【ロールプレイ】ジュニパーVSアルテン

へなちょこさん:ジュニパー(暗殺者) とらにが:アルテン(騎士)
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アルテン @arutenWM

夜風が目に沁みる。月のある星空。 王都の、入り組んだ石畳と煉瓦の壁。 その中に一人だけで、アルテンは佇んでいた。 「王は、民を愛し始めている  ならば、私は王、そして宦官殿の期待に応えるしかない」 心はざわめきながら、瞳に星を映していた 此処こそ、国王の寝所への隠し通路だ

2017-09-06 10:32:34
ジュニパー @as_Juniper

──なるほど。 どこまでも、変わり映えのない煉瓦作りの壁が続くだけの、王都の一角。 あえて、そのように作られているのだろう、誰の印象にもさして残らぬ、単調なこの景色の中に……白銀の騎士が、1人。月の灯りの中に、佇んでいる。 ──奴の言っていた「入り口の目印」とは、このことか。

2017-09-06 13:23:16
ジュニパー @as_Juniper

『隠し通路が、反政府軍に知られた可能性がある』 そんな情報を、彼らは入手したはずだ。信頼と、発言の権利を持つ立場の人間から。いままで末端の見回り衛兵すら留まりもしなかったこの場所に、あの『目印(おとこ)』が立っているのが、何よりの裏付けだ。 まずは、奴の策は功を奏したと言える。

2017-09-06 13:23:24
ジュニパー @as_Juniper

ジュニパーは、闇を見透かす猫の目を細め、男を眺めた。 ずいぶんと長いこと、ここにこうして立っているように見受けられる。わずかに星を見上げる姿勢のまま、彼の体幹は振れることもない。 ──計りかねる。隙がないのか、それとも立つことに集中しすぎて隙だらけなのか。……勝てるか?

2017-09-06 13:23:33
ジュニパー @as_Juniper

──愚問だ。 自問自答。そして、即答。黒猫は嗤う。 「……にゃお」 するり、木陰から彼の前に姿を現したのは、まだ一歳に満たないように見える、幼猫と成猫のあいだのような、細身の黒猫だった。

2017-09-06 13:23:48
アルテン @arutenWM

猫。それに嗤われた気もした 鳴き声は、可愛い 「猫か。獣に言葉が通じるとは思えぬが、念のためだ」 大剣を取り、切っ先を向ける そして、低く抑えた声で吼えた 「ここは、通れぬ。道を変えろ  でなくば、あなたを斬らねばならぬ」 鬼。王からの信用を守らねばならぬ、騎士(おに)だ

2017-09-06 14:15:38
ジュニパー @as_Juniper

ぎょっとした。 「……にゃー」 人懐こく鳴いてみせ、取り繕う。 この男……正気か!? こんな360度どこから見ても可愛らしいこのわたしに、剣を向けるというのか!? ふん……どうやら白銀の鎧は伊達ではないらしい。実にみごとな自制心、といったところか。

2017-09-06 18:55:33
ジュニパー @as_Juniper

「なーん」 てこてこと、甘えた声で歩み寄る。 無防備な足取りで、白銀の騎士の足元へ、大剣の間合いの内側へと、潜り込もうと、てこてこと。 さあ、今すぐその足にスリスリしてくれよう!我が可愛らしさに身悶えるがいい!その剣の構えを解き、わたしに隙を見せた瞬間こそが、貴様の最期だ!!

2017-09-06 18:55:42
アルテン @arutenWM

油断ではない。騎士(アルテン)は、闇の業と縁遠い。高潔でなくとも、人の良心は持ち合わせていた。 だからか、そんな暗殺者に、『想像が及ばなかった』。 「獣よ。それでは困る  私は、無垢を斬れる人間ではない」 猫の首元に剣を宛てがい、眉尻を下げた。……大剣の内側に、猫は居た。

2017-09-06 19:48:59
ジュニパー @as_Juniper

斬る心算のない剣を首筋に当てがわれようと、愛撫も同じ。 薄く小さな桜色の舌で、月明りに白く輝く刃を、ぺちょ、と舐める。 「なーん」 黒猫は、大剣の間合いの内側へ。 スルリ、細い尾を騎士の足鎧に滑らせて。 くるり、くるり、足元を廻る。 ──死角。

2017-09-07 08:13:00
ジュニパー @as_Juniper

チリッ まるで冬の空気に走る微細な稲妻のような光が、一筋。 『急速に変化する細胞』の摩擦による静電気が、黒猫の毛並みを逆立てる。 否。『それ』を猫と呼ぶには、あまりに異質。 粘質の水音。 爆ぜるように形を変えた『それ』は、黒衣に身を包む赫い瞳の娘の姿をしていた。

2017-09-07 08:16:27
ジュニパー @as_Juniper

自らの脚のあいだを背側に抜けた死角から、突如として出現する刺客。 この、およそ想定外の一撃に反応を返すことができた相対者は、今までに数える程しかいなかった。 ──さて、この男は? 黒い刀身の細身の剣。 毒塗りの刃。 白銀の鎧の継ぎ目。 左腕の付け根へと、鋭く差し込まれようと。

2017-09-07 08:16:52
アルテン @arutenWM

鎧を鮮やかに縫い、差し込まれる黒き刃。鮮血が飛び散る。 「暗殺者なんだな、君は  猫だったのに」 心底がっかりした声。 「なおさら、王に会わせる訳にいかなくなった。信を裏切るのを好む者は、ここで斬る」 紫に変色を始めた、肌。顔は変色して、上気している。

2017-09-07 10:15:12
アルテン @arutenWM

白銀の間を狭め、細い黒剣を捕える 「一つ言っておく。  あまたの毒を遣い獣を狩り、多様な毒虫に囲まれた山岳部族である、ナタリシャ族。そのもっとも優れた戦士である、私、アルテンには、  『致死毒が直ぐには効かない』」 大剣を右腕のみで持ち上げ、背後にも及ぶよう頭上で振るった

2017-09-07 10:23:07
ジュニパー @as_Juniper

人間の反応速度では避けようのない、死角からの必殺の刺突。 ──風を読み、それを避けた盲目の射手がいた。 ──時を繰り、それを止めたエルフの賢者がいた。 ──呪を纏い、それを弾いた老齢の魔術師がいた。 しかし──この黒剣の毒を受けてなお、振り向く者など、いなかった。

2017-09-07 13:31:06
ジュニパー @as_Juniper

目と目が合う。 本能が告げる。 ──跳べ。 タァン!と石畳を鋭く蹴り、黒衣の娘は夜空に身を踊らせる。 幾度となく狩りを共にした片腕たる黒剣は、躊躇いもなく手放して。 その判断は正しかったようで、深く刺さってはいない筈の黒剣は、持ち主を失ってなお、男の左腕に捉われている。

2017-09-07 13:31:14
ジュニパー @as_Juniper

──山岳の支配者、ナタリシャ族。 毒を使う暗殺者ならば、知らぬ者はいないだろう。 優れた薬草学知識と山岳を駆ける強靭な肉体を併せ持つ、少数狩猟民族たち。 この大陸で知られている毒と薬の8割以上は、ナタリシャ族から盗まれた秘伝から生まれたとすら噂されている。 それが、なぜ……!?

2017-09-07 13:31:21
ジュニパー @as_Juniper

「ナタリシャの戦士が何故、この国に味方する」 空中で、しなやかに体躯をひねり、舞い降りる。 「──8年前、政府は貴殿ら少数民族を『異分子』とし、排すると定めたのではなかったか」

2017-09-07 13:31:29
アルテン @arutenWM

「思い出話になるが。  私の王は、辺境でひっそりと空虚に生きていた。寄生虫に体を蝕まれてな。その頃は迫害すらされぬ真の孤独だ。それでも、病魔に勝たれた」 黒剣を抜き、暗殺者の足元へ投げる。そして、思い出話を続けた。 「だからこそか。誰もが認めざるをえない王位を目指したのだ」

2017-09-07 14:51:59
アルテン @arutenWM

左腕の鎧を、魔力で弾き飛ばした 「王位を奪うには、力がいる  そこで、迫害される異分子達の自衛組織「自警団」と、王は手を組まれた」 口に溜まった血を、ぷっと地面に唾捨てる 「三日で、自警団は先王を討ち、王座奪還は成った  暗殺された先々代国王の妾腹による、王座奪還劇だ」

2017-09-07 14:52:33
アルテン @arutenWM

「それが、五年前。国内でひっそりと、しかし華やかに行われた新王就任の事実だ。……私たちの王は、異分子階級を廃止した」 大剣を構え、周囲に光を浮かべる。 光属性。そして、剣技。それが、手札なのだろう 「少し明るくなったな。君の剣を取れ。正々堂々と戦おう」 暗殺者の耳に騎士道。

2017-09-07 14:53:42
ジュニパー @as_Juniper

赫い眼を細め、男の話に耳を傾ける。 なるほど、ずいぶんと……興味深いことだ。 5年前に先王が倒れたのは、戯れの狐狩りに耽るさなかでの不慮の事故と聞いていた。自分を含め、殆ど全ての国民が、そうだろう。

2017-09-07 19:15:01
ジュニパー @as_Juniper

さらには、先王の遠い血縁である新王は異分子階級を廃止することで、彼らからの支持を得んとしたと、そう聞いていたが…… ……まさか、異分子階級の少数民族の長自身が、この大国の王に着いていたとは。まさに、事実は小説より奇なるものだ。

2017-09-07 19:15:09
ジュニパー @as_Juniper

王の代替わりが国土の端まで届く頃には、次の王が位に着くとすら嘯かれるこの大国だ。おそらく、この国がいまや彼らナタリシャ族の支配下にある、という真実を知る者は、男の言う『自警団』の構成員をのぞけば、ごく僅かなのだろう。 多くの民にとってそれは、知る必要のない事実だ。

2017-09-07 19:15:17
ジュニパー @as_Juniper

──では、『わたしの客』は、このことを知っているのだろうか? ──ああ、これも愚問だ。 『客』の考えることなど、わたしが思い巡らせる必要はない。

2017-09-07 19:15:25