アルター・オブ・マッポーカリプス:エピローグ
「サヨ……ナ……」KRAAASH……ジャンクと化した建物で構成された巨大なハッポースリケンが崩れ、ゆっくりと落ちてゆく。ダークニンジャはベッピンを球体から引きずり出した。彼の手にあるカタナは亀裂にまみれていた。しかしその超自然のハガネは今再び、この世に、オヒガンに、その歌を響かせる。 1
2018-12-30 21:05:04サンダーフォージの呪われた魂はカタナの内にある。然るべき手段を用いれば、ベッピンは再びその力を取り戻すであろう。ダークニンジャは世界を振り仰いだ。その姿は01分解し、シトカを去った。続いて、いまだリアルニンジャと苦闘する精鋭たちが。シャドーバージのニンジャ達が。帰還を開始した。 2
2018-12-30 21:07:38「否、否、否!」ナムサン!城内のネクサスからニューロンに届いた帰還命令を明確に拒否し、旋回するシャドーバージ隊から飛び出したニンジャが一騎あった。「否だ!」彼の名はヘラルド。消えゆくザイバツニンジャの何人かが異常に気付き、眉根を寄せ、あるいは囁き合った。 3
2018-12-30 21:10:28ボイリングメタルの死、そして赤黒のセスナの出現……砕け散るドクロ・ニンジャと、降り立ったニンジャスレイヤー。彼の精神はグチャグチャに搔き乱されていた。戦場を跳び離れてゆく赤黒の影に、彼は瞬間的な憎悪と執着心を爆発させた。KRAAASH!「グワーッ!」シャドーバージは墜落し地を滑る。 4
2018-12-30 21:13:55「ぜ、絶対に……絶対にこのまま済まさんぞ!」彼は震えながら起き上がった。シャドーバージの破片を掴んだ。エメツの欠片だ。彼は己の胸にそれを突き刺し、埋め込んだ。「ンンッ……ンンーッ……!」おぼろな輪郭が一度希薄化し、そののち、バチバチと音を立てて、より強固になった。 5
2018-12-30 21:16:35『……』『……』ネクサスの声を彼は拒絶した。もはや知ったことか!ヌケニンしてでもキンボシする!それこそが彼のイサオシなのだ!エメツを取り込み、現世滞在の猶予を引き延ばし、必ず狩り殺してくれる!「ここで会ったが百年目……ニンジャスレイヤー……!」彼は赤黒の箒星を追って走り出した。6
2018-12-30 21:19:32ブオウー!シトカの港が近づくと、船は汽笛を鳴らした。甲板に出たシキベは手をひさしに、陸の様子をうかがおうとした。この距離からでも、凄まじき事態の爪痕は見て取れた。方々に上がる煙。倒壊したビル。しかし、掲げられた大漁旗の数々は、間違いがなかった。 8
2018-12-30 21:23:07上空に出現していたキンカク・テンプルはもはやなく、太陽の影もまた消えた。「ゲーッ!」カラスの鳴き声が聞こえた。シトカを見てくる、と言い残したまま戻って来ず心配だった所長が、ようやくの帰還だ。「……やったンスか」シキベは腕にとまったカラスに厳粛に尋ねた。 9
2018-12-30 21:26:45カラスはシキベの腕部UNIXをプッシュした。「カイケツせり。サツバツナイトもブジ。だが、ジョウキョウはフクザツだ」と。シキベは、ううん、と唸った。「報告書を作成してくださいよ」「ゲーッ」「とりあえず、動けるぐらい健康な被験者から運んでます。ピストン輸送をしないと」「ゲーッ」 10
2018-12-30 21:30:07船が港に横づけするか、しないかという時点で、シキベの横を走り抜けたダグはジャンプし、着地し、つんのめって前に転んだ。「ア、大丈夫っスか!?そんな事を……」「アリガト!」振り返り、頭を下げると、ダグは矢も楯もたまらず走り出した。わけもわからず彼は市街へ向かった。 11
2018-12-30 21:33:38道路のあちこちで市民が箒を使い、ジャンクやガラス片を片付けていた。気絶状態で拘束された過冬のヤクザが集められている横を、ダグは通り過ぎた。広場には過冬と違う余所者と思わしきヤクザ達がおり、鉄鍋のミソ・スープをかき混ぜていた。炊き出しである。 12
2018-12-30 21:35:45「ナランデ!」「タクサンアリマス!」クローンヤクザ達の誘導に従い、傷ついた市民が言葉をかわしながら列を為す。海の男タイダルテンペストが米俵の上に腕を組んで座り、このクロスカタナの集団がおかしなマネに出ぬよう監視していた。 13
2018-12-30 21:39:51ダグは列に並びたい空腹の誘惑に耐えながら、広場に進んだ。直感があった。もし、「あいつら」がいるならば、きっとこういう所に……。「押すな小僧!」「アイエッ!」サイバネ犬を連れたニンジャがダグを押し退け、タイダルテンペストに向かってゆく。「ソウカイヤの関係者か?」 14
2018-12-30 21:42:16「だったらどうする、ア?」「取り次いでもらいたくてな。色々と用があって……」「俺はシトカの人間だ、クソ野郎!」「ク……クソとはなんだ、争いは終わったはずだぜ」「飯なら、並べ!」「オトトイキヤッガレ!」「い、痛てて……」起き上がるダグと、通りがかった少年の目があった。 15
2018-12-30 21:44:21少年は驚愕に口をあんぐりとあけた。声も無く、そのまま数秒。少年はもう一人を呼びに行く事、ダグに言葉の限り問い詰める事、どちらを優先するかでパニックになりかけた。やがて大粒の涙を流し、「う、嘘だ……!」と呻いた。泣きながら、笑い出した。 16
2018-12-30 21:46:07カラン、カラン。扉を開けると、カウンターでダベッていた若者たちが会話を止め、振り返り、叫び出した。「うるせェな!」スーサイドは店内に進む。レニが慌てて椅子を立ち、スーサイドに差し出した。「兄貴!」「久しぶりの奴が来やがったよ」店主の筋骨隆々の中年女性、スージーが睨み、笑った。18
2018-12-30 21:55:13「どちらさんでした?」「そういうのはいいんだよ」スーサイドは顔をしかめた。「あの後も色々やってたんだ、こっちはこっちでよ。お前の店だって、立派にしやがって。風情がねえよ」「改装にゃいいタイミングだからね。こき使える奴らも揃ってる」「アッソ」「良い事もなきゃ、やってらんないよ!」19
2018-12-30 21:58:41フジミ・ストリートにはいまだ「澱み」の欠片がところどころに残っているが、場所をまるごと放棄するわけにもいかない。そうした場所には木箱やら逆さのコンテナやらが間に合わせに置かれ、ごまかされている。<筋>は……改装というわけだ。若者衆は良く働いた。「すっかりシトカの顔役かい?」 20
2018-12-30 22:01:24「そんな柄じゃねえ」スーサイドは言った。「コロナをくれ」「アイ、アイ」「それから……」「俺はスピリタスだ」もう一人の入店者が言った。若者衆はスーサイドへの反応とはまた違った重いリスペクトと畏怖に凍り付いた。杖をつきながら入って来たのはオールドストーンであった。 21
2018-12-30 22:04:27「柄じゃねえとも言っておられんぞ、小僧」受け取ったスピリタスをイッキし、オールドストーンは慌てて脇に退いたクレイジーナックルの椅子に腰を下ろした。「俺は見ての通り苔むした時代遅れの石コロよ。いや、俺の場合はフジツボだな。ウワハハハハ!お前らが気張るんだ、俺は気ままに海に出たい」22
2018-12-30 22:08:16「……で、どうなんだい。ソウカイヤ連中は」スージーが息を潜めた。「好きにやらせはしねえ」スーサイドは即答した。「ともあれ、復興が最優先だ。くだらねえ意地の張り合いだの、探り合いだの、やってられるか」「平気なのか?」「コイツのサングラスが黒いうちは平気だ」と、オールドストーン。 23
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