ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル #7
(これまでのあらすじ:アマゾン川流域で麻薬コネクションを拡大しようとする危険組織エル・キケンは、ジャングルに隠れ潜むインディペンデント製薬会社サワタリ・カンパニーの排除に乗り出す。社が所有する不純エメツの鉱床はエル・キケンの麻薬精製ビジネスにおいて垂涎の資源なのだ)
2017-11-03 12:17:01(エル・キケンのボス、ニンジャのデッドマンはカンパニーの社員であるモニカとディスカバリーを拉致。危害をくわえた。当然これは社長フォレスト・サワタリの逆鱗に触れた。彼自らエル・キケンの要塞セメンテリオに襲撃をかけたのだ。デッドマンは恐るべきジツでこれに対抗する……)
2017-11-03 12:19:57「ア……ア……」エンゾは意識を取り戻し、唇にこびりついた吐瀉物を拭って、どうにか起き上がった。ニューロンがハレーションを起こしていた。視界にはピンクのイルカのビジョンが半透明状態でかぶさっており、光と音が何重にも重なって歪んでいた。【よくやった。君は強い】マインドキルは言った。1
2017-11-03 12:25:02「アバッ、僕、一体」【オープンマインドな未成熟のニューロンを媒介にしたとき、私のジツは最適に働くのだ。君が必要だった】正面を向いたマインドキルが視界の左から右へスライドする。【君自身にもダメージがあったことだろう。だが不可逆の損傷ではない筈だ。安心してほしい。それより急ぐのだ】2
2017-11-03 12:29:28「ハイヤーッ!」コトブキが骸骨を蹴り倒した。暴動者たちは勢いを取り戻し、骸骨達を押し戻した。この機に乗じねば絶望が待つ事がわかっている。彼らは必死だった。「エンゾ=サン、大丈夫ですか?どうしたのですか?」「うん……急がないと……!」エンゾはよろめき、歩き出した。「どこへ!」 3
2017-11-03 12:34:14【急ぐのだ。モニカ=サンが助けを求めている】エコーのかかった声。イルカが二重になり、視界を右から左へスライドした。「あっちだ。あの奥の建物……誰かが捕まっているんだ!」「まさか!」コトブキが頬に手を当てた。「急ぎましょう!」コトブキはエンゾを抱きかかえ、走り出した。 4
2017-11-03 12:37:12揺さぶられながら、エンゾの混濁したニューロンに遠い記憶が去来した。幼い頃、高い熱が出て、それを町医者に運んだのは姉だった。姉だけが家族で彼を気遣ってくれた。その姉ももう死んでしまった。二人で星を見た。花を見た。涙が溢れた。「コ、コトブキ=サン」「大丈夫ですか?」「自分で走るよ」5
2017-11-03 12:42:12二人は激しい戦闘音を後ろに聞きながら、一心に走った。やがて、「ハイヤーッ!」コトブキは跳び蹴りで邸宅の扉を破壊し、前転着地してカンフーを構えた。「ここなのですね!」「うん、そうだ」エンゾは涙を拳で拭った。既にマインドキルの声は聞こえない。「多分この建物に……」 6
2017-11-03 12:44:36「……!」コトブキは周囲をうかがい、物音を聞こうとした。やがて奥の個室に走った。「ハイヤーッ!」ダイナミックエントリーしたコトブキを、室内に佇む灰白色のニンジャが見た。「ほう。これは」「貴方は誰ですか」コトブキは奇妙なアトモスフィアを訝しんだ。キケン構成員ではない? 7
2017-11-03 12:50:19「ドーモ。サイグナスです」ニンジャは淡泊なアイサツを行った。「……コトブキです」「その必死なさま。珍しいな。ウキヨか」サイグナスはヴェールを見やった。 「虜囚を助けに来たようだな。サワタリ・カンパニー関係者か」KABOOOM!外で爆発音がした。「宴もたけなわだな」 8
2017-11-03 12:54:29「貴方はエル・キケンの者ではないのですか」「視察者と言うべきか……」サイグナスは無感情に言った。決して友好的ではなかった。次に何をしてくるかわからぬ恐ろしさがある。コトブキはカンフー・カラテを構えた。「コトブキ=サン」エンゾが追いついた。そして息をのんだ。サイグナスは微笑した。9
2017-11-03 12:56:12「サワタリ・カンパニーにはまともな戦士が不足しているのかね?」彼は鋼の金庫にしゃがみ込んだ。そして、いともたやすくそのロックを破壊した。「彼は捕まっていた市民です」「そこの女も助けていくわけだな」サイグナスは言った。コトブキは警戒しながら横を通り、ヴェールを引き開けた。 10
2017-11-03 12:58:21「モニカ=サン!」コトブキは呻いた。虚ろな目が見返した。「無事らしいぞ。少なくとも肉体はな」サイグナスは金庫から不気味に光る巨大な石を取り出した。「モニカ=サン!」コトブキは鉄格子を揺する。「ンンーッ!」格子を掴み、捻じ曲げようとする。「ンンーッ……!」「日が暮れそうだな」 11
2017-11-03 13:00:43「何なのですか!ほっておいてください」コトブキは怒った。「モニカ=サン!今助けます!」「この人だ!」エンゾも鉄格子に近づき、何か開放する方法はないか、必死に考えた。「……」サイグナスは歩いてきて、二人をグイと押し退け、「イヤーッ!」チョップで電子錠を容易く破壊した。「ドーゾ」12
2017-11-03 13:02:21「エッ……エッ」コトブキは困惑した。「理解が難しいです」「レベルの低い悪党はあまり好きではない。個人的にはな。ドラッグ・ビジネスは焼き畑農業ではいかんよ……」サイグナスは不気味に脈打つ宝珠を懐にしまった。「奴も終わりだろう。ああいう手合いには未来は無い」そして、歩き去った。13
2017-11-03 13:07:28……「モニカ=サン!」「……コトブキ=サン」モニカが呟いた。コトブキは言葉を失い、しがみつくように抱きしめた。そして震えた。「助けに来ました……皆で……来ました……!」「よかった」モニカはコトブキの背中を優しくさすった。「皆、無事ね……」「無事です……!やっつけます……!」14
2017-11-03 13:16:38「パリャナウェー、パリャナウェー、パリャナ!パリャナウェー、パリャナウェー、パリャナ!」K3の歌唱とK2のビリンバウのリズムが、ディスカバリーのカポエイラに力を与えていた。一方、ファッショニスタの動きからは残虐なグルーヴが失われつつあった。「イヤーッ!」「グワーッ!」16
2017-11-03 13:22:52蹴りがファッショニスタの横面に入った!深いか!だがファッショニスタは地に手をつき、逆立ちしながら蹴り返した!「イヤーッ!」「グワーッ!」深追いすれば恐るべきカウンターがすぐに襲ってくる。ファッショニスタは油断ならぬ手練れのカポエイラ・カラテ・ファンタジスタなのだ! 17
2017-11-03 13:24:34「チクショウ、がんばれよ!」K2がビリンバウを演奏しながら言った。「パリャナウェー!」K3は歌いながらK2を肘で小突いた。(演奏に集中しろ!)骸骨達がおどろおどろしい手拍子を続ける。周辺では武器を奪った暴動者が戦闘を繰り広げている。BRATATATA!BRATATATA! 18
2017-11-03 13:26:54「アバーッ!」「アバーッ!」骸骨達は銃弾で倒されながら、生者につかみかかり、殺し、殺された生者は骸骨と化して立ち上がり、別の生者に襲い掛かった。「イヤーッ!」「グワーッ!」側転蹴りがディスカバリーを打ち倒した。「イヤーッ!」追い打ちのマカーコが襲い掛かる! 19
2017-11-03 13:30:47「パリャナウェー!パリャナウェー!パリャナ!」K3は必死の形相で歌い続ける。ジレンマであった。兄弟がディスカバリーに交替するには歌か演奏を止めねばならない。そうなればこのホーダの統制は崩れ、ファッショニスタがディスカバリーを圧倒してしまう。(ガンバレ……ガンバレ!) 20
2017-11-03 13:32:53「イヤーッ!」「グワーッ!」アルマーダがディスカバリーの横面を打った。「いい仕返しだな!イヤーッ!」更に空中回転蹴り、アルマーダ・マテーロだ!「イヤーッ!」バック転でかろうじて回避!骸骨が押し返す!無慈悲なバトル・ピットだ!「イヤーッ!」「グワーッ!」 21
2017-11-03 13:34:57