オラクル・オブ・マッポーカリプス #7

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【オラクル・オブ・マッポーカリプス】#7

2017-08-13 21:17:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:サンズ・オブ・ケオス創始者ブラスハートの情報を掴んだニンジャスレイヤーは、彼が参加するナスカ・プラント制圧ミッションの途上にあるオムラ空中要塞メガスゴサに潜入した。ブラスハートはムテキとチャドー呼吸を操る極めて強力なニンジャであり、苦戦する)

2017-08-13 21:20:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(イクサの決着がつかぬまま、第二飛行甲板は地上からの対要塞攻撃を受けて崩壊。ニンジャスレイヤーは地上に落下する。用具室でオムラのマスコット、オムーの着ぐるみを入手して行動していたコトブキは、最終的にジェットパックを確保し、落下するニンジャスレイヤーを見事に助けた)

2017-08-13 21:21:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(このまま無事に地上へ着地できれば順調と言えたところだが、対空砲弾を受けたコトブキは墜落。機能障害から復帰してみると、そこは野戦病院めいたテントであり、彼女の介抱をしたのはクラバサ社の医療社員で、現在は捕虜だという。つまり彼女ははからずも、ゲリラ組織「アンデスの虎」の懐にいる!)

2017-08-13 21:27:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「奴らはまともじゃない」医療社員……カヤシダは外を気にしながら囁いた。「確かにオムラ・エンパイアのやり方は客観的に見て相当ひどいとは思うよ。僕も驚いてる。あんな会社に就職はごめんだね。奴らもまともじゃない。だけど虎の奴らも同じさ。現地の人間を解放する為の戦い?そんなワケあるか」1

2017-08-13 21:31:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「プラント建設で家族を失ったり、追い出された人達をまとめているのでは?」「勿論そういう奴らが喜んで合流した。だが皆、後悔しただろうな。いや、狂ってしまえば平気か。悲しいね」「それはケツァルカトル=サンとかいうリーダーがひどいのでしょうか?」「ああ、そうさ。ガム食べる?」「はい」2

2017-08-13 21:35:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガムを噛むコトブキを、カヤシダは不思議そうに見つめた。「食べ物も人間と同じなのかい」「わたしはそうですね。それで、ケツァルカトル=サンはどんな悪さを?」「ああ。奴はインヘニオ谷のエメツ鉱山が聖域であると主張している。ニンジャの化石があり、侵犯してはならない。で、侵犯者は殺す」3

2017-08-13 21:40:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ?化石?」「だろ?ナンセンスだ!ナンセンスな理由で人を殺す!ナンセンスな理由でイノベーションを停滞させている!」カヤシダは手を広げた。「エメツは夢の資源なんだ。オムラがおかしくたって、そんなニンジャ伝説ブルシットで何もかも台無しにされたらサラリマンはやっていけない!」4

2017-08-13 21:44:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「エメツとは何なのでしょう?」「ん?専門外の人には…そうだね。ええと、月破砕年を期に世界中から産出されるようになった鉱石さ。これ」カヤシダは首飾りの石を見せた。光を一切反射せず、目の錯覚めいて黒い石だ。「触媒、反重力、エネルギー源、移動ポータル、電子ネット。無限の可能性がある」5

2017-08-13 21:48:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なぜ急に掘り出せるように?」「磁気嵐……電子的な事象が物理世界に影響を与えた副産物らしい。当時はノイズ風なんていう事件もあった。子供心に多少覚えている。月も割れた。10年経って、学者レベルでは解明も進んでいるのかな……実際に有用な資源を目の前に、結果を待ってなんかいられない」6

2017-08-13 21:53:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ミステリアスですね」「君のように自我のあるオイランドロイドの出現というのも、あの月破砕年の大異変に関係しているのかもしれないね……」カヤシダは黒い石を手に、少し考え込んだ。そういうタチの人間のようだった。「貴方はここで医療行為を?」「そうさ。だけど、きっと社が助けに来る」 7

2017-08-13 21:59:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうかもしれません」「虎はカタナ社の助けを得ているが、オムラの要塞まで出てくれば話が違って来る。制空権はすぐ獲られる。じきにこの地上が戦闘になる」カヤシダは緊迫した表情に戻り、「絶対に生き残って、クラバサ社に復帰してみせる」「愛社しているのですね」「他に頼れるものが無いのさ」8

2017-08-13 22:02:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ううん……」コトブキは曖昧に頷いた。オムラ部隊はブラスハートと共に降下作戦を強行した。この医療社員にとっては、彼らが頼みの綱ということになる……「オイ」テントの入り口に新たな人影。アサルトライフルをカヤシダに向け、コトブキをじろりと睨んだ。「スパイか。そいつ。何かわかったか」9

2017-08-13 22:07:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オムラとは関係がないようだ。オイランドロイドに過ぎないな。出自はよくわからないが雷神エンブレムもない」「頭を壊してニューロンチップかなにか取り出せば、どうだ」「それができる施設も無いだろう?カタナに引き渡すならまだしも」「……とにかく来い。出ろ」ゲリラ兵は二人を促した。 10

2017-08-13 22:10:28
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何処に向かう?」「ここは危険が多い」ゲリラ兵は銃で空の巨大な影を指した。メガスゴサ。流れ星めいた対空・対地砲撃が垣間見える。「鉱山内に移動する」(ひとまず僕に任せて)ゲリラ兵の後をついて歩きながら、カヤシダはコトブキに唇の動きで伝えた。コトブキは無言で頷いた。11

2017-08-13 22:14:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「神聖な場所に入れてもらえるなんて光栄だね」カヤシダは皮肉めかして言った。ゲリラ兵は振り返らず言った。「その通りだ。これもニンジャ神の恩寵であり、ケツァルカトル=サンの寛大かつ崇高な決断である」「崇高な、グッドトリップの煙とか……素敵なんだろうな?」「ややこしい言葉はやめろ」12

2017-08-13 22:17:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カビ臭い坑道を照らすのはLEDボンボリライトだ。壁にはごく最近描かれたとおぼしき蛍光チョークの壁画がどこまでも伸びている。危険なヘビめいた存在の長い身体と、ドゲザする人の列である。「どこまで連れて行く?」「聖殿の解放は異例だ。まずは儀式を行う」「儀式」カヤシダは溜息をついた。13

2017-08-13 22:22:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「危害は加えないでくれ。僕はいなくなれば困るのは君達だぞ。僕が君達何人の命を救ってきたか考えるべきだ」「それはケツァルカトル=サンがお決めになる事だ……!」オオオオン……オオオオン……坂を下るほどに、唸りが明確に聞き取れるようになってきた。風の音ではない。儀式チャントだった。14

2017-08-13 22:27:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

不意に通路がひらけた!コトブキは目を見開いた。驚くほどに高い天井部。巨大な空洞だった。採掘用のクレーンや仮設エレベータ類はそのまま放置されていた。空洞の奥には急ごしらえの祭壇じみた台が組まれ、それを囲んで、ゲリラ兵たちがチャントを唱えながら、繰り返しドゲザしていた。 15

2017-08-13 22:30:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

出迎えた格上の者にゲリラ兵がオジギし、カヤシダとコトブキを引き渡した。その者が先導すると、兵士たちが脇にのいて道が生じた。コトブキは暗視視界で見渡す。兵士の人数は二百人弱。これで全部ではなかろうが、実際小規模。「来たか」よく通る声。台上の者の目が光った。「参れ。こちらへ」16

2017-08-13 22:34:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ!」コトブキが呟いた。とてつもないアトモスフィアを感じたのだ。南米遺跡めいた衣装のニンジャ装束をまとったその者こそ、このゲリラの指導者、ケツァルカトルであった。「上がれ!異邦の者らよ!」ふたりは顔を見合わせ、大人しく従って、台の階段を上がった。 17

2017-08-13 22:37:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

近づくと、ケツァルカトルの迫力は増し、カヤシダは脂汗を流し、震えだした。「その……儀式というのは……」「この地に非信仰者を迎え入れるには決断とディープ瞑想を必要とした」ニンジャは言った。「だがカヤシダ=サン、お前は実際、戦力として無視できぬ。護らねばならぬ。苦渋の決断だ」 18

2017-08-13 22:41:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なるべく穏便に……」「飲め!」ケツァルカトルは司祭ゲリラ兵に命じ、壺から盃に液体を汲ませた。カヤシダは激しく震えた。コトブキが割って入り、「わたしが先に」と言った。「例の……落下して来たとかいう奇妙なオイランドロイド」ニンジャは目を細めた。「よかろう。貴様にも赦しは必要也」19

2017-08-13 22:45:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コトブキは目を閉じ、カヤシダが制止するのを待たず、盃の液体を口に含むと、それをグイと呷った。コトブキは口を拭った。「ハーッ……発酵したヤギミルクの類ですね。成分に問題ありません」「問題だと?」「わ、わかりました」カヤシダが慌ててコトブキの後を引き取り、盃を飲んだ。20

2017-08-13 22:50:12