磯部准教授(京都大学)による、太陽フレアの地球への影響とそのメカニズム概説

京都大学の磯部准教授(太陽物理学、宇宙プラズマ物理学、宇宙総合学)による解説
天文 太陽フレア コロナ質量放出 CME
SubaruTakeshima 5369view 1コメント
84
ログインして広告を非表示にする
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 11:39:33
    今回起きたようなXクラスと呼ばれる最大級のフレアでは、大体10の25乗ジュールくらいのエネルギーが解放されます。これは核兵器のエネルギーを表すのによく聞くTNT換算だと約2x10の15乗トンで、広島型原爆にして1000億個分くらいです。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 11:42:03
    なのでものすごいエネルギーではあるのですが、太陽が主に可視光線として定常的に放出しているエネルギーは毎秒約3x10^26ジュールなので、最大級のフレアの全エネルギーの数十倍ものエネルギーが常に可視光線として出ています。つまり太陽が放出する全エネルギーに比べると大したことないです。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 11:45:30
    なのになんで地球への影響が大きいかというと、一つには、放出される「全エネルギーは大したことない」けど、「一つ一つの高いエネルギーをもった粒子(紫外線、X線、プロトンなど)」の形でエネルギーが放出されるからです。これらの高エネルギー粒子は、地球の高層大気で吸収されるので
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 11:48:21
    地球高層大気を電離(原子・分子から電子を引きはがしてプラズマ状態にすること)させます。プラズマがあると電波が通りにくくなるので、衛星通信やGPSなどの衛星測位に障害が出ます。これによって地上の通信機器に直接影響が出ることはありません。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 11:51:37
    あと、高エネルギー粒子やX線や宇宙空間にある衛星に直接ダメージを与えることもあります。太陽電池の劣化、深部帯電による電子機器の故障、メモリのビットを反転させることによるソフトウェアエラーの他、高層大気が膨張するので空気抵抗が増加して衛星の姿勢や軌道が乱されるケースもあります。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 11:55:51
    電磁波(X線・紫外線、電波)、高エネルギー粒子以外に太陽フレアから放出されるのが、コロナ質量放出(Coronal Mass Ejection: CME)と呼ばれる、磁場を帯びたプラズマの塊です。これは1日から2日かけて地球に飛んできて、固体地球が持つ磁場=地球磁気圏と衝突します。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 11:58:26
    コロナ質量放出の持つ磁気エネルギーと運動エネルギー(この二つはざっくり同程度です)が地球磁気圏に取り込まれて、磁気嵐やオーロラが起きるのですが、このメカニズムは実は非常に複雑で、分かっていないことも多いです。中学生程度の物理で分かる直感的な説明として僕がよく言うのは、
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 12:02:51
    太陽から来る電気を帯びた粒子(プラズマ)の塊が、地球磁気圏を押したり揺らしたりして、磁場が変動します。磁場が変動すると電磁誘導で宇宙空間に電流が流れるのですが、この電流を担うのが磁気圏中のプラズマで、プラズマは磁力線に沿ってしか動かないので、地磁気の磁力線の根本である南北の極域へ
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 12:04:52
    つっこんでいって大気と衝突して光らせるので、高緯度地域でオーロラが見える、というものです。もちろん色んなことをはしょってるので正確な説明とは言えませんが、太陽から来た高エネルギー粒子が直接大気を光らせているのではないということです(そういう成分もごく少しはあるでしょうが)。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 12:08:33
    「プラズマは磁力線に沿ってしか動かない」のがなぜかというと、中学校で今も習うはずの?フレミングの左手の法則というやつで、磁場中を電気を持った粒子が動く(=電流が流れる)と、磁場とも電流(粒子の運動)とも垂直に力を受けるので、プラズマの粒子は磁力線の回りをぐるぐる回ります。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 12:10:26
    一方磁力線と平行にプラズマ粒子が動いても力を受けることはないので、結果としてらせん状に回りながら磁力線に沿ってのみ動く、ということになります。

  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 18:45:58
    今回のフレアは通常の1000倍の、という説明がメディアに出てて、間違ってはないのですがもすこし正確に言うと、フレアのピーク時の軟X線の強度が、フレアが起きてない時の軟X線強度の1000倍くらいという意味ですね。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 18:49:47
    フレアの頻度分布は地震と似ていて、小さいものは高頻度に起き、大きいものは少ないです。専門的に言えばベキ乗分布というもので、「典型的なフレアの強度」というものはありません。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 18:54:02
    フレアと地震は、ゆっくりと蓄積されたエネルギーがある時突然解放される現象であることも似ています。フレアの場合は磁場のねじれとして、地震の場合は地盤のひずみとして。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 18:57:19
    なので、地震の場合に、断層や南海トラフなどここはエネルギーが溜まっていて危ないということがわかるように、フレアの場合も、この黒点は磁場が強くねじれていてフレアを起こしやすい、ということはある程度言えます。が、それがいつ、どのくらいの規模で爆発するかを正確に予測するのは困難です。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-08 19:01:29
    それを、過去の大量のデータから機械学習で予測できるようにしようという研究が最近盛んで、日本だとNICTの西塚さんや、先日急逝した村主崇行さんがされてました。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-09 00:24:05
    今日の宇宙ワイン会でも話ましたが、今回程度のフレアは11年周期の太陽活動サイクルごとに何回かは起きるもので、人類の歴史くらいの時間スケールでみれば全く珍しいものではありません。ただ、我々の文明の方が、人工衛星や電力グリッドなど、太陽活動に対し脆弱なインフラへの依存度を増やしてます
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-09 00:27:19
    このために、かつては災害ではなかった現象が災害になってます。今後、例えば衛星測位を利用した自動運転など衛星利用が社会にさらに浸透すれば、太陽活動への脆弱さは一層増すことになります。

  • Yuta Notsu @astronomy_stars 2017-09-08 13:09:16
    この機会に改めて宣伝。 柴田先生が監修で、柴田先生に加え、西塚さん・三宅さん・村主さん・自分が記事を書いています。 twitter.com/astronomy_star…

  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-12 10:28:36
    昨日の「地球防衛家のヒトビト」にまで太陽フレアネタが載り、さらにもう一発Xクラス起きたので、 togetter.com/li/1148662 に追加してもうちょっと解説します。
  • 磯部洋明 @isobehiroaki 2017-09-12 10:42:33
    前にも書きましたが、フレアから放出されるものには大きくわけて以下の3種類があります。電磁波(X線、UV、マイクロ波など)、高エネルギー粒子(主にプロトン)、それに磁場を帯びたプラズマの塊(コロナ質量放出、以後CMEと呼びます)。それぞれ伝播速度や地球への影響が違います。

コメント

カテゴリーからまとめを探す

「ボカロ」に関連するカテゴリー

ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする