マイアミ鎮守府特別編「Bride」 中編

ーこの作品に登場する「彼」は作者の許可を得ており実際違法ではないー マイアミ鎮守府物理書籍版「OverKill」より
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orphe @orphechin

眼前に天狗面。その掌軟体動物めいて拡大し、木曾をつかもうとする。 木曾は剣を振る。 掌の代わりに、折れた剣が夜闇に舞った。 息を飲む木曾。同時に顔面に掌が伸びる。 恐るべき握力の迸りが頭部全体に広がり、その激痛で木曾は全く動けない。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:29:43
orphe @orphechin

「クソがァ!」摩耶と愛宕が砲撃を加える。夢遊病のようなステップで天狗面はそれを避け、「マいカゼと踊っテェェェクれマスか?」怪物は手を放し、木曾の顔面に渾身の拳を放った。柔から剛へ。 鉄の弾け飛ぶ音がし、木曾は勢い良く地面に叩きつけられ、空中に舞う。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:31:01
orphe @orphechin

その鳩尾に天狗面の踵落としが入り、木曾は吐血しながら再度バウンシングした。 「飛龍ーッ!何とかしろ!」摩耶が絶叫する。  呼応し、絶叫しながら飛龍はありったけの矢を放つ。天狗面は宙に舞う木曾の体をひっつかむと、それを縦横無尽に振り回し、飛龍の弓矢を吸い取っていく。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:32:16
orphe @orphechin

飛龍はすでに恐慌状態で矢を放ち続ける。フレンドリー・ファイアだ。それはわかっている。でも止めたら、殺される。 「お前たちはすでに一線を越えた。貴様らは艦娘ではない」天狗面は木曾に語りかける。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:33:18
orphe @orphechin

彼女がそれを聴いていたかどうかは定かではない。だがそれは処刑の合図であった。 「消えろ。燃えて、燃え上がって、そして……沈め」 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:33:41
orphe @orphechin

木曾の顔を地に付け、マッチのように摺り上げる。ただの一回で、木曾の体から幾千の火花が上がり、バラバラに砕け、燃えて、消えた。 灰と火の粉を身にまといながら、パチパチ、と天狗面は手を叩く。 赤い目が、愛宕を射る。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:35:58
orphe @orphechin

その後頭部に、霧島の拳が入る。 木曾への処刑の間、機を伺っていたのだ。 いざとなれば味方を犠牲にしてでも敵を殺せ。これも鉄底海峡の教訓だ。 だがその教訓さえも、この狂人へは通用しない。 拳がーー霧島が目を見開く。拳が、砕かれた。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:38:23
orphe @orphechin

グ、と呻いて手を戻しよろめく霧島。 天狗面が悠々と彼女に振り向き、奥ゆかしくお辞儀をする。 「超弩級戦艦、なナナナガとダ。敵戦艦とのナグググリリリリアイアアイなららナらまかセてオォけ」 「この…ふざけやがって!」 霧島が激高し次の拳を振りかぶる。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:39:13
orphe @orphechin

霧島の全力の左ストレート。天狗面はそこに己の拳をぶつける。霧島の腕に、嫌な衝撃が走る。まさか、そう思った時には、天狗面の拳は彼女の左手を裂き、腕を切り開き、そのまま肩を掴み、彼女の腕一本を千切り取った。 「甘ままアマまクまく、ミないでモラララオオオウウ」 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:40:07
orphe @orphechin

「すばらしい働きだ長門。ついでに彼女に近接での作法を教えてやれ…イーイイイイだロウロウロウロウ…」腕を無造作に投げ捨て、霧島の頭に両手を添え、天狗面は頭突きを放つ。何度も何度も、何度も。霧島の頭の艤装が砕け皮が裂け肉が抉られ骨が見える。そして血が吹き出す。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:40:20
orphe @orphechin

「お前も燃えるがいい。やれ、長門」 天狗面はそう呟き、霧島の艤装に手を伸ばし、そこから弾薬庫をこじ開け、三式弾を指にはめる。そしてそれを霧島のぱっくりと空いた傷口にねじ込んでいく。今まで想像もつかなかった激痛に、霧島は泣き叫び許しを乞う。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:40:58
orphe @orphechin

だが彼は慈悲を見せない。 「ブラック、殺すべし」 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:41:32
orphe @orphechin

頭の半分まで三式弾をねじ込むと、天狗面はそこに正拳を叩き込む。三式弾が炸裂し、その煮えたぎる殺意が、彼女の脳髄を内部から焼きつくしていく。生きながら脳を焙られ、霧島は崩れ落ちた。 残るは3人。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:41:58
orphe @orphechin

わずかの間に、かつての夜戦部隊の精鋭が立て続けに3人死亡。その事実に、飛龍が怯え逃げ出す。天狗面は彼女に向かい唸る。だが先に愛宕と摩耶が飛龍を撃つ。腹部と頭部に空洞が空き、彼女は倒れる。 「逃げられる場所なんざあたしらの戦場にはねえ。結局わかってなかったな」摩耶。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:43:34
orphe @orphechin

<謝罪> さきほどミスタイプがありましたが責任者は大和の手により非理法男根されました。今度の作者はきっとうまくやってくれるでしょう。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:44:47
orphe @orphechin

「仲間に入れて下さいって土下座してきたから入れてあげたけど、やっぱだめねえ」愛宕が呆れる。 「軽巡も戦艦も雷巡も、結局夜戦じゃ二線級。やっぱ、あたしら重巡が主役なのさ」 「そうよね。結局、私の部隊で最初から最後までついてこれたのも貴方だけだしね、摩耶」 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:45:32
orphe @orphechin

「仲間殺しか。つくづく見下げ果てた下衆どもだ」両の拳を握りしめ、狂人が呟く。「なんだ、まともに喋れんのかよ」手袋をはめ直し、愚連隊の勇士が笑う。 「私はいつでも正気だ。そうだろう、多摩」天狗面は首を傾げ、頭を痙攣させる。猫のような低い唸り声が、天狗面から響く。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:52:07
orphe @orphechin

「そうだろう、なあ多」彼が対話を終える前に愛宕と摩耶が上下から襲う。  摩耶のローキックが天狗面の足を打ち据え、それと同時に愛宕の飛び蹴りが彼の首に入る。天狗面は彼女たちの体をつかもうとするが、両者とも素早く距離を取り、彼の視界を塞ぐほどの弾幕を放つ。#マイ鎮特別編

2016-08-07 00:52:30
orphe @orphechin

練達のコンビネーション殺法。 かつて夜の海域を恐怖に陥れた二人組がペナンの地に蘇る。 愛宕の弾幕は熾烈を極める。その前にはいかなる深海棲艦であろうとも粉砕される。だが天狗面はそれを五体で受け止める。 世界を包む業火がさらにその苛烈さを増す。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:53:24
orphe @orphechin

業火の中より真紅の天狗面が浮上する。 その面にも、二種軍装にも、傷は何一つついていない。 その異形に怯むこと無く愛宕は彼の周囲を旋回し、砲撃を続ける。 五体が砲弾を時に吸い込み、時に弾く。 爆風が上がり、煙幕が天狗面の視界を塞ぐ。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:55:33
orphe @orphechin

弾幕が止む。瞬間、煙の幕を裂いて摩耶が天狗面の脇から現れる。人中・鳩尾、股間、急所とされる箇所に痛烈な打撃を入れ、摩耶が消える。次いで地の下から愛宕の両足が天狗面の腹部にめり込む。そしてサマーソルトの要領で、愛宕が蹴りを打ち込みつつ彼の体を駆けその顔面を蹴上げる。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:55:49
orphe @orphechin

煙が晴れると、両者はすでに充分な距離を取り、再度砲撃を開始する。爆風と煙幕が再度彼の体を覆う。通常の敵ならばすでに数度は殺している。だが奴は倒れない。しかし摩耶と愛宕は恐れない。不測事態こそ戦場、彼女たちはそれをよく知っていた。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:56:14
orphe @orphechin

万象は滅びる。敵は殺せる。神などというのは戯言に過ぎない。奴は肉を持ち実存するただの物理的存在にすぎない。たとえ殺すのに手間取ろうとも、必ず奴は倒れる時が来る。それまでは撃ち、殴り、攻めに攻める。ただそれだけのこと。愛宕は己に言い聞かす。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:57:09
orphe @orphechin

煙幕が上がる。今一度攻め、今度こそ奴の腸を抉りだす。砲が効かねば手を使う。手が効かねば足を使う。足が効かねば歯か、あるいはその時に思いつけるありとあらゆる手段で殺す。 神だと?裁きだと?そんなものは、私と摩耶の行使する暴力の前では無力だ。 それを教えてやる。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:58:38
orphe @orphechin

そう、いつだって、私は運命を操る側だった。操られる側ではない。あの時も、提督が指輪を渡してきた時も、私はそれに「従属」を読み取った。彼の愛に絡め取られ、彼のために心身を捧げる。提督の役に立つ存在として産まれた、艦娘という存在の終着駅にしてハッピーエンド。 #マイ鎮特別編

2016-08-07 00:59:26
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