ビフォア・ザ・ストーム・ゴーズ・アウェイ #2

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

NINJA SLAYER PLUSより【ビフォア・ザ・ストーム・ゴーズ・アウェイ】#2 pic.twitter.com/BaD1mbKBNC

2017-10-09 22:00:59
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◆あらすじ:極寒のドサンコ・ウェイストランドでタワーマンションが超自然の影に覆われた。その原因となったのは女子高生ニンジャのアンブラ。暗黒メガコーポ各社の調査チームが到着すれば、住民の巻き添えは必至。緊迫する状況の中、アンブラの前へ突如、シャドウウィーヴと名乗るニンジャが現れる◆

2017-10-09 22:06:56
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「ドーモ、シャドウウィーヴです」男は機先を制するようにアイサツした。長身で体格は良い。濡れたアスファルトを思わせる灰色のニンジャ装束の上から、煤けた厚手のテックコートを羽織っている。首元にはライダーゴーグル。顔はフードに隠され、年齢はよくわからない。 1

2017-10-09 22:07:34
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二十代、あるいは三十代だろうか。少なくともティーンエイジャーの雰囲気ではない。ニンジャに外見的年齢などという概念があればだが。 2

2017-10-09 22:09:45
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「ドーモ、アンブラです」彼女は本能的にアイサツを返した。そう、彼女はニンジャだ。そしてこの男もまたニンジャだ。直感的にわかる。アンブラはこの謎の侵入者を睨みつけると、威嚇するように手をかざした。彼女の足元で、深い影がざわめいた。 3

2017-10-09 22:11:10
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「私に関わらないほうがいいと思うけど?」「そういうお定まりの台詞はいい」 シャドウウィーヴはあまりにも無防備に歩み寄る。アンブラの心臓は早鐘を打った。両手を広げ、彼女に対して攻撃意図がないことを示す。サイバネか何かか、片腕は不自然に黒く、その輪郭だけが影のように不吉に揺らめく。4

2017-10-09 22:15:00
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「いいか、俺はお前の同類だ。敵じゃない。警戒を解け。そして今すぐこのジツをおさめろ」「ジツ?」この男が自分の妄想の産物かどうか、まだ少しだけ思案しながら、アンブラは片眉をつり上げる。男は返した。「お前の今使っているジツだ。ニンジャのジツ。このマンションを包み込んでいる影だ」 5

2017-10-09 22:19:50
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「嫌」アンブラは警戒しながら、鼻で笑った。「なぜだ?」男は立ち止まり、小さく首を傾げた。「やっと使い方が解ってきたのに、止める気はない。このままこのマンションを全部覆い隠してみる」「何のために?」男は片手を差し出して問う。「別に。私の力なんだから、私が好きに使っていいでしょ?」6

2017-10-09 22:24:14
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アンブラは男の要求をはねのけたことで、次第に気分が良くなってきた。「それで?全部覆い隠したら次はどうする?」「さあ?バルコニーにでも出て、歌ってみるとか」彼女は無軌道に笑う。「その次はコロニー全部を、それからドサンコを包み込んでみようかな。この世界は私のものだって伝えるために」7

2017-10-09 22:27:45
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「いい加減にしろ、お前は目立ちすぎだ」彼は首を横に振り、頭を掻いた。そして再び歩み寄る。「暗黒メガコーポの突入チームが来るぞ」「その言い方、イラっとする。それに、何もわかってない」アンブラは急激に不機嫌になった。そして凶暴に嘲笑った。「私、暗黒メガコーポの奴らだって倒せるよ?」8

2017-10-09 22:32:12
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「…わからせてやる。イヤーッ!」次の瞬間、室内の影という影から薔薇の蔦めいた黒い腕が伸び、シャドウウィーヴを拘束せんとした!上がってきた暗黒メガコーポのマッポ部隊を始末したのは間違いなくこのジツであろう!「イヤーッ!」シャドウウィーヴは跳躍、壁を蹴り、四連続側転でこれを回避! 9

2017-10-09 22:35:30
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さらに着地と同時に影の腕を左手で引っ掻き、クナイ生成!側転しながらそれを投擲!アンブラは咄嗟に身構えた。刃物を投擲されるのは生まれて初めてだ。だが男の投げたクナイは彼女の体をかすめ、足元の床に突き刺さった。「外れだね!バカ!」アンブラは笑い、腕を振り、再び影を操らんとする。 10

2017-10-09 22:38:38
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だが、できなかった。彼女の体は彫像めいて麻痺していた。クナイを回避しようとした不自然な姿勢のまま、全身の筋肉が硬直。「何だ…これ……!?動けない!」「シャドウピン・ジツだ。お前はもう動けない。いいか、よく聞け、氷雪嵐が晴れるまでにお前のジツを制御し、騒ぎを収めろ。さもないと」11

2017-10-09 22:41:57
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「クソが……!私に説教でもしに来たのか!」アンブラは歯を食いしばり、精神を集中した。直後、彼女は自分自身の影を制御した。相手のクナイに縫い止められた己の影を強引に動かし、室内の光に向かって逆に投影し、カナシバリを脱したのである!「どうだ!?」彼女は息を荒げて得意げに言った。 12

2017-10-09 22:45:51
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「かなりのソウルだな」「死ね!イヤーッ!」アンブラはカナシバリから自力で脱すると、床に転がるバットを拾って飛びかかり、力任せに殴りかかった。まるで猛獣だ。ニンジャソウルの力が解放されたばかりで、精神が不安定なのだ。だがバットが命中する直前……シャドウウィーヴは闇に消えた。 13

2017-10-09 22:48:59
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攻撃目標を失ったアンブラはそのまま闇雲に攻撃を繰り出した。バットはいつものように、壁に立てかけられたストレス解消用木人を虚しく打つだけだった。「ザッケンナコラーッ!どこ行きやがった!?」アンブラは狼狽し、傷だらけのバットを握り、周囲をカラテ警戒した。敵の姿はどこにも無かった。14

2017-10-09 22:52:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「居ない……?やっぱり夢……?全部私の狂った頭が引き起こした幻覚……?頭に虫でも沸いちゃったかな?ハハ……!アハハハハハハハ!なら好きなだけやってやる……!」窓から不快な光が差し込んできた。舌打ちしながら一瞥すると、マンションを包む影が揺らいでいるのが見えた。 15

2017-10-09 22:54:30
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このままではジツが台無しになる。「やりたかった事を全部やってやる。この夢が醒めないうちに。この力が続いているうちに…!」彼女はバットを放り捨て、ジツを強めるために手をかざし、窓に向かった。刹那的な夢を求めて。次の瞬間、後ろに伸びる彼女の影から、シャドウウィーヴが再び現れた。 16

2017-10-09 22:57:45
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アンブラが気づいた時にはもう遅かった。シャドウウィーヴは影の腕を伸ばす。アンブラは咄嗟に反撃を試みる。「「イヤーッ!」」バッ!バッ!バッ!バッ!アンブラは乱れた姿勢から闇雲なワン・インチ距離のカラテ連打を繰り出した。だがその全てを、最低限のカラテ・ムーブによって捌かれた。 17

2017-10-09 23:00:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そのカラテ力量差は歴然。最後には、アンブラは右手首を掴まれて背中側に捻り上げられ、カラテ関節技を極められていた。「ンアーッ!痛い……!痛いって……!」「痛いだろ。夢じゃないって解ったか?これは全部現実だ。お前は狂ってなんかいない。センチメントな狂気は言い訳にならない」 18

2017-10-09 23:02:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「チクショ!」アンブラは唾を吐いてもがき、床から影の蔦を伸ばす。だがシャドウウィーヴの影の右腕がそれを薙ぎ払い、飲み込んだ。影の腕は形状を変え、龍の前脚を思わせる刺々しい鈎爪を備えていた。「俺の空はお前の空より暗い。お前の影は俺に勝てない」「ッ…」「何故勝てないか教えてやる」19

2017-10-09 23:07:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

気乗りしなかったが、シャドウウィーヴは手短に事実だけを告げることにした。「いいか、お前に憑依したのは、影の力を操るハデスニンジャ・クランのソウルだ。おそらくグレーター級かそれ以上。だが、俺に憑依しているのは開祖たるハデス・ニンジャ、そのものだ」「ハデス・ニンジャ……?凄……」20

2017-10-09 23:12:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アンブラは耳馴れぬ言葉の洪水にニューロンを洗われ、思わず目を見開いた。そこには驚きだけでなく、不本意な敬意のニュアンスすらも含まれていた。ニンジャ真実など知らぬ彼女でも、人類史の偉大なる過去の神、ハデスの名くらいは知っている。すなわち半神にも等しい存在が今、目の前にいるのだ。21

2017-10-09 23:16:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そしてお前はそれに連なるものだと宣言された。その驚きは計り知れぬ。「そうだ、その俺が命じている」単純な奴でよかったと思いながら、シャドウウィーヴは小さく頷いた。ブリザードが晴れるまでに、もう時間が無い。「ジツをおさめろ。これ以上無関係なモータルを巻き込んで殺すな」 22

2017-10-09 23:20:13