臆病な剣士

自分用まとめ。藤沢先生なら「臆病剣~~」という題名をつけて、ここからもっと話を広げられるのだろう。私も文章力を磨いたら、この話はもっと広げてみたい。(もっとも「臆病剣松風」という作品は存在し、これとは違う展開を見せている)
0
にゅい @lanuit2012

予想よりは長く眠れたけれど、昨日の疲労度から考えると、まるで少なすぎる。ただ、非常に興味深い夢をみたので、書き留めておこうと思う。

2017-09-28 05:10:58
にゅい @lanuit2012

時代は分からない。私は虚空に浮かぶ正体のない「耳」で、ある場所に留まって、二人の人物のやり取りを聴いているだけの存在。場所は剣道場らしい。そこで、腕を上げつつある門弟と、師範代とのやり取りが何度も交わされる。私はひたすら、それを聴いているだけ。

2017-09-28 05:14:05
にゅい @lanuit2012

この道場では珍しくもないことらしいのだけれど、門弟が稽古の際に、後輩を徹底的に叩きのめして、あやうく怪我をさせるところだったらしい。そこへ師範代がやってくる。師範代は何も言わない。ただ、咎めているような雰囲気は感じられる。門弟も、それは感じ取っている。しばらくの沈黙。

2017-09-28 05:15:45
にゅい @lanuit2012

「私は」やがて門弟が口を開く。「怖くてならないのです。暗い場所が。自分に剣気を向けてくる相手が。怖くて、怖くて仕方ないのです。ただ暗いというだけで、夜もろくに眠れません。」そこで言葉はぷっつりと途切れる。師範代は、何も言わずに去っていく。咎めもせず、励ましもせず、無言で。

2017-09-28 05:17:47
にゅい @lanuit2012

それからどれほどの月日が経ったのか、門弟の剣は穏やかになり、後輩たちに怯えられることもなくなった。師範代がまたやってくる。門弟も居ずまいを正して、師範代と向き合う。前より幾ばくか門弟は落ち着いており、師範代も何か変化があったのかね、と聞きたそうな様子だ。

2017-09-28 05:20:27
にゅい @lanuit2012

「近頃私は思うのです。」門弟が口を開く。「剣を学ぶということは、暗さを恐れなくなるということではないか、と。暗さに怯えず、心安んじて眠れる術を学び取る、ということではないか、と。引いてはそれが対峙する相手を無用に恐れないことであり、無用に傷つけないことなのではないでしょうか。」

2017-09-28 05:22:22
にゅい @lanuit2012

「私は、相手の剣気を恐れすぎた。」門弟が独白を続ける。「だから私の剣は相手を無用に傷つけた。しかし、今は前ほど傷つける必要を感じません。」師範代は黙って聞いている。「もし私がさらに鍛錬を積んだなら、いかな暗闇の中でも心安んじて眠り、相手を傷つけることもなくなるのかもしれません。」

2017-09-28 05:25:11
にゅい @lanuit2012

「私は臆病なのです。」ぽつりと門弟はもらす。それを聞いていた師範代は、しばらく無言であったが、やがてその場を去った。門弟は独り暗がりに残される。彼はじっと暗闇を見ながら、やがて口を開いた。「以前ほどには恐ろしくない。」

2017-09-28 05:41:47
にゅい @lanuit2012

ただこれだけの夢だったけど、これは私の夢だ。してみれば、あの門弟の言葉は私の言葉だったのだ。実は、私も暗いのは怖い。怖いからこそホラーゲームが好きなのであり、ホラーゲームをプレイする時、私は自らの心の深淵をわざわざ覗きに行っているよう心持ちさえする。

2017-09-28 05:44:55
にゅい @lanuit2012

怖いからこそ凶暴になる、というのは、とてもよく分かる理屈だ。鍛錬によって自信をつけ、暗さや、対峙する相手の剣気を恐れなくなった、という彼の言葉も、言葉以上に身に沁みて分かる。なんだか、藤沢周平先生の小説のような夢だったな、と思う。きっと為になるから、残しておこう。

2017-09-28 05:47:40
にゅい @lanuit2012

付記しておくと、夢は主に聴覚だけで物語が進んでいた。視覚で捉えていたのは、物語とまったく関係のない風景。一番最初に住んでいた実家の台所の暗がり。一本の小さな蛍光灯で照らされた、薄暗い風景。それは固定カメラのように微動だにせず、夢の間、ずっと続いた。

2017-09-28 05:55:40
にゅい @lanuit2012

この風景が何を意味するかは何となく分かるが、ここでは語らないでおこう。あえて言うなら、あの光景は私の弱さの原点のひとつであり、かつ弱さを(手段は間違ってはいても)克服する過程を象徴する光景でもあった、ということ。あとは恵さんに話してみよう。

2017-09-28 05:57:04