね！」「ああ、気を付けてな」「大丈夫、死んだりしないよ！」川内は腕の艤装を誇らしげに見せる 「これがある限りね！」そう言って執務室を飛び出していった …後にこれが、警備府に惨劇とそれ以上に残酷な真実をもたらすとも知らずに… #今夜の川内裏

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「…あれ、おかしいな…」 廊下を歩きながら川内は突如、違和感を感じ足を止めた 「なんだか、艤装の調子が…」 ﾃｨﾛﾘ…ｯﾋﾟｰ! ﾃｨﾛﾘ…ｯﾋﾟｰ! と何度か、主兵装と雷装を切り替えてみる …が、動作が妙に重い やがて視界にも妙に砂嵐様のノイズが入り出した #今夜の川内裏

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

「ああもう、オーバーホールかなぁ…」 やむなくスキャンモードを起動し、ドップラーレーダーだけを頼りに進む 「工廠は確か… あれ？ なんで…!?」 川内の視界には砂嵐の中に、いるはずのない敵を示す赤いコンテナ #今夜の川内裏

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「まさか、警備府内なのにそんなハズ…!!」 だがレーダー上にも敵を示す光点はどんどん増えていく 「どういうこと!?」 システムエラーなどの異常を示す通知も無く、視界には謎のジャミング… …考えられる可能性は１つ 「…敵の侵攻か!!」 #今夜の川内裏

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「どういうことだ!?」「わかりません、いきなり敵が現れて…キャアアアア!!」執務室の机上にある無線からは、前線と化した警備府内からの報告と砲声がひっきりなしに響き渡る 「こちら正面ゲート、背後からも敵が…!!」「増援はまだなの!?」 #今夜の川内裏

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

「提督、全ての場所に増援は…」臨時指揮所となった執務室で神通が静かに口を開く「…まずは武器庫、ついでここと兵舎だ」 提督は静かに警備府の見取り図を指し示す 「ここと、ここ… ここにも防衛戦を構築する」「…了解しました 部隊を随時後退させます」 #今夜の川内裏

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

「…一体、なぜこんなことに…」 提督は静かに立ち上がり、戦場と化した自らの住処の様子を窓から苦々しく睨んだ 「…深海棲艦というのは、何なのだ…!!」 #今夜の川内裏

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「ええい、何なのよ!?」 川内はアスファルトを走りながら、今日何人目になるのかもわからない駆逐艦へトドメを差す 「コイツら、ドンドン湧いてくる…!! これじゃキリが…」 その時 『…(ｯﾋﾟｰ!)』 「…新たな指令？」 #今夜の川内裏

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

視界の右上にあるレーダーに、目標座標までのビーコンとそれらを結ぶ輝線が浮かぶ 「なるほど、そういうこと…」 『…敵情報を更新』 視界に浮かぶ新たなコンテナ 『殲滅せよ』 「…了解!!」 川内は輝線に従い走りながら、単装砲の斉射を再開した #今夜の川内裏

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

「ダメです、撤退中の友軍が…!!」神通の悲痛な声 「防衛戦までとても持ちません!?」提督が見るディスプレイには既にいくつもの、艦娘の死亡を告げる×印がついていた 「…仕方がない」 提督は最後の決断をした #今夜の川内裏

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

「神通、この部屋にいる二水戦を連れて、前線の那珂を援護してやってくれ」「しかし、それでは!?」「…俺のことは構うな」カタカタとキーボードを打ちながら応える「そんな、できません!!」「…命令だ」ッターン、と無情なエンターキーの音が鳴り響き #今夜の川内裏

魚・大湊川内提督／警備府隊の隊長 @dzurablk

神通の視界に浮かぶ防衛対象を示す青いコンテナが、提督の上から消え去った 「そんな… 提督…!!!」「さあ、早く行け」 それは嗚咽を漏らす神通に向けての、提督の最後の命令だった #今夜の川内裏