「ザ・ハート・オブ・サマー」#3

ニンジャスレイヤーの二次創作小説です。
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J0SHUA @kj0shua2112

【ザ・ハート・オブ・サマー】 #3 #josh_txt

2017-10-08 09:28:35
J0SHUA @kj0shua2112

(「グワーッ!」同時にニューロンアタック!いかにニンジャといえど、万全の体勢で放たれたヒサツ・ワザめいたそれを衰弱しきった状態で受けたハーメルンのシナプスは電子レンジめいてかき回される!「アバババーッ!サヨナラ!」ハーメルンは爆発四散した。) 1

2017-10-08 09:30:07
J0SHUA @kj0shua2112

「「ワオオーッ!」」ドォン。ドォン。ハーメルンの爆発四散の音は、ちょうど上がり始めた花火と市民の歓声がかき消した。現実世界へと戻ったエーリアスは、大通りをゆっくりと進む武田信玄の巨大ネブタを目にし、へたり込んだまま力なく笑った。 2

2017-10-08 09:31:59
J0SHUA @kj0shua2112

「「アイエエエ!」」突如足元に出現した血と土埃にまみれた浴衣姿の少女に驚いた周囲の人々が、その場から思わず距離をとる。その切り取られた空白に、ネブタと花火に見とれる周囲の人々を掻き分けながらエントリーするものがいた。ハンチング帽にトレンチコート姿の男である。 3

2017-10-08 09:34:31
J0SHUA @kj0shua2112

「エーリアス=サン!無事か!」「へへ、あンたのために、花火の場所空けといたぜ」エーリアスは気丈に笑った。ニンジャスレイヤーは彼女の姿とまだ残るソウル痕跡、そして傍らの爆発四散跡から何があったかを察したが、奥ゆかしく何も言葉を返さなかった。 4

2017-10-08 09:37:37
J0SHUA @kj0shua2112

フジキドはエーリアスのはだけた浴衣をそっと直し、「地獄お」と書かれたマフラーを巻いてやると、手を引き立ち上がらせた。彼女がふと横を見ると、十人ほどの少年少女を引き連れたタクロが、近くのマッポと話を終え、彼らを引き渡しているところだった。 5

2017-10-08 09:40:12
J0SHUA @kj0shua2112

おそらく彼らは迷子として保護され、その身柄はネオサイタマで頻発していた謎の失踪事件の被害者達と一致することだろう。奇妙な神隠し伝説はここで終わりを告げたのだ。「悪いな、買ってきてもらったのに」エーリアスはニンジャスレイヤーからビールを受け取り、一本をフジキドに差し出した。 6

2017-10-08 09:42:54
J0SHUA @kj0shua2112

「大変だったンだぜ」そのまま2人は互いをねぎらうように静かにカンパイした。エーリアスが再び少年に目をやると、彼は妹の手を引いてこちらに向かってきていた。しっかりとした足取りで、そのサイバーサングラスにはもはや「エラー」の文字はない。「お姉ちゃん、今日はアリガト」 7

2017-10-08 09:44:33
J0SHUA @kj0shua2112

エーリアスは(急いでビールの缶をフジキドに手渡し)笑顔で応えた。「タクロ=サンが頑張ってくれたおかげで実際助かったよ。ありがとう。お母さんと会えそうか?」「うん、いまIRCが来た」「そっか。じゃあまあ、元気でな」だが少年はエーリアスの目を見たまま動かない。 8

2017-10-08 09:46:55
J0SHUA @kj0shua2112

「……?ああ、何か買ってやるって言ってたっけ。何でもいいぜ。食べたいものを……」「それより、あの」少年はアケビに聞こえないように小さな声でエーリアスに耳打ちした。エーリアスは彼の声の微かな震えとやや赤らめた顔から、全てを了解した。彼の勇気と行動は確かに褒美に値するものだった。 9

2017-10-08 09:49:22
J0SHUA @kj0shua2112

「そうか、ごほうび、約束してたよな」エーリアスは少年のサイバーサングラスを優しく外してやると、しかしどうしたものかわからないと言った様子で、曖昧に微笑みながら逡巡していた。((参ったな、キスなんて勝手にしたらあの娘に合わせる顔が無いぞ)) 10

2017-10-08 09:51:03
J0SHUA @kj0shua2112

エーリアスはニューロンの同居人、元の身体の持ち主を思う。ふとエーリアスのニューロンがあるカートゥーンの場面を紡ぎ出した。実際少女向けのその作品の中では、夜に月を背負い立つ男が、少女の眼前にかがみ込み、耳元で何事かを囁いた後……((ああ、これならまだ、許してくれるかな)) 11

2017-10-08 09:53:03
J0SHUA @kj0shua2112

果たしてそれは彼女の記憶なのか。あるいは元の身体の持ち主のものか。答えはブッダのみが知る。今は黄昏時、全ての境界は曖昧なのだ。エーリアスはその男がやったように、少年の唇にそっと触れた。一際大きな花火が上がり、光と歓声がその瞬間を覆い隠した。 12

2017-10-08 09:55:37
J0SHUA @kj0shua2112

エーリアスは、タクロの唇から指先……自分が先にキスをすることで、その仲介役となってくれたキツネサインの口の部分を離した後、少し思案し、意を決したようにして続けた。「ごめんよ。約束はこれで勘弁な。実は、俺のこの身体はさ……」 13

2017-10-08 09:58:25
J0SHUA @kj0shua2112

「タクロ!?アケビーッ!」遠くから女性の呼び声が聞こえ、三人は思わずそちらを振り返った。兄妹の母親は人混みを掻き分けてやってくると、二人を抱きしめ、エーリアスに礼を尽くしてそのまま去っていった。去り際に、少年がキツネサインを掲げたのがセンコハナビめいてちらりと見えた。 14

2017-10-08 10:00:44
J0SHUA @kj0shua2112

少年はその無垢さ故に、本来それが持つ反抗や侮辱の意味を知らなかったのだろう。二人だけの秘密の合言葉めいた仕草として掲げられたキツネサインに、苦笑しながら応えたエーリアスもまた、照れ隠しめいて頭をかき何事かを言い訳めいてつぶやきながら、ニンジャスレイヤーとその場を後にした。 15

2017-10-08 10:04:01
J0SHUA @kj0shua2112

少年とその家族、そして二人のニンジャはオマツリの人混みに紛れていった。全ては、まるで夏の夜の花火めいたほんのひと時の出来事だった。 16

2017-10-08 10:06:14
J0SHUA @kj0shua2112

次の日に降った重金属酸性雨は、地面に僅かに残るハーメルンの爆発四散跡を散らばるゴミと一緒に洗い流していった。エーリアスと少年はその後会うことは無く、幼いタクロとアケビの記憶もやがて数日中に薄れていった。NRSへの防護反応から起こりうる、正常な反応である。 18

2017-10-08 10:14:55
J0SHUA @kj0shua2112

しかしその後、ネオサイタマのストリートに怒りと解放と宣戦布告の象徴としてキツネサインがデジタルマッピングされた日、それを目にしたタクロの心に白昼夢めいて浮かんだのは、ほんの少し前の、だがそれでいてはるか昔のようにも思える自分の小さな冒険と甘酸っぱい思い出であった。 19

2017-10-08 10:17:20
J0SHUA @kj0shua2112

タクロはネオサイタマの空に静かにキツネサインを掲げた。理由の分からぬ涙が、一筋頬を伝った。 20

2017-10-08 10:19:56
J0SHUA @kj0shua2112

【ザ・ハート・オブ・サマー】終 youtu.be/Z7UnjzwELNM #josh_txt

2017-10-08 10:24:52
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J0SHUA @kj0shua2112

エリーーッ!!!(作:かくしあじ=サン @meat_good_by ) #josh_txt pic.twitter.com/YaXe7dKir3

2017-10-08 13:25:41
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