燭へし同棲botログ：長谷部と！

燭へし同棲bot @dousei_skhs

蓋を開けてみれば、単なる勘違いからの擦れ違いだったらしい（しかも光坊が十割悪いのではなく、長谷部にも少しは非があったという）が、その事件の後日、男前な顔を腫らした光坊が「伽羅ちゃんはだめだ、怖い」と呟いていたとかいないとか。

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まあ数年経った今は、その後に出来たご縁プラス長谷部が可愛いもの同士で仲良くなっているから、結果オーライ？　というやつだろうか。 「──つるまる、おおくりから」 「！」 「！」

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今までカウンターに突っ伏して沈黙を守っていた長谷部が、突然口を開いた。伽羅坊の言うようにもう限界が近いのか、いつも凛々しい表情と口調が、幼子のようにふにゃふにゃしている。 「んー？　どうした」 「……なんだ」

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今の俺たちの話を聞いていたのだろうか。酔っ払って惚けているのだろうか。どちらでも構わないが、ここで戻すのだけは堪忍してくれよ、なんて悠長に構えていたところに。

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「……いつもありがとう、すきだ」 普段ならまず聞くことの出来ない言葉を放り投げ、んふふと笑った。

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「……」 「……」 「……何に対しての礼だ？」 「知るか」 「だって俺まだ、光坊についてひとつも喋ってないぞ」 「俺もだ」 「……」 「……」 「すきだってさ」 「……」 「んふふ」 「気味が悪い」 「えっ！　長谷部が？」 「あんたが」 「お前はちょいちょい酷いな？」

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伽羅坊は「ふん」と言って後ろを向いた。そのとき左腕の刺青をそっと撫でたのを、俺は見逃さなかった。──知らぬは本人ばかりで、長谷部も光坊も気がついているだろうが、あれは伽羅坊の照れ隠しだ。……酔っ払いの戯れ言でもなんでも、長谷部の口からでた「すき」が、よっぽど嬉しかったんだろう。

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まあそれは俺もだが。実は素直なのが、長谷部のいいところだ。 「なあつるまる、鶴丸」 「うお、なんだ。どうした」 「もう一杯だけ」 やがて微妙に復活したらしい長谷部が、俺の服を引いてきた。これだけ酔ってもまだ飲みたいとは恐れ入るというか、愚かというか。

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「んー、そいつはいけない」 「…………」 「いい子だから。な、ノンアルコールにしておけ」 肩をぽんぽんと叩けば、長谷部はしぶしぶ「わかった……」と頷いた。実は素直なのが、長谷部のいいところだ。二回言っておく。

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「よしよし。──伽羅坊、長谷部に何か作ってくれないか」 「ああ……」 少しして、伽羅坊の手によって長谷部の前にグラスが置かれた。 ……これは、色からして“シンデレラ”だろう。またまた、可愛いものを。

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「んふふ、伽羅坊～」 「なんだ」 「お前も可愛いな！　素直じゃないだけで」 「声がでかい。黙れ」 「俺には何かくれないのか」 「そら」 「わあ、ただの水だ。有難う」 「うるさい」 「ふふ」 仰る通りうるさくしながら隣に目をやると、長谷部も俺たちを見ながら静かに笑っていた。

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（……、だめじゃないか光坊） これは推測だが、長谷部が光坊の過去を知りたいと思ったのには、何かきっかけがあるんだろう。それは些細なことだったかもしれない。けれど長谷部は酒の力を借りてまで、俺や、おそらくは伽羅坊からも、過去の光忠のことを聞こうとした。

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光坊、光坊。過去よりも未来を見せてやるのが、恋人の甲斐性ではないのか。大事にしているのは胸やけするほどわかっているが、最近は少し詰めが甘いようだぞ。 俺は光坊にそんな叱咤の意味も込めて、美味そうにグラスを傾ける長谷部と、その様子を優しく見つめている伽羅坊にこっそりスマホを向けた。

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「……よし」 「……なんだ、つるまる」 「ん？　なんでもない」 隠し撮りにしてはいい写真が取れたので、俺は早速通話アプリを開いて、光坊の連絡先を表示させた。今撮れたものを添付し、送信する。

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──さてさて、どんな反応が返ってくるか楽しみだ。 自慢してやろう。そして焦るがいい。 光坊。お前の大事な長谷部くんには、俺たちの前でしか見せない、こんなに可愛らしい一面もあるんだぞ。 【了】

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【管理人より】夜分に失礼いたします。お久しぶりです。燭へし……燭へし……？　というような内容になってしまい申し訳ありませんでした。さて、次回はようやく二人を揃える予定をしております。よければまたお付き合いください。それでは、明日からもまたよい燭へし日和を！

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ちなみに更新は年末を予定しています。よろしくお願いいたします。