オラクル・オブ・マッポーカリプス #7

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ひどい味にカヤシダは呻きを殺した。ケツァルカトルは己の指に傷を入れ、その血によってコトブキとカヤシダの額に丸印を描いた。「汝らは一時的にこの聖殿に留まる事を赦された」彼は手を広げ、兵士達を見渡した。どよめきとチャントが応えた。「オオオンニンジャ!」「オオオンニンジャ!」21

2017-08-13 22:54:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ひとまず助かったか」カヤシダがコトブキに囁いた。「オオオンニンジャ!」「オオオンニンジャ!」チャント!LEDボンボリの光が強まり、ひととき空洞の背後にある何かを照らした。それが闇の中に垣間見えたのはほんの一瞬であったが、カヤシダは恐慌にとらわれかけた。「アイエエエエ!?」22

2017-08-13 22:58:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これは!」カヤシダの見開かれた目の見たものを追って、コトブキもそのときそれを視界に入れた。彼女の暗視視界はより精細にそれをみとめた。岩壁に半ば埋まるようにして、ラオコーンめいた苦悶の表情で凍りつく、全長20メートル超の石化したニンジャの姿を……! 23

2017-08-13 23:01:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「石像、石像、石像」カヤシダは頭を抱え、うずくまって、機械的に唱え続けた。「精緻な石像。古代文明。おかしくない。俺は狂ってない、俺は狂ってない、俺は狂ってない」「大丈夫ですか!」コトブキが背中に手を当てた。「大丈夫……平気だよ……!石像なんだ!」「儀式は成れり!連れてゆけ!」24

2017-08-13 23:04:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ぼ……僕らをどこへ……」「地下牢だ!」繰り返されるチャントの中、連行ゲリラ兵がカヤシダの腕をグイと引いた。「謁見は終わりだ!畏れ多いぞ!」「ア……ア……地下牢……貢献しているはず……医療行為だって……」「設備は運び込む。問題なく医療行為させる」「彼女はどうするつもり……」25

2017-08-13 23:11:48
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「神聖娼婦に向いているのでは。オイラン医療行為だ」兵士は神がかって言った。「だめです」コトブキが言った。「自我が……自我があるんだ」カヤシダは朦朧としながら言った。「オイランドロイドは君たちよりずっと腕力もある。殺されるだろう」「ケツァルカトル=サンの御神託次第だ。歩け!」26

2017-08-13 23:18:13
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カゴーン!さらなる深層まで歩かされた二人は、同一の狭い玄室に放り込まれ、鉄格子を降ろされた。そこにはフートンもない。壁にはやはり神がかった蛍光チョークの壁画があり、1秒たりとも落ち着かせはしない。「畜生。まるで留置場じゃないか」「実際捕虜ですから」コトブキは残念そうに言った。27

2017-08-13 23:23:29
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「奴らは狂っているが……ある種の信頼関係が築かれていた……その筈だったのに」カヤシダは言った。「裏切られた気分だ。待遇は悪化した……」手で顔を覆い、思い出したようにコトブキを責めた。「なぜ君はそんな風に平気なんだ!」「大丈夫!なぜなら、わたしは一人で来たわけではないからです」28

2017-08-13 23:27:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「一人ではない?」カヤシダは眉をひそめた。そして声のトーンを落とした。「仲間も……ええと……ウキヨなのかい?」「いいえニンジャです」コトブキは首を振った。「きっと無事です」「ニ……ニンジャってのは凄いが」カヤシダは呑み込みきれない情報に慄きながら、「居場所がわからないだろう」29

2017-08-13 23:35:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「たぶん大丈夫です」コトブキは言った。「今ははぐれていますが、最終的に目的地はこの"アンデスの虎"の本拠地になるわけですから。何故なら……」「何故なら?」「エット」コトブキは答えを飲み込んだ。ケツァルカトルを殺しに来るブラスハートを狙っているのが我々なのだ、とは言えなかった。30

2017-08-13 23:40:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カイル・オズモンド=サンについてご存知ですか」コトブキはひらめいて、尋ねた。「カイル=サン?カイル上級社員?」カヤシダは驚いて聞き返した。「ウチの偉い社員だよ。会ったことはないが、社内報でよく……君、詳しいんだね?」「その、オムラ要塞に同船していて……カイル=サン」31

2017-08-13 23:46:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「カイル上級社員が?どうして?」カヤシダは訝しんだ。「わざわざ要塞に?え……なんだかよくわからないな」「そういうものですか?」「上級社員が最前線に?何しに?いや、君に聞いたところで答えは得られないわけだけど……」「心配の度合いが強いとか」「ううん」釈然としないようだった。32

2017-08-13 23:50:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お知り合いではないと」「そうさ。でもいいんだ」カヤシダは言った。「とにかく突入してきた奴らに誤射される前に社員IDさえ確認させる事ができれば、どうとでもなる。我が社はオムラ・エンパイアとは同盟関係だし……ハア……」「元気を出してください」「君の事は……どうしたものか」33

2017-08-13 23:58:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カヤシダは考え込んだ。「社員IDやどこかの市民権があるわけでもないし、こういう時ってどんな扱いになるのか」「心配いりません。お気遣いありがとうございます」コトブキは頭を下げた。カヤシダは苦笑した。「ベラベラ喋る奴だって思ってるだろう。許してくれ。話の通じる相手に飢えてたんだ」34

2017-08-14 00:01:59
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こういう時は希望を捨てない事が大事です」コトブキは励ました。「歌を歌いましょうか!わたしは歌えますよ、何曲もおぼえています」「いい、いいよ」カヤシダは制止した。「見張りがいるに決まってる」「ほっとけばいいんですよ!ボスにお伺いを立てないと何も決められないんですから!」35

2017-08-14 00:09:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コトブキは立ち上がり、本当に歌い出した。「アー、良い電気メンテナンス、電気で……ア!」コトブキの歌が止まった。彼女は鉄格子の向こうに立つ赤黒のニンジャを見た。彼女はカヤシダを見て、にっこり笑った。「ほら、大丈夫」「随分遠くから聞こえて来たぞ」ニンジャスレイヤーは言った。36

2017-08-14 00:17:23