自分用メモ2017年8月期

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桑名銀天 @silverheaven_sk

「今日は赤いボトルが欲しいんです」 「ほらよ」  店主はカウンターの下に手を突っ込むと小さな鍵を投げてよこした。 「フェス中だってのにあんたも物好きだな……っておいおい!」  私の後ろにいる二名を見るなり顔が青ざめる。 「一体どういう関係なんだお嬢さん」 #レメモな日々

2017-08-13 18:38:09
桑名銀天 @silverheaven_sk

展示ブースなのでサークル検索には出なかったけどフランスの同人誌コーナーもなかなか見応えがあった。で、気になったのがこのNekoloco!って漫画。33匹の異能力猫と同居って絶対面白いに決まってる。 pic.twitter.com/yNAL1pXHyz

2017-08-13 19:29:54
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桑名銀天 @silverheaven_sk

「『純血』の魔王とか『背反』の魔王とかいう二つ名は誰が考えてるん?」 「後世の歴史家がつける場合と、生きているうちに自然とついた二つ名である場合があるようです。『破廉恥』の神獣さん」 「オチを先取りせんといて!」 #レメモな日々

2017-08-14 15:30:51
桑名銀天 @silverheaven_sk

店の中には酔いつぶれた客が数人。賑わっていたら大混乱になっていただろう。 「昔なじみです」 「お嬢さん本当は何者なんだ?」 「普通の天使ですよ」 「イザークを連れて歩けるのが『普通』だって?」 「料理はお酒さえ出さなければお任せします」 「話聞けよ」 #レメモな日々

2017-08-15 11:59:59
桑名銀天 @silverheaven_sk

店の奥にある階段を降りて、地下通路に灯りを点ける。奥は行き止まりで、向かって右に錠前付きの扉が三つ並ぶ。その一つをもらった鍵で開けて、二人を促した。中には十人は座れる大きなテーブルがある。 「このような窮屈な場所で申し訳ないですが、どうかご容赦ください」 #レメモな日々

2017-08-16 15:31:58
桑名銀天 @silverheaven_sk

「随分とこちらに馴染んでいるようですね」  それは侮蔑か慨嘆か憐憫か憎悪か、その透明な声色からは分からなかった。 「先程の店主との口ぶりもそうですが、『赤いボトル』という合言葉はこの密会用の部屋のことを言っていたのですね」 「はい、ここは常連専用の部屋です」 #レメモな日々

2017-08-17 11:49:06
桑名銀天 @silverheaven_sk

「常連にこのような密室が必要なのですか?」 「魔界のことわざに『女三人寄れば姦しい、男三人寄れば悪だくみ』というのがありまして、要するに人に知られず密談をするための場所です。魔界らしいですね」 「アルドベリクはこのことを知っているのですか?」 「もちろんです」 #レメモな日々

2017-08-18 10:17:54
桑名銀天 @silverheaven_sk

「知っていながら放任していると?」 「どこの国もそうだと思いますよ。こんな逸話があります。ある魔王が、国家転覆を狙う輩を消すべく、疑わしき者や施設を次々と破壊していました。ところが間もなくその王は国民の蜂起によって殺害されてしまったのです。これは何故か―― #レメモな日々

2017-08-19 10:13:30
桑名銀天 @silverheaven_sk

――答えは単純です。その弾圧がかえって領主への反発を煽ったからにほかなりません。自らの衝動や欲望に忠実であることを是とする魔族は、行動を制限されることを何よりも嫌います。規制するくらいなら放っておく方がむしろ安全なんです、こと魔界においては」 #レメモな日々

2017-08-20 15:36:23
桑名銀天 @silverheaven_sk

「もっとも」とイザーク様。「並の魔族が束になったところでアルドベリク一人にすら敵うまい」 「悪だくみというのも言葉の綾みたいなもので、時代錯誤になりつつあるのは否めませんね。人に聞かれては困る話をする場は常に需要があるのでそこは残ったんです」 #レメモな日々

2017-08-21 15:15:41
桑名銀天 @silverheaven_sk

もっとも二人を連れてきたのは、聞かれたくない話をするためではなく、祭りの喧騒の中で話をしないためだけど。 「それで姉さん、何なんだ、さっき言ってた懲罰っていうのは」 「先日、イアデルの政治の記録を漁っていた時のことです」 テスタメントの件で色々調べたんだろう。 #レメモな日々

2017-08-22 13:36:50
桑名銀天 @silverheaven_sk

「第八次魔界遠征軍のリストに、レメモ、あなたの名前がありました。これは事実ですか?」 「イアデル様は下っ端まできちんと記録を残されたんですね。そうです、その先遣隊の中に私はいました。魔界を視察し、また宣戦布告を出す、そういう役割の小隊でした」 #レメモな日々

2017-08-23 10:41:53
桑名銀天 @silverheaven_sk

役割としては限りなく斥候に近い。 「当時の私は記録官、戦争や政治の内容を書類として遺し管理する役職にありました」 おそらく、テスタメントの存在を歴史から消し去ったのも当時の記録官の仕事だろう。それを私が暴くのだから、何とも奇妙な縁を感じてしまう。 #レメモな日々

2017-08-24 16:20:50
桑名銀天 @silverheaven_sk

「つまりは非戦闘員じゃないか。それなのにお前が引っ張り出されたのは、当時それだけ消耗していたということか?」 「逆です。私自ら志願しました。報告書によって内容に矛盾や穴があって統合的な情報が手に入らなかったのです。それを埋めるために視察が必要でした」 #レメモな日々

2017-08-25 13:32:44
桑名銀天 @silverheaven_sk

「そこは危険な仕事ではないのですか?」 「魔界の狙いはあくまで聖王の首。斥候を、ましてや武装すらしていない数人を屠ったところで手柄にも、ましてや聖王へのダメージにもなりません。魔族はそこまで愚かではないのです。それまでこの部隊が傷つけられたことは皆無でした」 #レメモな日々

2017-08-26 00:12:27
桑名銀天 @silverheaven_sk

「話が見えないな」イザーク様がじれったそうに言う。「そこから親父のやったという処罰にどう繋がるんだ」 「その遠征では、私達は捕虜にされたのです。天界の情報は向こうも欲しかったのでしょう、解放の条件にそれを要求し、私は命惜しさに洗いざらい魔王に教えました」 #レメモな日々

2017-08-27 00:10:18
桑名銀天 @silverheaven_sk

どんな罵声を浴びせられるのかと思っていたら、さすが異界を治める王だけはある、態度や口調に感情を露わにすることはなかった。これが二人が生まれる前の出来事であり、イアデル様がもう清算したことを理解しているからこそだろう。 「裏切った理由は本当に命惜しさだけか?」 #レメモな日々

2017-08-28 10:31:00
桑名銀天 @silverheaven_sk

「どういう意味でしょう」 「お前のことだから別の理由があったと思っただけだ」 「仲間が目の前で殺されていったので、このことを持ち帰り報告しなければならないと考えたのもあります。とはいえ実際に帰れたのは相当後のことでしたし、報告どころではなかったですが」 #レメモな日々

2017-08-29 10:56:15
桑名銀天 @silverheaven_sk

「それで嘘の情報を流した、って話じゃないのか?」 「話したら即天界に戻れるという保証はなく、デタラメを言ったことがバレた場合に状況が悪化する危険性もあったので偽りなき事実を話しました。もちろん下っ端のフリをして情報は選びましたけど。それでもイアデル様は―― #レメモな日々

2017-08-30 15:53:23
桑名銀天 @silverheaven_sk

――密告者の存在に感づいていたそうですから大したものですね」  そうして生き延びたは良いものの、しばらくの間私は監禁されていた。 「危うく殺されそうにもなったのですが、すんでのところでとある権力者に助けられました。クロア・ドラク卿。クルス様のお父上です」 #レメモな日々

2017-08-31 12:21:13