磯部准教授（京都大学）による、太陽フレアの地球への影響とそのメカニズム概説

磯部洋明 ISOBE Hiroaki @isobehiroaki

フレアの規模を表すのにXクラスとかいう言葉がありますが、これはX線強度のピーク値を表す指標です。より詳しく言うと、GOESというアメリカの気象衛星が測っている波長が1〜8ÅのX線強度です。

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「通常のX線レベルというのはその時でている黒点の数などに依存して変わるのですが、大まかにはCクラスで通常の10倍、Mクラスで100枚、Xクラスで1000倍です。アルファベットの後の数字が大きくほとX線ピーク値は大きいです（対数表記）。

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GOESクラスはフレアで解放される全エネルギーの大体の指標となりますが、継続時間が違えば全エネルギーも異なり、また全エネルギーが同じでも、どれほどの高エネルギー粒子やCMEが出るかは異なります。（緩い相関はあります）

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さらに、放出された電磁波、高エネルギー粒子、CMEは異なる指向性と伝播経路を持つので、同じクラスのフレアでも地球への影響は様々です。まず、電磁波はあらゆる方向へ等方的に出て、宇宙空間をまっすぐ進むので、太陽のこちら側で起きれば影響は同じです。

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当たり前ですがX線などの電磁波は光の速さで進むので、見えた瞬間にもう届いています。つまり、電離圏異常など電磁波由来の影響に対応するには、フレアの発生そのものを予知しない限り、発生しても大丈夫なように備えおくという以外は原理的に無理です。

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一方CMEは、有限の大きさを持った塊なのである指向性を持って放出されます。イベントにより異なりますが、ざっくり90度くらいの範囲。なので、太陽の中心付近で起きたフレアからのCMEに比べ、昨日のもののように太陽の端から出るCMEは地球へ影響与えにくいです。

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CMEは大体1日から2日くらいかけて地球へ到達するので、発生した時点で速度や規模、方向を観測し、それらを初期値とした数値シミュレーションを行うことなどにより、地球への影響をある程度事前に予測することが原理的に可能であり、そのような研究が盛んに行われていて、実用化もされてます。

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一番ややこしいのが高エネルギー粒子です。高エネルギー粒子は太陽面のフレアでも生成しますが、そこから飛び出すCMEが作る惑星間衝撃波でも作られので、フレア発生からCMEが地球の方に飛んでくる間もずっと生成され続けます。

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次に生成後の伝播ですが、まず速度はほとんど個々の粒子のエネルギーに依存しますがほぼ光速に近いです。ただし電磁波と違って等方的には進まず、惑星間空間（太陽風）中の磁力線に沿って進みます。

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なので地球に高エネルギー粒子が届くかどうかは、粒子の生成（加速という方が正確ですね）場所と地球が磁力線で繋がっているかどうかで決まります。

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後で時間あったら図もつけますが、太陽風内の磁力線は、太陽系の自転のため、回転軸側（「上から」または「北から」と言ってもいいですが）からみたらスパイラル状になっています。このため、地球から見て太陽の真ん中より少し西側（右側）に寄ったフレアの方が高エネルギー粒子はきやすいです。

磯部洋明 ISOBE Hiroaki @isobehiroaki

太陽の西の縁（右端）付近で起きた昨日の二発目のXフレアが、CMEによる磁気嵐はあまり起こさなかったけど高エネルギー粒子はかなり多かったのには、このような理由があります。